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サーベルキャット

「あのー……そもそも異性個体をテイミング出来るかは運かと思うのですが?」

「ん? 事前に確認をすれば良いんじゃない?」

「雌雄の判別はテイミング前だとプロでも難しいそうですけど……ハギサワ様なら何か名案があるのでしょうね」


 とラムレスさんが説明している。

 アイツがそこまで考えているとは思えないが……。


「幸成はクマ子と楽しくは……」


 茂信の言葉にクマ子は人化してアピールしてくる。


「ガウー!」

「クマ子の方が乗り気だな。やるか?」

「……あのなぁ」


 という所でクマ子のお腹が鳴った。


「じゃあクマ子ちゃん、ご飯ですね」


 実さんがやってきたのはクマ子へ餌付けだったみたいだ。

 持ってきた袋からクマ子へ食べ物を渡す。


「ガウ」


 で、クマ子の奴、普段通り食べ物を受け取ると地面に置いて四つん這いになって食べ始めた。


「うわ!」

「クマ子ちゃん!? く……萩沢くん! こんな物を見せるなんて!」


 茂信と実さんがドン引きしている。

 美少女が四つん這いで地面に落ちた物を食べるのは非常に見栄えが悪い。

 まるで奴隷に命じているかのようだ。


「クマ子、手で掴んで食うか、クマ姿になって食べてくれ」

「ガウー?」


 俺に注意されて渋々と言った様子でクマ子はクマ姿に変身して食べるのを続行する。

 うん。それで良いと思う。

 人化を頻繁にするなら人としての食べ方を教えていかないとなぁ。

 面倒な教育が増えるな……。


「ついでに後で服を作ってもらおう」

「破けちゃわない?」

「伸びても大丈夫な服か、人化した時だけ着る様に命ずるしかないなぁ」


 魔力で糸とか作って服に出来たら良いのにな。

 というか、その辺りの調整をしてくれないだろうか?

 ほら、裁縫の能力とかで変幻自在にさ。


「足がクマとか出来るなら隠す場所をクマのままに出来ないか?」

「ガウ?」

「幸成、それもどうなんだ?」


 言って、クマ子がやって見て気付く。

 うん。どっちにしても何か卑猥だ。

 早急にクマ子の人化で起こった服の調達を視野に入れておこう。


 結果、クマ子が人化する場合はマントを首輪とセットで羽織る事になった。

 マントの内側には予備の服があり、変身した時に手にとって着替えられる様に細工された。

 まあ、地味に胸が大きいのでブラの装着を視野にいれられたが、それは状況次第でって事になった。


「まったく……とんでもない日だったな」

「ガウー」


 日も沈み、眠くなってきたので、何時も通り異世界の自室でベッドに横になって寝ようとしていた。

 クマ子が時々ベッドに入って来る事もあるけど、慣れた。

 が、クマ子は何を血迷ったのか人化して同じベッドに入って来る。


「うわ! 人化はやめろ!」

「ガウー?」


 さすがに女の子と添い寝する程、俺は神経太くない!

 だが、クマ子は俺の事などお構いなくとばかりになのか、分かっているのかどっちにも付かない態度で、横になる。


「く……」


 これで寝ろと言うのか?


「ガウ」


 クマ子が俺に腕をからませて来る。

 む、胸が当たる! や、やめろ!

 必死に抵抗するのだが、相手がクマ子故に無下に出来ない。

 と言う所でコンコンと扉がノックされる。


「だ、誰だろう!?」


 これはチャンス!

 良いタイミングで来てくれた!

 そう思って扉を開くと、そこには実さんが若干焦った様に呼吸を乱してやって来ていた。

 あ、次の展開読めた。


「やっぱり、こうなっていると思ってました」

「ガウ」


 クマ子が舌打ちした様に見えたのは気の所為じゃないと思う。


「実さん、どうしたの?」

「幸成くん、クマ子ちゃんが人化してベッドに入ってきたらどうするんだろうと思って不安に思って来ました」

「うん、良かった! 凄く困っていたんだ」

「困っていたんですね? クマ子ちゃんと一緒に寝て……き、キスとか、その……」


 うわ、実さん、顔を赤くして何を言っていんだ!

