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ニューキーツ 作者:奈備 光

4章 砂塵の向こうに

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64 砂塵の記憶

 イコマのフライングアイは、砂埃を蹴立てて走っている一団を見つけた。
 軍か。
 目を凝らした。
 あっ。イコマは思わず声をあげた。
 ハクシュウではないか!
 むっ。
 ハクシュウは、一団の兵士から逃れようとしている!
 大きな弧を描きながら、何とか軍を引き離そうとしている!

 イコマは無駄だと分かっていたが、追いかけずにはいられなかった。
 キュートモードで呼びかけてみたが、応答はない。
 それどころではないのだ。
 あるいは、届いていないのだ。

「パキトポーク!」
 状況を報告すると、意外なほどあっさりした反応を返してきた。
「やはりな」
「ん?」
「どちらに向かうか。見ておいてくれ」

 ハクシュウは北から西に進路を変えた。
 どうするつもりだろう。
 西には、北方と同様、深い森があり、その先は急峻な山脈が連なっている。
 山脈を越えると、砂漠地帯。その只中にニューキーツの光の柱がある。
 そこに逃げ込もうというのだろうか。

「よし、もう追わなくてもいい。追いつけないだろ。それより、周辺を探してくれ。ハクシュウひとりではないはずだ」

 イコマは、ハクシュウを追いかけるのを諦め、軍が通った経路を遡った。
 見知った顔が倒れているのではないか、と不安になった。
 しばらくそうしていたが、それも諦めた。

「よし、それじゃ、街に戻ってくれ」
「了解だ」
「案外早く、ハクシュウは街に向かったんだな」
 パキトポークは、街で隊員を探して、オーエンやホトキンの情報を伝えることを最優先してくれ、と言った。
「ホトキンを連れてこないと、俺もスゥも、あんたのバードもここから出られない」

 それは理解している。
 いわば人質なのだ。
 オーエンの声はそう考えているだろう。
 だから、アヤの居場所を教えないのだ。
 捜索に時間をかけさせる作戦なのだ。


「まだホトキンの情報は掴めないのか」
「まだだ」
「急いでくれ」
「分かっている。ところで、誰が街にいるのか、分かるか?」
「そうだな。ハクシュウなら……」
 パキトポークは、死体を改める手を休めずに、しばらく考えた。

「きっと、ンドペキにはその洞窟とやらに篭って本部機能を果たせと言うだろう。コリネウルスにはンドペキと共同して本部の周囲を警戒させるはずだ。残るはスジーウォンだが、消されてしまうかもしれない街にスジーウォンを向かわせることはないと思う」
「ふむ」
「ハクシュウなら誰を連れて行くか……。違っているかもしれないが、その中にチョットマとプリヴは含まれると思う」
「な! チョットマを!」
「ああ、あいつは、いわば孤独な乙女だ。街に知人友人といえる相手はいないはず。顔が割れにくい」
「……」
「どうした。かわいい娘が心配か?」
 イコマはどう応えてよいか分からなかった。
 不安だった。
 チョットマにもしものことがあれば……。
 自分の不注意でアヤに不幸を与え、ひいてはチョットマにも危機を与えてしまったことになる。


「あいつが適任だと思うのは、もうひとつ理由がある。あいつはそんそじょそこらの武器で死ぬことはない。俊敏さは部隊一。どんな弾もあいつにはあたらない」
 パキトポークは、敵は物理的な攻撃をしてくるはずだと言う。なぜなら、強制死亡処置ならもうとっくにされているはずだから、と。
 このチューブの百五十人然り、今朝襲ってきた二百人然り。今ハクシュウを追いかけている五十人然り。
 敵は武器による通常攻撃を仕掛けてくる、というのだった。

「そしてプリヴは、変装の名人だ。そのための別室さえ持っている。どこにあるか俺達にも言わないが、当局にも感知されていない部屋だと自慢している」
 予想は当たっていないかもしれないが、と断ってはいるが、自信はあるようだ。

「それに、ハクシュウはきっと男と女の混成部隊を作ろうとするだろう。今も昔も、街の情報を集めるには女が適任だ」
 部隊にいる女は、スジーウォンを筆頭に、シルバック、チョットマ、それ以外に五名いる。
「シルバックは殺傷力はかなりの方だが、今回の作戦では相手を倒す場面はあまりないだろう。それにあいつは怒りっぽい。聞き込み調査などには不向きだ。後の五人は、いずれもこれという特技はない。ん、そうだな……」
 パキトポークは、ジリはもしかすると連れて行っているかもしれない、と言った。
「飛び切りの美人だという噂だ。しかし、ま、ないだろう。色仕掛けなんていう手はないだろうからな」

「男の方は、プリヴ以外に誰か連れて行くかもしれないが、いずれにしろ、それほど大きな編成はしないはずだ」
 パキトポークが、ふと思いついたように言った。
「ところで、あんた、バードという女とどういう関係なんだ?」


 イコマは街に戻った。
 戻ったところで、探す当てはない。
 ハクシュウの部隊はばらばらになった。
 きっとどこかで待ち合わせようとするだろう。
 どこだろうか。
 東部方面隊の本部や、着替え用の分室、隊員の部屋ではないはずだ。
 街を流しながら、イコマは考えた。

 念のため、チョットマの部屋の様子を見に行った。
 なにも変わったことはない。
 しかし、見張りはついているかもしれないし、センサーやカメラが取り囲んでいるかもしれない。
 部屋の前をやり過ごし、兵士が立ち寄りそうな店を見て回った。
 どの店にも、同じ紙が貼り付けてある。
「当局の指示により、当分の間、営業は中止しています」

 街を飛び回った。
 チョットマを探して。
 パキトポークの推測が当たっていることを信じて。
 ホトキンなる人物を探し出すという絶望的な気持ちを抑えながら。
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