表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
105/233

音声転移

「あのー……」


 今更になってラムレスさんが俺に声を掛けてくる。

 いる事は知ってたけどどうしたのだろうか?


「ハギサワ様が好みの性別のテイミングが出来なかったのは理解いたしましたが……少々気になる点があったのでお尋ねしてよろしいでしょうか? 人化薬に関してです」

「ラムレスさんが俺達に聞く事ってあるの? 異世界にある道具の話だよ?」


 ぶっちゃけ、俺達よりも異世界側のラムレスさん達の方が詳しいはずだ。

 にも関わらず聞きたい事とは何だろうか?


「ハギサワ様は人化薬を調達して、ミケ様に服用させようと思っていらっしゃったご様子。クマ子様の時もお尋ねしたかったのですが、仮に雌だったとしても人化して好みの外見かどうかは測れないかと思うのですが……」

「え? そうなの?」

「はい。言ってはなんですが、クマ子様の人化時の外見はかなり良い方かと思いますよ」

「幸成ってかなり運が良いんだな」

「ガウ?」


 クマ子が褒められて若干照れる様な、それともピンとこないかのような顔をして首を傾げてる。


「ふむ……」

「恋人目的の場合、人化させるのはあくまでも、苦楽を共にし、どんな外見であろうとも共に居たいと思える関係に至ってからでも遅くは無いかと思います」


 もしかしたら顔が良くない人化ってパターンもあるのかもしれない。

 他のパターンは、あくまでも頼れる相棒、人として側に置きたい場合に用意されるとか何だろうなぁ。

 これなら男女の区別をする必要も無い。

 クマ子の場合、巨体故に人間用の装備とか付けられないし。

 ミケの場合は小柄だから、やっぱ専用に装備を特注する必要がある。


「しかしサーベルキャットですか。ハギサワ様も良い魔物をテイミング致しましたね。人気も十分にある種類です」

「何かあるの?」

「ええ、サーベルキャットは戦闘センスは元より、戦闘に対する志など、騎士道精神を持っております。主君に仕える事が何よりの喜びであるので忠義を尽くして下さいますよ」


 良い魔物なんだ、アレ。

 確かにテイミングされてから数日なのに、随分と懐いているよな。

 まあクマ子も似た様な感じだけどさ。


「我が国の騎士にもサーベルキャット系を相棒に、人化させて伴侶にした者もいらっしゃいます」

「ヘー……」


 そういや性に関して割と寛大な認識があるって話を聞いたし、街の人達の中には動物っぽい耳やエルフみたいな耳が長い人も見る。

 獣人とか場所によってはいるらしい。

 冒険者の中にも割といるもんな。

 もしかして……萩沢みたいな奴がユニークウェポンモンスターを人化させて生まれた子達なのだろうか?


「特にサーベルキャットは戦闘面でも主の補佐を忘れません。Lv以外でも独自の成長を致しますので、異世界人のハギサワ様がどんな風にミケ様を育てるか楽しみですね」

「独自の成長?」

「ええ、ハネバシ様のクマ子様の場合、他のパンチングベアに比べて危機回避能力と反射神経が高めかと思われます。後はバランス感覚は言うまでもありませんね」


 まあ、クマ子が芸をする過程で訓練してたし。

 バランス感覚はあると思う。

 綱渡りとかも出来るみたいだし。


「体格面でも同種よりも丸みを帯びてきておりましたしね」

「そうか?」

「ガウ?」


 あ、クマ子自身が分かって無い。


「言われて見れば……」


 確かに、クマ子は会った頃よりも丸みを帯びて来ている様な気がしなくもない。


「太った……訳じゃないのか?」

「ガー……」


 あ、ショック受けてる。

 デリカシー無かったかな?


