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ニューキーツ 作者:奈備 光

3章 チューブ

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46 歌っている場合じゃない

 チョットマは、ハクシュウらと共に、コリネウルス隊に向かって駆けた。
 たいした敵でなければ問題はないが、相手のレベルがわからない以上、最善の体制は組んでおかなければいけない。

 最前線にいるのはコリネウルスの隊。
 チョットマを含めハクシュウの部隊は、最前線に急行した。
 敵の来襲まであとわずか数秒。
 間に合わないかもしれない!と思ったとき、隊員から連絡が来た。
「人です!」
「攻撃するな! 相手を確認せよ!」

 ハクシュウが指示するとほぼ同時に、部隊の全員がコリネウルス隊の周辺に展開していた。
 チョットマは最前線から数百メートル後方で、現れた敵を視野に捉えた。

「誰だ!」
 ハクシュウが怒鳴った。
 ひとりの女だった。


「撃つな! 話がある!」
 女は最前線から五十メートルほど手前で立ち止まった。
 通信ではなく、生の声で怒鳴っている。
「こちらへ!」

 女が猛烈なスピードで移動し始めた。
「待て!」
「先ほどのところへ!」
 女はさっきまでハクシュウ達が話をしていた窪地に向かっていく。
 長い髪をなびかせて。
 ハクシュウがその意味を理解した。
「全員、続け!」
 女は、政府に傍受されないところで話をしたいというのだ。
 一時の緊迫感は急速に低下したものの、チョットマは緊張した面持ちでハクシュウに続いた。

 女は、窪地の底に着くやいなや、ちょこんと腰を降ろした。
 ハクシュウが女の前に仁王立ちになる。
「あっ、おまえは!」
 チョットマも、シリー川の会談で相手の代表者を撃った女だと気付いた。
「あっ、あんたは!」
 ニューキーツの商店で出会った女でもあった。


 スジーウォンらはすでに各々の部隊をまとめて、適切な距離を置いて取り囲んでいる。
 チョットマら、ハクシュウの直属の隊は、ハクシュウの後ろに控えて静止していた。

 女が一拍の間をおいて口を開いた。
「おまえなんて言われる筋合いはないよ」
 ハクシュウが女の言葉を無視して、
「コリネウルス! もうひとりを探せ!」と叫んだ。
「了解!」
 コリネウルスの隊が、女が来た方向に一気に散っていった。
「探す必要はないよ」
「なに!」
「自分で出てくるから」
「コリネウルス! 探せ!」
「探しに行ったら、逃げちゃうかもしれないよ。彼はシャイだから」

 チョットマは、ンドペキだ、と直感した。
「ちょっとあんた達、落ち着いたらどう? 私はこうして座っているよ。戦意も見せてないよ」
 確かに女は目だった武器を持ってはいないようだ。
 ハクシュウも、もうひとりがンドペキだと思ったのかもしれない。
「コリネウルス! 捜索中止。その場で待機せよ!」


 なおも女を睨みつけていたが、やがて静かな声を出した。
「話があるといったな。聞こうか」
「その前に、全員をこの窪地の中に集めてくれない? 街の連中に聞かれたくないからね。それに、あんた達全員、通信を切って、位置確認装置も切ってくれない?」
 どうするのだろう、とチョットマは思ったが、ハクシュウは直ぐに決断した。

「コリネウルス、隊を戻してくれ。先ほどの場所だ」
「了解」
 そして女に向かって言った。
「少し待て」
「うん、いいよ」
 チョットマは、落ち着き払って生意気な口を利く女に苛立ちを覚えた。
 ンドペキを引き渡す代わりに、何を要求するつもりだろうか。


 全員が窪地に集結すると、ハクシュウが通信や位置確認装置を切るように命じた。
 女はそれを待って、ゴーグルを外す。もともと、ヘッダーはつけていない。
 ハクシュウもそれに倣う。
 万一、この状態でマシンに襲われたら、犠牲者が出ることも考えられる。
 不安はある。

 女がインナーマスクも取った。
 チョットマは街の武器屋で、素顔を見ているので驚きはしなかったが、隊のメンバーからはどよめきが起きた。
 先ほども素顔を見せて食事を摂るものがいたが、マスクまでは外してはいない。
 こんな荒野のど真ん中で、女が素顔を見せるという大胆な行為に驚いたのだ。
 まさか、全員にマスクを取るよう、女が求めるのかと不安になったのはチョットマだけではない。どよめきの中に唸り声が混じっていたのはそのためだろう。

「私に敵意がないことをわかってくれた?」
 女はあでやかに笑って、乱れた髪をいじった。
「話とは?」
「話は、私がするんじゃないの」
「なんだと!」
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