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氷結

「ガウ!」


 今度は反撃とばかりにクマ子はアースクラッシュを放って相手に回避運動を取らせる。

 するとボスは後ろに飛びのき……自らが放ったはちみつを踏ん付けて、若干足をもつれさせる。

 クマ子みたいに必要に引っ付く訳じゃないっぽい……けれど、その隙をクマ子は逃さない。

 アースクラッシュの動きのままビッグロックパンチを作動させて岩を纏って勢いよく振りおろす。


「ガアアアア!」


 ボスも負けじと、岩を纏う拳を受け止めて、何度も殴りつけて破壊した。

 が、それでも無傷と言う訳では無く、肩で息をしている。


「ガアア……ガア……」


 よく、やるじゃねえか。ここまで俺を追い詰めたのは評価に値する。

 とか何か言ってる気がする。

 それからボスは胸を張って、ファイティングポーズを取る。

 またもグローブが光ってるなぁ……きっと何か放つ気だろう。


「パンチンググリズリーのボスさん、何をする気かああああ! 大技のようです!」

「ガアアウウウウウ」


 光栄に思えよ! この技を受ける資格をお前は得たんだ!

 そう言うかの如く吠えてボスはクマ子に向かって、炎でも無い、玉を両手のグローブの間から発生させ殴りつける。

 すると、玉が熊の形を作り、クマ子へ飛んで行く。

 クマ弾と言うのかな?

 格闘漫画や対戦ゲームの飛び道具……風の拳とかの変形に見えなくもないが、密度が異なる。

 カットインが掛った飛び道具と言うのか、下手に当たったら致命傷になりかねないぞ。


「ガウウウウウウ!」


 クマ子はそのクマ弾に正面から飛びかかり、ラッシュラッシュ!

 ワンツーパンチとストレート、ジャブにスクリューパンチを放って、クマ弾のクマを殴って跳ね返す。


「あーっとクマ子ちゃん! パンチングベアーのボスさんが放った必殺技を跳ね返したー! これは驚愕の言葉しか出ない!」


 サッと跳ねかえったクマ弾をボスは避けるが、感心した様に手を合わせて拍手をしている。


「ガウ……ガウ……」


 クマ子の方は肩で息をして拳を前に向けて立っていた。


「ガアア?」


 よくやったじゃねえか、正面から返すとは良い根性をしている。

 とかボスが言ってる気がする。

 ワイワイとそこで歓声が起こる。


「くっそ……なんでこんなにみんな楽しそうなんだよ。俺のとどこが違うんだよ!」


 萩沢、まだ気にしていたのか。

 主に戦闘時間が違うと思うが。

 片方が一方的に攻撃したりとかでもないしな。


「やっぱ萩沢の戦いよりも迫力があって良いな」

「相手から何が飛び出すか分からねえし、手に汗握るぜ」

「姫野さんの言う事は確かだな。こう……相手と戦ってるってのが直に伝わってくる」

「作業じゃないから見てて面白い!」

「うるせー!」

「フシャー!」


 萩沢も立つ瀬が無いなぁ……。

 まあ、相手の必殺技を潰して、サクッと決着を付けるのとは違うよな。

 俺はそういう戦闘もかっこいいと思うけどさ。


「ガウウウ!」


 クマ子が呼吸を整えて、ボスに向かって突撃して行く。

 ボスも笑みを浮かべてそれに応じた殴り合いを始めた。

 俺の予想通り、2ラウンド目の後半に差しかかった所で、ボスが炎の拳を纏って遠距離攻撃を始める。


「ガウ!」


 クマ子はそこで俺の助言通りに水の衣を纏った。

 炎が命中すると水蒸気が発生するが、クマ子にまで届かない。


「おーっと、クマ子ちゃんが水の衣を纏って、パンチンググリズリーのボスさんの炎を受け止めたぁあああ!」


 うん。

 呼吸用の膜を発生させる物だけど、こういう防御方法があるよな。


「ガア」


 パンチンググリズリーのボスが僅かに視線を向ける。

 ああ、やっぱ入れ知恵をしたのに気づいたか。

 だが、問題はそこじゃないぞ?