「ごめんごめん。ボクサーだから体重は十分に気にしてるよな?」

「ガウ!」


 おお、元気に頷いた。

 実さんやクラスの女子からお菓子をもらうにしても、一定数以上は食べない。

 多分、この辺りがボクサーとしての認識って事なんだろう。

 なるほど、俺と一緒にいる事で多少差が出てくるって事か。


「おっと、もうこんな時間か」


 そろそろ依藤が俺を狩りに誘う時間だ。

 客も俺の出る時間を指定していたからか、自発的に下がって行った。

 行くべきだろう。


「それじゃあ行ってくる」

「ハネバシ様の転移の力に便乗出来ないのが歯がゆく思います。ヨリフジ様と御同行している騎士に宜しくお願い致しますね」

「うん」

「幸成、頑張って来いよ」


 仕事をしながら茂信が答える。


「ああ、じゃあ行くか。クマ子」

「ガウー」


 こうして俺はクマ子をグローブ化させてから依藤の元へ転移で移動したのだった。

 依藤の元でLvを上げた結果、Lv50に軽く達した。


「お?」

「拡張したか?」


 依藤の質問に頷く。


「どんな能力を得たんだ?」

「……音声転移だ」


 やはりというかなんと言うか、視覚転移の発展系だな。

 試しに茂信の方を視覚転移で確認して使ってみる。


「茂信ー」

「ん? 幸成? あれ?」


 茂信が俺の声に反応して振り返るが、何処にいるのかわからないと言った態度を見せている。


「何処だ幸成」

「依藤の所ー、拡張能力で音声も飛ばせるようになった……が、これ魔力の消費高いな」


 みるみる魔力が減っていく。

 便利な反面、ここぞと言う所でしか使用しちゃいけないな。


「驚かすなよ。声だけでびっくりしただろ」

「いやはや、実験に使っただけだって」

「しかし……これでますます依藤達の援護がしやすくなったな」


 本当に……これで何を飛ばすかとか会話が出来る始末だ。

 どんだけ援護向きなんだ?


「じゃあ魔力の消費が高いから終わらせるなー」

「ああ」


 と言う状況で俺は依藤達の方を見る。

 何か俺を見てた。


「どうした?」

「いや、パクパクと声を出してる様には見えたが、何も言わずに居るからよ」

「音声を転移させてんだからそうだろうよ」

「そうなんだろうけど、腹話術をしてるみたいだったな」

「これって異世界にいる時も出来るのか?」

「どうだろうな……ぶっちゃけお前等に日本にいる時に声を掛けて、知らねえって言われるときつすぎるんだが……」


 俺の言葉に依藤達が居心地が悪そうに視線を逸らす。

 まあ……覚悟の上で実験したんだが、音声転移と聴覚転移は日本にいると使用不可能だった。

 どんな基準何だろうか?

 まあ良いや。

 そんな訳で、俺の転移作業はますます援護向きへと拡張して行っている。



 で、依藤と一緒に狩りをした後、城下町に戻ってみんなの会議に出席する。

 会議って言っても日によって様々だ。

 俺に日本で取り寄せて欲しい品をリスト化させるとか、何かみんなに知らせないと行けない事案とかだ。

 国で起こった事件や噂とか、割と世間話を数時間くらいする程度。

 もちろん、俺に出前を頼む場合も存在する。


 依藤達みたいな出かけている奴もいるから、後で重要な話題は目録を付けているんだけどさ。

 ちなみに依藤は俺が定期的にどんな事があったか報告に行く間柄だ。

 あ、黒本さんが何か資料を纏めてやってきた。


「ちょっと緊急って訳じゃないんだけど、いろんな国の伝説とか色々と調べてて疑問に思った点が出てきたから報告するわ」

「前にも似た様な事を言ってたね」

「ええ」


 黒本さんがこうして報告するのは何度目だっただろうか?

 この国ライクスは大事が起こる際、メーラシア大森林から魔王か勇者か、異世界人が現れると言われている。

 歴史的に勇者と呼ばれる異世界人のお陰で大きな問題を解決してもらう事は多々あり、おとぎ話の次元にまで至っているそうだ。

 でだ。黒本さんの話だと、そのおとぎ話で出てくる勇者はいろんな名前がある。

 なのだけど……どうも名前に混在が無数にあるのだとか。


「最初は偶然とか、一人の勇者……異世界人の冒険譚だと思ったんだけど、どうも腑に落ちない点が増えて来てるの」

「例えば?」

「同じ勇者のはずなのに持っている能力が違う。なのに名前が同じだったり、召喚前のクラスが同じクラスだったりね」


 口伝や書き直しの際に混合してしまったと考えるのが妥当だけど……黒本さんは首を傾げているそうだ。

 それだけ引っ掛かる部分があるという事だろう。


「勇者の名字もこのクラス内にあったり、無かったりとまばらなんだけど……」

「名字被りくらいあるだろ」

「そうなんだけどね。だからリスト化させてみたのよ。召喚されて森から出てきた異世界人と思わしき人達を」


 という訳で黒本さんが伝説に名を連ねる異世界人達の名簿を見せてくれた。

 ん? これって……。


「あれ? 私の名前がある」

「私も」

「俺も」

「同姓同名だったんじゃね?」


 奇妙な偶然があるな。

 それにしては数が多いのが気になるけど……。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