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ニューキーツ 作者:奈備 光

5章 チョットマの冒険

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77 木と鉄とセラミックの色

 ンドペキはようやくテーブルにたどり着いた。
 そこには木の板が嵌め込まれていた。
 もちろんそれに触れてはいけない。
 次のテーブルを目指して歩き出した。

 と、そのとき、声がした。
 地の奥深くから聞こえてくるような、かすかな声だった。


 呪いの板は三枚。

 ひとつは木片。
 ひとつは鉄片。
 ひとつはセラミック片。

 木片は夢を表し、鉄は血を、焼き物は時を表す。

 さあ、どれでも好きなものを取れ。


 声は消え、広間は静まり返った。
 ンドペキは改めて辺りを照らしたが、どこにも声の主はない。
 やっと出やがったな。
 ンドペキは呟いたが、それきり反応はない。


 真っ暗な闇の中で、ンドペキが投げかけるライトによって、岩壁や、天井や、石のテーブルが浮かび上がっては闇に埋もれていく。
 どんな物音もない。
 かすかに水の臭いがするだけ。

 空気も、暗闇に呼応するかのように、ぴたりと動きを止めている。

 ンドペキは、
「出て来い!」と、叫んだ。
 声が岩壁に何度も反響したが、それが消えると、再び静寂だけが残る。
 ンドペキは木片のテーブルの脇に立ち尽くしたまま、何かが起きるのをじりじりする思いで待った。

 しかし、ただしんしんとして、暗闇が身を包むのみ。


 どうするべきなのだろう。
 どれかを選ぶべきなのか。
 声を無視して、空洞の壁を壊すのか。

 引き返すという選択肢はない。
 どうする。
 ンドペキは、ライトが照らし出す岩壁を凝視しながら自問した。


 また、声がした。

 選ばねば、ここからは出られない。
 選べば道は開かれる。


 そしてまた、静寂が訪れた。
 ンドペキは相手が人間の男であると確信した。
 生きている人間、意識だけの人間、死んだ人間も含めて。

「道とは!」
 ンドペキは大声をあげた。
 答が返ってくるとは思わなかったが、相手が人間なら言葉は通じるだろう。


 静寂が続く。
 やはり答える気はないようだ。

 怒りがこみ上げてきた。
 愚弄する気か!

「こんなまやかしに、俺が付き合うとでも思っているのか!」
 ンドペキは、量子銃を構えた。
 空洞をぶち抜いてやる!


 そのとき、
「待ちなさい!」
 鋭い声がンドペキを捉えた。
 女の声だった。
 しかも、すぐ近く。
 ンドペキはパッと、声のした方に銃を向けた。


 何ものもいない。
 水辺が黒々とした深みを作っているだけだ。

「もう、私を忘れたの」
 再び、女の声がした。

 と、水中に黒い影が見えた。

 水は上層部と深みとでは性質が違うのか、水面は穏やかだが、黒い影の周りではもあれが生じている。
 影が揺れた。
 見る間に浮き上がってくる。
 ンドペキは、撃ち逃すまいと照準を合わせ、待ち構えた。

 相手が誰であろうと、ここで邪魔をするやつはすべて撃ち殺す!

「会いたいって言うから」
 影は水面近くまで来ることはなく、そう呟くと小さくなっていった。
 深みに潜っていったようだった。

「スゥが言ったことを、よく思い出しなさい」
 という声を残して、影は見えなくなった。
 水中のもあれは収まり、水面は鏡のような平穏に戻った。


 ンドペキはその場に立ち尽くしたまま、長い間身じろぎもしなかった。
 男の声も、女の声も、二度と聞こえてこないということを悟ると、冷静さを取り戻した。

 ここで空洞に向かって銃を放てば、いずれは岩壁をぶち壊すことができるかもしれない。
 しかし、それほどの衝撃を与えれば、この広間も無事ではいられまい。
 天井が落ちて埋まってしまうかもしれない。
 もちろん、あの声の主も黙ってはいまい。
 岩壁をぶち破る前に、こちらが真っ二つだ。

 ンドペキは男の声と、女の声が言ったことを正確に思い出そうとした。
 選べるものは三つ。
 そのどれかを手にするしか、残された道はない。
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