「ガウウウウ!」


 クマ子とボスの拳がぶつかり、大量の水蒸気が発生する。

 で、ボスは前回と同じく、水蒸気の中でクマ子と殴り合いをしようと身を乗り出すが……。


「ガウウウウウ!」


 クマ子の両手のグローブから冷気が発生して、アイスグローブを生成する。

 そう……水蒸気さえも凍結させてな。

 魔力を思い切り込めて、氷結させているんだ。

 先ほどの水蒸気の中での戦いじゃない。


「ガアア!?」


 さすがのボスも驚きだな。

 負けじと炎を宿らせたが、もう手遅れだ。


「ガウウウ!」


 凍結してダイヤモンドダストと化した水蒸気を纏った風の拳がボス目掛けて飛んで行く。


「ガアアアア!」


 ボスに命中すると、何らかの特殊効果が発生したのか、ボスを中心に氷の竜巻が発生。


「こ、これは……クマ子ちゃんが水蒸気を利用した凍結竜巻が発生したようです! 凄い! 素晴らしい!」


 実さんは実況はいるとキャラが変わりますね。

 やがて……竜巻が散るとボスが所々を凍りつかせて立っていた。

 辛うじて、拳周りだけは炎で防御する事が出来た様だけど、他の部分は凍りついている。


「ガア……ガア……」


 やる、じゃねえか……予想だにしない攻撃をしてきて……飽きねえぜ。

 とかボスがクマ子に言ってる様に鳴く。


「ガウ」


 クマ子がチラッと俺に視線を向けた。

 まあ、助言したのは俺だし。

 ボスの方も俺に視線を向けた後、満足した様に笑みを浮かべる。


「ガアアア!」


 これで最後だぁあああ! とばかりに今出せる全力の一撃、クマ弾を辛うじて生成して、合体する様に突撃、クマ弾を纏ってボスはクマ子に殴りつける。

 が、クマ子はそこでクロスカウンターとばかりに体をねじってボスの一撃を避けてボスの顔面を殴りつけて飛び越える。

 スタッと着地したクマ子。


「ガアア……」


 よくやったなとボスが鳴き、クマ子が振り返る。

 そして……ボスは振り返って仰向けに倒れた。


「ガウガウウウ」


 クマ子はボスに向かって何やら鳴く。

 するとボスも倒れたまま返事をしていた。

 多分、色々と危なかった。Lvと防具……そして俺の入れ知恵が無かったら負けていたかもしれない、かな?


 ボスの方もボスの方で、タラレバは余計だ。今は、お前に勝利を譲ってやる、次戦う時があったら、今度は負けねえぞ。

 フッと自嘲する様な笑みを浮かべている。

 雌と思って侮ったこっちの落ち度だな。

 と、鳴いた後、ボスとクマ子は視線を交わし両者そろってグローブを突き出して挨拶を終える。


 直後、パンチンググリズリーのボスは光となって消えた。

 カンカンと言う試合終了の合図が何処からか鳴り響き、パンチンググリズリー達が喝采する。

 それは俺達の方も同じで拍手が巻き起こった。

 良い試合だったって事なんだと思う。


「くっそー……」


 悔しがるなっての萩沢。

 俺もサッサと終わらせたかったのにクマ子が試合をする羽目になったんだからさ。


「勝者ぁあああ! クマ子ちゃあああああああん!」

「ガウウウウウウウウウウウウウウウウ!」


 なんて感じに実さんとグリズリー側の審判がクマ子の勝利を称えて試合は終わった。

 クマ子も勝利のポーズをとっている。

 で、グローブが光り輝いた。


 ピーコックブルーパンチングナイトグリズリーのパンチグローブ 付与効果 動体視力向上 ファイアグリズリークロー アイスグローブ 野生の勘 ハニーバインド グリズリーオーラ グローブスイッチ インスタント拡張能力 ボクサー


 攻撃力が随分と上昇しているなぁ。

 もちろん、スイッチで過去のグローブに変えてもそれは変わらない訳で。

 そういやクマ子の変身は人化を除いて二種らしいけど、グローブの方は際限が無いのかな?

 まあ、自然と使わなくなるグローブとか出てきそうではあるけど。


「ガウウウウ……ガウ!」


 お? クマ子を中心にまたも魔法文字が浮かび上がって光を纏う。

 で、光が散るとそこには……クマ姿の、あんまり姿が変わらないクマ子が立っていた。


「わー、クマ子ちゃんやりましたね」

「ガウ!」


 ご機嫌なクマ子が俺の元に擦り寄って勝利のポーズをとる。

 よくがんばったな。


「実さん、クマ子の手当てをお願いするね」

「はーい」


 その間に、観客をしていたパンチングナイトグリズリー達はこっちに手を振りながら解散して行く。

 ホント……試合だなこれ。

 殺し合いじゃないのかと毎度思うのだが……つくづく魔物の生態はよくわからないな。


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[気になる点] >  クマ子みたいに必要に引っ付く訳じゃないっぽい 執拗に、では?
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