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ニューキーツ 作者:奈備 光

5章 チョットマの冒険

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76 有機物の小片の色

 ンドペキが瞑想の間を出てから、すでに三時間が経っていた。
 洞窟はどこまでも続いているかのようだった。
 通路は狭く、深い闇が続いていた。

「これじゃ、朝の決戦に間に合わないな」
 敵を挟み撃ちにする作戦は立てられないかもしれない。
 しかし、出口が見つかれば、洞窟に立て篭もりながらも安心感がある。
 後退しつつ、敵を減らしていくという作戦も立てられる。


 自然にできた洞窟だが、通路はほぼ水平に伸びていた。
 右へ左へとくねくねと折れ曲がり、見通しは悪く、しかも歩きにくい。
 瓦礫が積み重なり、床を形成している部分もあったが、ほとんどの区間は巨石の重なりの隙間にしか過ぎなかった。
 空中走行ができなければ、進むことはほぼ不可能だろう。

 出口はないか、枝分かれしているところはないか。
 それを確認しながらの走行である。
 心は焦ったが、前進はスマートとはいかなかった。

 ただ、所々に少々広くなっているところもあったし、上下に落差のあるトンネルもある。
 極端に狭くなって、人ひとりが屈んで通れるのがやっと、という狭隘部もある。
 万一の時には、荒地軍を待ち伏せするに適したスポットだ。
 ンドペキはそういう位置を記憶しながら、先を急いだ。


 スゥの言った、危険な男を気にしていなかったわけではない。
 完全武装しているし、ライトで前方を照らすだけではなく、スキャンも飛ばしながら用心深く進んでいた。
 特に、広い部分に入るときには入念に、その全域を確認してから足を踏み入れた。
「どう危険なのか、よく聞いておけばよかったな」

 また、ンドペキはひとつの広間に出た。
 五つ目の広間である。
 例によって、広間の入り口で立ち止まり、くまなくライトを照らしてまずは様子を見た。
 赤外線で探知。
 磁気は?
 電磁波は?
 異常はない。

 エックス線でも、壁や床や天井をスキャニングして確かめた。

 と、おぼろな影が見えた。
 壁の一部に空洞がある。
 幅五メートル、高さは二メートルほど。

 空洞があることはわかるが、厚い岩に遮られて、そこに何かが潜んでいるかどうかまでは分からない。
 しかし、何かいる。直感的に、ンドペキはそう感じた。

 ここか。


 あいつは、彼といったな。
 人間の男であれば、相手になるだろう。
 しかし、殺傷装置であれば厄介だ。
 あのチューブでの出来事を考えると、身の毛がよだった。

 様々にスキャンを試みたが、形は捉えられない。
 動物とは限らない。
 マシンかもしれない。
 ンドペキは、その痕跡を広間に探した。
 そこには、ごつごつした岩が散乱するだけだったが、そのひとつに目を留めた。
 小さな岩だが、平らな面が真上を向いている。
 その面に、有機物の小片が認められた。

 洞窟内にも、小さな虫やクモや、地衣類などがかすかに生えている。
 しかし、その小片はきれいな正方形をしていた。自然に存在する有機物ではない。
「テーブルか」
 ンドペキは心の中でそう言い、ということは人間か、と思った。


 ンドペキは、スコープを熱反射モードに変えた。
 何も写らない。
 感度を上げていく。
 小さな生物なら、かなり感度を上げないとスコープの小さなモニターでは埋もれてしまう。

「ん」
 正方形の小片にはかすかな熱反応があった。
「ふむ。ふたつか」
 もうひとつの小片が目に止まった。
 また別の岩があり、こちらも水平面を上に向けている。
 そしてまたひとつ。

「全部で三つか」
 ンドペキはセンサーか、何かのスイッチではないかと思った。
 それらを仔細に観察しようとしたが、離れているせいでよくわからない。
 少なくとも一番手前のものに、有機物の反応があるだけだ。


「まるで、まじないだな」
 ンドペキは、そんな軽口を自分に投げかけて、心を落ち着かせた。
 そして改めて、広間を見渡した。

 ここは、これまで通ってきた広間に比べて、格段に規模が大きかった。
 瞑想の間と同じくらいのホールである。
 しかも、やはり右手には淵がある。

「んっ」
 ンドペキは重要なことに気づいた。
 出口がないのだ。

「クッ、行き止まりか」
 ここに到達するまでに、分かれ道はなかったはずだ。
 どこかで見落としたのだろうか。
 背筋が冷たくなった。
 とんでもないミスをしてしまったのではないだろうか。


 しかし、ここで引き返すのが最良の行動ではない。
 この広間を探索しなければならない。
 スゥの話が正しいとすれば、どこかに必ず出口があるはず。
 空洞の壁を吹き飛ばせば、その向こうに通路が現れるのだろうか。

 ンドペキは、広間の中に一歩を踏み出した。
 まず一番近い、有機物の載ったテーブルを目指して。

 ふと気づいた。
 三つのテーブルは、正三角形の位置にある。
 明らかに何らかの意図があって、並べられたもののように。

 ここに間違いない。
 「彼」の住処は。


 ンドペキは生きた心地がしなかった。
 連中のように真っ二つに体が切り離されて、ここに横たわることになるかもしれない。
 そうは思ったが、歩みを止めるわけにはいかない。

 慎重に、一歩。
 また、一歩。
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