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「強くなりたい作業的な試合をするんだったら、盛り上がりは諦めるべきね」

「むしろそれだけ強いんだったら一段飛ばしで戦ったら良かったんじゃない?」

「予約が……」


 抜けた穴とスケジュールの合間で良かったのがダックスフンドしかなかったんだよ。

 剣系は特に人気が高いのも理由だ。


「ニャー」


 ミケが剣からサーベルキャット姿に戻って悔しげにしている萩沢を宥める。

 なんとなく、嫌いな対戦相手を倒して頂き、光栄の極みとかポーズを取っているな。


「うう……俺を認めてくれるのはミケだけかよ」

「俺もいるぞ。強くなったし、萩沢が凄かったのは確かだろ」

「ガウー」

「羽橋に言われても全然嬉しくねー……」


 どうすりゃいいんだよ。

 しょうがないのでミケの方に視線を向ける。


「これでミケもパワーアップか」

「クマ子の例を出すと変身が出来る様になったんだな」

「ああ」

「フシャー!」


 何故かミケが機嫌悪そうに答える。

 アレか。嫌いな種族になんて死んでもならないって事かもしれない。


「ニャアアア」


 あ、なんかポージングしている。

 腕力が上がったとかそう言いたいんだろう。


「にゃあああん」


 ん? ミケが萩沢に対して妙な鳴き方をしていた。

 この意味を知るのはもう少し先の事だ。


「ともかく、これでミケも強くなったし、次へ移動するか」

「ガウー」

「羽橋、絶対にお前の試合を見て鼻で笑ってやるからな」

「根に持つなっての」


 笑って観客席で見ていたのはお前だ。

 むしろ俺みたいな土臭さが無くて羨ましいよ。

 どうして俺の試合ってああも汗臭い戦いなんだろうか。

 実さんには悪いけど俺も結構Lvが上がってるし、物理で押し切ってサクッと終わらせようと思う。



 そんなこんなでユニークウェポンモンスターの強化ツアーは進んで行った。

 道中、クラスメイトの試合の観戦をしつつ……船はボクサー系の魔物が生息する島へと到着する。


「今日はこの島で宿泊しまーす」


 実さんが案内員として島の階段を上って行く。ぶっちゃけ小山だな。竹っぽい植物がこの辺りの島には絶対に生えているのだろうか?

 暗くなってきたから良くわからないけど、この島のは緑っぽいけど。

 ジムみたいな宿泊所に立ち寄り、実さんは札を……なんで三つも持ってるんでしょうね?


「大変だったんだよー三つも予約するの」

「三つも取っていた事が驚きです」


 どれだけ俺を戦わせる気だろう?

 というか三回も戦わないといけないのか?


「えっとー夜間試合が二つあるよ。行こうか?」

「今夜連戦なの?」


 萩沢、笑うな。茂信、何か言えよ。

 俺が茂信を睨む。


「ううん。今夜は一試合で明日の昼に一試合、夜にもう一試合」


 ……どんだけ?


「これでクマ子ちゃんが素敵になるね」

「ガウー?」


 あ、実さんにとってはクマ子の変身バリエーションの増加が望みなのかな?

 素敵というのが、どういう意味なのか今一わからないけどさ。


「確かユニークウェポンモンスターの変身って二パターンしかないとか聞いたけど」


 茂信がそこで実さんに尋ねる。


「え? でもクマとセイウチと人化の三パターンがあるぞ?」

「要らない変身は破棄する事で変身姿を変えれるみたい」


 ああ、それで萩沢が付与した人化を消す考え?

 いや、順番が逆だろ。

 少なくともセイウチ姿をクマ子がこの前していた。

 人化を覚えた後でもだ。


「人化能力は別枠で消せないけど、クマ子ちゃんの変身する姿を幸成くんは決められるんだよ」


 あ、やっぱ消せないのか。

 となるとクマとセイウチのどちらかを倒したボスの種族で上書き出来る訳ね。

 ……水中以外じゃ動きづらそうなセイウチ姿が要らないんじゃないか?


「とは言ってもな……」


 対戦相手にもよる。

 というか実さんは俺をどんなボスと戦わせる事を計画していたのだろうか?


「クマ子、虫系はやめておけよ。幸成は虫嫌いだからな」

「ガウ!」


 クマ子も理解しているのか茂信の言葉に頷いている。

 まあ虫系は確かに嫌だな。


「えへへー……試合がとても楽しみです」


 ……きっと実さんが好きな動物と戦わさせられるんだろうな。

 別に良いけどさ。


「ガウー……ガウガウ」

「え? セイウチ姿も好きなの?」


 クマ子と会話をしている?

