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ニューキーツ 作者:奈備 光

3章 チューブ

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44 窪地の記憶

 イコマはハクシュウを見ていた。
 ハクシュウは部隊に大休止を命じてから、自分も食事を摂り、スジーウォンとコリネウルスとパキトポークを呼ぶ。
 今晩どうするかを相談するのだろう。
 これまでのところ、ンドペキの足取りはまったく掴めていない。

 イコマはハクシュウと話をしたかったが、チョットマがハクシュウと離れたところにいるので、自分だけが飛んでいって話しかけることははばかられた。あくまで自分はチョットマと行動を共にしているのであって、この行軍に参加しているわけではないからだ。
 しかし、改めてアヤのことを頼みたい。
 ハクシュウがこちらに顔を向けてくれるときを待っていた。

 三名の伍長が集まった。
「では、今からどうするか、相談しよう。チョットマも参加してくれるか」
「えっ、私もですか」
「そうだ。でも、実際は君と相談したいのではない。君のパパにも参加してもらいたいと思ってな」
「ハイ!」

 ありがたきかな!
 これで、アヤの救出を改めて頼むことができる。
 スジーウォンとコリネウルスとパキトポークはヘッダーを被っていた。どんな表情をしたのかわからなかったが、異議を唱えはしなかった。


 本隊から離れ、擂り鉢上の深い窪地に移動した。
「政府の監視モニターや電波の傍受をできるだけ受けないようにするには、こういう井戸の底のようなところがいいのよ。街の近くでは意味はないけどね」
 チョットマがキュートモードで伝えてきた。
「そうみたいだね」
 イコマは微細な電波の内容を読み取ることはできないが、存在の有無はわかる。
 窪地に降りていくにつれ、錯綜した電波の数はかなり少なくなっていった。
「これだけ街から離れていると、大丈夫じゃないかな」

 やがて、輪になって地面に腰を落着けた。
 ハクシュウが唐突に、アヤの救出について伍長に意見を求めた。
「ここで野営するか、ンドペキの捜索を続けるかを話し合う前に、皆の意見を聞いておきたい」
 まず、発言したのはパキトポークだ。
「救出するといっても、どこにその人はいるんです?」
 もっともな意見である。
 イコマはハワードが情報を得てくれることに期待しているが、今のところ有意義な情報はない。

 ハクシュウが聞いてきた。
「イコマさん、どうですか?」
 正直に言うしか仕方ない。
「街の北部にある施設、というしか情報はありません」
 パキトポークが巨体を揺する。
「失礼ですが、その情報は確かですか? 街の北部で建築物を見たことがないのですが」
 イコマは、ハワードに聞いたとおり、かなり大規模な施設だといわれている、と言うしかない。
「我々が行ったことのない、かなり遠いところでしょうか?」
「わかりません」

 短い間を置いて、スジーウォンが声をあげた。
「探してみるしかないのね」
「しかしどこを?」
 明らかにパキトポークは乗り気ではない。
 この反応は当然だと思った。
 まだ、ンドペキも見つかってはいないのだ。

 アヤを探して欲しい。自分にとってはこれだけが重要だ。
 しかしそのためには、ンドペキが無事に見つかるという運も必要だ。その上で、彼らの親切に賭けるしかないのだ。
「厚かましいことをお願いをしているのは重々承知しています。もちろん、ンドペキさんの捜索を優先してください。ですが、もしバードが監禁されている施設に少しでも心当たりがあるようでしたら、ぜひお願いしたいと思っています。なんとかご協力をお願いできませんでしょうか」


「一刻を争うのでしょう?」
「はい、そうです。その施設がどんなところなのかわかっていませんが、脱出できた者はいないと言われています。それに彼女は、以前は兵士だった経験もあるようですが、今は普通の事務員です。戦うすべも身を守るすべも持っていません」

 泣きたい気持ちだった。
 自分が犠牲になってアヤが助かるのなら、迷うことなく身を投げ出すことができる。
 そう感じていた。
 ユウと再会を果たすという願いを捨てるというのではない。
 二兎を追うことができないのなら、確実に今窮地に立たされているアヤを助けたい。
 それが最後に自分ができることだと確信していた。

「我々に何ができるか、わかりません。なんのお役にも立てないかもしれません。しかし、もし娘さんを救出できるチャンスがあるなら、それを見逃しはしません」
 ハクシュウが言った。
 スジーウォンが頷いた。
「いいな」
 ハクシュウはコリネウルスとパキトポークに念を押すと、各隊員にもこの方針を伝えてくれ、と言った。
「了解です」
 パキトポークは応えたが、コリネウルスは黙っていた。
「どうした、コリネウルス」

 コリネウルスはそれでも応えず、立ち上がった。
「何者かが近づいています!」
 全員が驚いて立ち上がった。
「うちの隊員からの一報です!」
「方角は? 詳細は?」
「北西の方向! 相手は二体の模様!」

 ハクシュウがヘッダーを被り、全軍に戦闘準備を命じた。
「人ではないかもしれません! GPSでは機種判別不能! レーダーには反応しません!」
 コリネウルスが、隊員からの報告を口移しにハクシュウに伝えた。
「戦闘準備! 北西方向より不明物体接近! 到達予定二十五秒! コリネウルス隊を救援せよ!」
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