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アーマーフォーゼ

「ガウー」


 クマ子が胸を張って腰のベルトを俺に自慢している。

 はいはい、分かってますって、ちゃんと見ろって事ね。

 セイウチの時よりもメダル部分が大きくなってるなぁ。


 ピーコックブルーパンチングナイトグリズリー王者のメダル 効果 王者防衛 グローブ強化 1VS1 使用可能 グローブ性能アップ ヘッドアシスト


 ヘッドアシストって何だろう?

 うーん……イメージだけど、兜とかの性能にボーナスとか掛りそうな名前だ。


「ガウガウ?」


 で、クマ子が何か俺に対して尋ねている。

 すると俺の視界に、アイコンが出現した。

 クマ子のステータス画面だな。

 そこにメタモルフォーゼ出来る項目が出てる。

 具体的には。


 パンチングベア

 ナイトウォールラス

 パンチングナイトグリズリー


 と出ていて、どれを破棄するかを問われている。


「二種類までしか取得出来ないってのは本当みたいだな」

「ガウー」


 人化は別枠みたいだ。

 ちなみにクマ子のLvは55だ。

 色々と技能を習得はしているんだよなぁ。


「とりあえずグリズリーの方を見てみるか」


 ベアとグリズリーで能力差を確認してみる。

 上位種っぽいと思ったらそのまま全てのスタータスが上だ。

 覚えている技能も全く同じ、こりゃあ上位互換って事で乗り換えるべきか。


「クマ子は一応どうしたい? 自分の最初の姿を維持するか? 出来る能力を考えるとベア姿を破棄してグリズリーが良さそうだぞ」

「ガウ? ガーウ」


 あ、最初は首を傾げたけど、次は意味が分かった。

 グリズリーで良いって言うかのようにグリズリーのボスが倒れていた所を指示してから胸を張ってる。

 ベアじゃなくても良いのね。

 了解。

 俺はパンチングベアの部分を指定して破棄する選択肢を了承した。


 1、2、ポイっと。

 そんな訳でクマ子の変身バリエーションにパンチングベアーが無くなり、パンチングナイトグリズリーに変わった。

 とはいっても……外見の変化は殆ど無いけど。


「あんまり変化は無いが、それでも強くなったんだろ? 若干胸当てのサイズが合わなくなって来たな……今夜中に調整しておくか」


 茂信がクマ子の胸当てを見ながら匠の様な事を呟く。


 ◇パンチングナイトグリズリー Lv55

 能力 ボクサー

 拡張能力 分厚い毛皮(中) スタミナアップ ハニーハント 属性耐性(小) 敏捷成長補正(小)

 特殊能力 アシスト インセクトキラー アーマーフォーゼ メタモルフォーゼ


 結構馬鹿に出来ない成長をしてきたなぁ。

 後二回も試合があるんだし、それを乗り越えたらどれだけ強くなるんだろうか?

 ただ……新しく覚えた、アーマーフォーゼって何だろうか?


「アーマーフォーゼってなんだ?」

「ガウ? ガウウウ?」


 クマ子が何か俺を見てニヤッとしている様な気がする。

 なんだよ。もったいぶるなよ。


「あ、どうやらハネバシ様のクマ子様がアーマーフォーゼを習得した様ですね」


 ラムレスさんが俺の元にやってきて答える。


「何それ?」

「羽橋、その程度、図書館でも職業神殿でも行って調べりゃわかる事だぞ」


 萩沢が呆れる様に言う。

 しょうがないだろ。

 何だかんだで忙しくて調べる暇も無いし、クマ子が理解しているなら俺が知る必要ってあんまり無いんだからさ。


「どんな能力なんですか?」


 実さんも知らないのかよ。


「それはですね――」

「ガウー」


 ラムレスさんが言い切る前にクマ子が抱きつく実さんを降ろして鳴く。

 するとクマ子が光を纏いながら俺に向かってジャンピングプレスをして来る。

 俺を殺す気か!?

 まあ、クマ子だからそんなつもりはないだろう。

 だが、巨漢のクマ子を受け止めるって言うのもかなりしんどい。


 あ、着地はする気か、プレスじゃなくてジャンプだったか。

 思わず数歩下がった俺の目の前にクマ子が着地して飛びかかって来る。

 が、スカッと受け止めようとした俺をクマ子がすりぬける。

 な、なんだ?