 実さん、貴方は何処までクマ子と友情を育んで行くんですかね?

 好きと言われても、あの巨漢にじゃれられる俺の気持ちになってください。

 まだクマの方が撫でやすいです。


「羽橋は好きな動物とかいねえの? 好みの耳を付けたクマ子にしろよ」


 萩沢……ここで余計な事を言わないでもらいたい。

 また実さんの逆鱗に触れたらどうするんだ。


「幸成の好きな動物か? 確か子供の頃は――」

「茂信、ここで厄介な事を起こすな」


 クマ子が目を光らせてるぞ。

 実さんと結託して狙って来ると思う。


「そもそも子供の頃好きだっただけで、今も好きって話じゃないだろ」

「まあ、そうだけどさ」


 ここで萩沢が言わなくても良いのに手を上げる。


「俺は猫耳ヒロインが小さい頃から好きだったぜ」


 萩沢、それは少なくとも動物じゃない。

 異世界基準なら人種だ。


「ニャ? ニャアアァアアア」


 ミケ、照れるな。お前じゃないぞ。

 お前は雄だ。

 猫耳男子を萩沢は望んでいない。

 望んでいるのはヒロインだ。


「ま、クマ子の人化姿も良い線行ってるけどな。羽橋にその気が無いなら俺と付き合わない?」

「ガウウウウウウウウウウウウ!」


 あ、クマ子が思いっきり毛を逆立たせて威嚇している。

 温和なクマ子でも冗談じゃないと怒っている様だ。

 実さんは、そんなやり取りを呆れの目で見ている。

 まあ、愛しいクマ子を汚した張本人だもんな。

 我慢はしてるけど、それ以上踏み込んだら怒るって態度だ。

 とりあえず話題を変えた方が良いか。


「萩沢は女ならどんな耳した奴でも良いんじゃないか?」


 犬耳でもクマ耳でも何でも良さそうな印象はある。


「まあな」


 いや……認めるのかよ。

 否定しろよ。更に話題を変えようとしたのにさ。


「で、羽橋の好きな動物は何なんだ?」


 萩沢、逸らした話題を戻すな!


「ガウウウウ」

「何なんですか?」


 クマ子と実さんが目をキラキラさせて茂信に詰め寄って行く。

 茂信! 堪えろ!


「話すなよ。そんな事を話しても碌な事にならないのを知ってるだろ?」


 俺と実さん&クマ子の眼力を双方に受けて茂信が冷や汗を流している。

 やがて……。


「幸成ってペンギンとレッサーパンダが好きな動物だったはず」


 茂信ぅうううううううううううううう!

 くっ……裏切ったな。


「す、すまん幸成」


 申し訳なさそうに謝罪するが、謝るくらいなら話さないでほしかった!

 俺は自分でも物凄く渋い顔をしていたと思う。

 そりゃあ小学校に入る少し前辺りでキャラクターグッズとかゲームとか、アニメとかで気に入ったキャラクターとかの関係で好きな動物くらいいるさ。

 子供故に欲しがってな。

 俺はその動物の中でペンギンとレッサーパンダに興味を抱いたってだけだ。

 子供の時はペットにしたいとか思っただろうが今は欲しい訳じゃない。


「ペンギンって耳とか無いよな? 生き物としてはあるだろうけど、特徴としての意味で、レッサーパンダとかも目立つ耳や尻尾をしてないから難しいな」


 よし!

 萩沢のケモノ耳の琴線で疑問符が浮かんだ。

 このまま不必要だと話題を逸らせる。


「そうだな。俺もレッサーパンダとペンギンのどちらかと尋ねられたらペンギンだな」


 人化時に目立つ耳とかが無い方を指定しておけばどうにかなるかもしれない。

 更に萩沢に人化時には意味が無いと逸らせば、話題を完全に変えられるな。

 拳を握りしめて実さんとクマ子に目を向ける。

 アレ? 実さんがいない?

 見ると宿泊名簿を国の人に頼んで閲覧し、休憩している挑戦者っぽい人の元へ向かっている。


「あのー」

「ん?」


 実さんが、胸を強調する様なポーズで休憩中の冒険者に声を掛けた。

 とはいえ、誘惑出来る程実さんに胸はないと思うが。


「貴方が次の対戦相手にペンギンさんと戦うんですよね? 私の予約している対戦相手のボス札と交換してくれませんか?」


 そう言いながら、大粒の瞳で可愛らしく見上げて頼み始めた。


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