 実さんの中で俺はどんなキャラ付けなんだよ。


「俺には……まだそういうのは早いと思うんだ」


 今まで思い出さない様に勤めていたけど、脳裏に森に居た頃、泉での出来事が蘇る。

 そうだ……俺はまだ、恋愛なんて出来る立場じゃない。

 めぐるさんとの約束を果たすまで、そう言った事は……考えたくない。


「だと思いました。だからクマ子ちゃん、その姿で幸成くんを誘惑するなら、私の部屋で一緒に寝る事になりますよ?」

「ガウー……」


 クマ子が非常に残念そうな顔をしてからクマの姿に戻って、ベッドの脇で横になる。

 ちなみに時々なのだが、クマ子が俺を抱きかかえる形でベッドから落ちてる事があるのだが、これは俺の寝相が悪いのか、それともクマ子が俺を抱き枕にしたからなのか。

 それはわからない。


「という訳で、今日は私がクマ子ちゃんと一緒に寝ます」

「ガウ!?」


 何がという訳なのだろうか?

 よく見ると実さん、分厚い毛布と大きな枕を持ってきてる。

 まあ、クマ子が俺相手に発情とかされたら困るし、監視してもらうか……?

 今度実さんとクマ子用に俺の部屋にベッドをもう一つ用意するかな。


「良いの?」

「ガウ!?」

「うん」


 クマ子が驚きの声を上げているけど、しょうがないでしょ。


「じゃあお願いするね」


 と言った感じで、実さんを部屋に招き入れて俺達は就寝した。

 まあ、クマ子と実さんの寝息で、寝付くのがちょっと辛かったけどさ。

 クラスメイトの会議でその事を報告したら男子勢に嫉妬の目を向けられた様な気がしたけど……まあ、男子勢も良い感じの相手がチラホラ出来たそうで、そこまでの事は無かった。



 そんなこんなで萩沢が旅立って数日経過したある日の事。

 萩沢が、何かこう……骸骨みたいなと表現する程、やつれた顔で帰って来た。


「ニャー」


 その後ろには萩沢の剣だと思わしき、剣を背中に付けた、頭にバンダナを巻いた、前掛けを付けた三毛猫が楽しげに付いて来た。

 かなり小柄、ハンティングゲームのお供をする猫みたいだ。


「お? テイミングを成功させたのか」

「……」


 何か全ての気力を損なったかのような、絶望的な表情をしている。

 一体、どうしてそこまで疲れきっているんだ?

 アレか? その猫に絞り取られたとかだろうか?


「ニャ!」


 あ、礼儀正しくお辞儀をしている。

 やっぱ頭良いみたいだ。

 萩沢に懐いているし、良いんじゃないか?


「ガウ」


 クマ子も挨拶を返して握手をしている。


「……ただいま」


 絞り出す様に萩沢が答える。


「おかえり」


 茂信は絶賛接客中だ。

 俺の方も地味に忙しい。

 何か俺が後付けの付与を転移出来る事が口コミで広まって、武具の後付け転移をして欲しいと来る客が増えた。

 もちろん、料金は頂く。


 なんか、茂信や国の鍛冶師が行う抽出と付与だと武具本体が破損したり消失したりする事があるんだけど、俺がする付与転移だと付与効果事態は落ちるけど、失敗による消失が無いからとラムレスさんが教えてくれた。

 しかも抽出とかで出来た物も劣化する分、お得らしい。


 そんな合間での事だった。

 萩沢の奴、何処までもテンションが低い。

 どうしたんだ? 見た感じだとサーベルキャットが一緒にいると言うのに……?


「はぁ……」

「どうしたんだよ?」


 すると萩沢は全てに絶望したかのように顔を隠しながら呟く。


「……雄だった」

「は?」

「俺がテイミングしたサーベルキャットが雄だったんだよ!」


 あー……なるほど、根本的な問題だった訳ね。

 だからって俺に当るなよ。


「くっそー! 三毛猫ならば絶対に雌だと思ったのに!」


 ラムレスさんも何か運とか言ってたけど、違ったのか?


「性別なんてテイミング前に確認すれば良いんじゃないか?」

「ユニークウェポンモンスターってのはテイミング前だと見分けが付け辛いの! だから確実な方法と、人化時に好みの耳や尻尾が生える種族を選んだってのに!」


 バンと萩沢が壁に拳を当てる。

 そんなに悔しいのか?


「さっき、三毛猫なら絶対雌だと思ったのにとか言ってたけど……」

「ああ、サーベルキャットは体色に統一感の無いユニークウェポンモンスターで猫と同じくいろんな色合いがあるんだよ」

「ニャー!」


 あ、萩沢の説明に胸を張っている。

 君、萩沢に求められてないよ?


お約束ですよね。

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― 新着の感想 ―
[一言] "魔力で糸とか作って服に出来たら良いのにな。" また、盾の勇者を感じる文やな… というかここまでくると作者さんが重度の盾勇ファンってのがはっきりわかるな(笑)
[一言] し っ て た
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