 で、光が俺の視界を埋め尽くし……光が散る。


「わー……」


 何故か実さんがぼんやりとも唖然とも付かない微妙な顔で俺を見てる。

 萩沢は何故かゆっくりと俺を指差さんと手を上げ、周りの連中は唖然としてる。

 なんだ? 何が起こったんだ?


「それがアーマーフォーゼですね。ハネバシ様、どうでしょうか?」


 ラムレスさんが特に驚く訳でもなく答える。


『ガウー』


 クマ子の声がかなり近くに聞こえる。どう言う事だろうか?


「クマ子様のアーマーフォーゼは鎧では無く……えー……」


 ラムレスさんが言葉を濁しながら何故か俺に視線を逸らす訳で。

 ……なーんとなく嫌な予感がした。

 自身の能力欄を確認すると、勝手にグローブが着用されていて、防具欄にパンチングナイトグリズリー+メタルタートルの胸当てが表示されている。

 凄く嫌な予感がしながら俺は恐る恐る、自分の腕を見る。

 手はグローブだな……うん。クマ子がグローブモードになった時と変わらない。

 だけどその下……なんかごわごわの毛が生えている……のとも微妙に違う。


「ブワハハハハハハハハハハハハ!」


 萩沢が俺を指差して爆笑を始めやがった。


「クマ子ちゃんが着ぐるみになって幸成くんを包み込むんですよー」


 実さんが首を傾げながらリングから降りて俺の体に振れる。


「わー……んー……幸成くんの体なのかクマ子ちゃんなのかよくわかりませんね」


 俺は頭を動かして自身の体を確認する。

 腕、足、腹、胸……その全てに着ぐるみのような何かが纏わりついている。

 先ほどまでクマ子が着用していたはずの胸当てを俺が付けているし、どうなっているか理解したくない。


『ガウー』


 そう、俺は今、クマ子が着ぐるみ化して着こんでいる状態になってしまっていた!


「なんじゃこりゃあああああああ!」


 俺は自らの頬を抑えて叫んだ。

 着ぐるみなら脱げるかと頭の部分を外そうと思ったけど、脱げない。


「く……くく、羽橋、随分と可愛い外見になっちまったな」

「うるせえ!」

「あー、幸成……その、大変だな」


 茂信、同情するくらいなら代わってくれ。

 何が悲しくてクマ子が着ぐるみ化して俺が着なきゃ行けないんだよ。


「アーマーフォーゼ、別名、合体とも言われるユニークウェポンモンスターを鎧化させて防具を多重に着こむ能力です」

「中々強力そうだよな。くく……」


 萩沢、いい加減笑うのをやめろ! じゃないとグローブで殴るぞ?

 何が悲しくてクマ子の着ぐるみを着て戦わないといけないんだよ。


「元々ウェポン化する能力を持つウェポンユニークモンスターの有名な拡張能力です。場合によっては鍛冶師に防具を作成してもらった物よりも強力になる事もあります」

「場合って事は、何処かで負けちゃうんだ?」

「はい。何分、ステータス箇所に該当する物を多少上書きしてしまうので……強化が反映されない所もあります」


 鎧とかに例えると分かりやすいとラムレスさんは補足してくれた。

 何でも鎧の最大強化付与付きの防具と、アーマーフォーゼしたユニークウェポンモンスターとではやっぱり若干能力が落ちるっぽい。

 依藤たちみたいに、Lvはあるけど良い防具の素材を集めている時に良い繋ぎ装備になるんだとか。

 防具の上から付ける事も出来るけれど、重ねづけはその分、重量が増す。

 そうなったら早さに問題が出るからなぁ。


「ただ、元となったユニークウェポンモンスターの強さに依存する所が多大にあるので、防具まで手が回っていない冒険者や騎士が使用する事が多いです」

「ああ、そう……で、そう言った連中は俺みたいに狩り場で着ぐるみを着用してるのか?」

「いえ……その……」


 ラムレスさんがクマ子を着用して睨む俺から視線を逸らす。

 着てないのかよ。


「クマ子を纏っているって事だから着ぐるみとも若干違うな、表情が分かるぞ」


 茂信、冷静に分析しないでくれないか?


「幸成くんとクマ子ちゃんが一つになって、可愛くなりました!」


 実さん、お願いだから楽しそうに目を輝かせて俺を見ないでね。


『ガウー』


 クマ子が何か機嫌が良いのが分かるけど、頼むからサッサとやめてほしい。

 こんなの纏っていたら冗談にしか見えないだろ。


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