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ニューキーツ 作者:奈備 光

2章 シリー川と洞窟

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31 白い廊下に響く声

 シリー川で会談が行われているころ、アヤは食堂に向かっていた。
 昼食を食べるにも、スキャナーエリアを通らねばならない。
 持ち場から離れるときには、必ず全身スキャナーを受けなければならないのだ。

 IDカードをかざし、生体認証を受けると扉が開く。
 エリアの中は何の変哲もない普通の廊下だが、三歩先にまた扉がある。
 その間を歩く間に、スキャニングされるのだ。
 IDカードと制服以外に、どんなものも身に着けることは許されない。

 ひとりずつ、通過していく。
 しかし、慣れたものだ。
 一度だって、三歩先の扉が開かなかったことはない。

 このときも、いつものように扉は開き、そのまま廊下が続いていた。
 白い壁と天井に、黒い床。
 飾り気の全くない風景だが、オフィスなのだからこれでいいのだろう。
 両側にドアが並んでいるが、アヤはそこにどんなオフィスがあるのか知らない。
 自分の仕事以外のことに関心を持ったり、他人を干渉することは政府機関内ではタブーである。

 二区画ほど行くと、左に折れる。
 そこからは、壁や天井の色が濃い茶色に変わり、ライティングも床に光を流す間接照明になる。
 リラグゼーションエリアである。
 食堂はその一角にある。

 今日はおじさんに会いに行けるだろうか。
 会談場に展開する兵士や政府役人の素行調査なんて、意味はないのに。
 物見遊山気分で同行する連中もたくさんいるのに。


 あれ。
 スキャナーエリアを出て、アヤは違和感を持った。
 んん?

 いつものように、白い廊下が続いている。
 見慣れた光景だ。
 が、誰もいない。

 昼食時なのに、誰も前を歩いていないのだ。
 スキャナーエリアは順番待ちしていたのに。
 先に通って行った人は?


 おかしいな。 
 アヤは思わず振り返った。

 あ!
 そこにあるはずの、スキャンエリアの扉がなかった。
 白い壁があるだけ。
 行き止まりだ。

 えっ!
 どういうこと?

 鳥肌が立った。
 まずいことになったのかも。

 アヤは立ち尽くし、自分の体を調べた。
 何も持ってはいない。
 規則を破るような点はない。


 ここはどこ?
 どう見ても、いつも通る廊下だ。

 アヤは歩き出した。
 この先に、リラグゼーションエリアがあるはず。
 食堂に行けば、人がたくさんいるはず……。

 しかしアヤは、そこに食堂なんてないし、あったとしても人っ子一人いないのではないか、と思い始めていた。
 でも、確かめなくては。


 何が起きたのだろう。
 ええっ?

 廊下は進めど進めど、ただの一本道で、左右に折れるところはない。
 うわぁ……。
 やばいかも!

 アヤは走り出した。
 廊下を走るのはご法度である。
 足音がかなり響く。
 しかし、そんな悠長なことは言っておれなかった。

 何とかしなくちゃ!


 背後が気になり、後ろを振り返った。
 うわわわぁ!

 さっきと同じように、突き当たりだ!
 私、あれだけ走ったのに!


 アヤは走るのを止め、今度はその突き当たりに近付いた。
 あわわわっ!

 突き当りが、綾の歩みに連動して後退していく。

 どど、どうすれば……。
 また前を振り返って、アヤは仰天した。

 やめて!
 とうとう叫びだしてしまった。
 さっきまで続いていた廊下はなくなり、そこも突き当たりになっていたのだ。


 まさか!
 閉じ込められてしまった!

 前後十メートルほどの廊下に。
 左右にドアも何もない。
 もう廊下ではない。
 真っ白な、細長い部屋の中に。

 誰か、誰か……。 
 た、た、助けて!
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