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ニューキーツ 作者:奈備 光

7章 ピンクのハートマーク

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99 気遣いがうれしい歌

 さて、ここからが作戦の本番である。
「拠点、どこにする?」
 ネーロは浮かない顔だ。
「あれ、さっきのこと、怒った?」
「んなことは、どうでもいい。チョットマ、ここは何階だ?」
「よくわからないけど、たぶん地下五階か六階。もしかすると八階とか十階かもしれないけど」
「そうか、一旦、プリブの部屋に戻ろう」

 ローブの男とのひそひそ話が聞こえていたのかもしれない。
 それを気にしてくれたのかもしれなかった。

 プリブの部屋に戻った四人とフライングアイは、休憩を取った。
 イナレッツェが、プリヴの部屋に冷蔵庫を発見した。
「こりゃいいぞ。冷えた果物がある」
 軽食を取りながら、イナレッツェが軽口を叩いた。
「あんた達、そんなに仲がよかった?」
「は? 誰と?」
「だって、さっき、自分で考えろって言い合って、仲良しならではの喧嘩みたいだったよ」
「ふうん、そう」
 たしかにチョットマはリラックスしていた。
 以前の任務に比べれば、簡単な作業だ。
 実質的には、あちこち歩き回って、マップを作りさえすればいいのだから。
 クシの存在が不安ではあるが、なんとなくライラに会うのも楽しみだった。


 リンゴを頬張りながら、ネーロが話し出した。
「地下五階かもしれないし十階かもしれない。なんともはや。しかしいずれにしろ、街の監視システムに捕捉される可能性は低いんだろ」
「よくわからない」
「そう思わなきゃ、作戦は遂行できそうにないし」
「まあね」
「さっきの乞食より上のエリアは、捕捉されてしまう可能性があるんじゃないかな」
「乞食じゃないって。門番兼荷物預かり。そんなことを言っちゃかわいそうだよ」
「はいはい。一応、あそこより上はビルの中のようだし、危険だな」
「それに、プリブが借りていた部屋なら、安全と思ってもいいかも」
 スゥが太鼓判を押した。
「ここなら大丈夫」

 プリヴの部屋の両隣を含めて数戸分が空き家だったら、壁をぶち抜けば、隊員が全員集結できるスペースを作れるかもしれない。
「うーん、大掛かりだな。天井が落ちてきたらどうする」
「やっぱりダメか」
「却下だな。しかたない。とりあえず、拠点はホトキンの間としておこう」


 次はマップの作成だ。
「危険を冒すことになるが、歩き回るしか手はないだろうな」
「うん。でも、プリヴには悪いけど、家捜ししてみようか。なにか出てくるかもしれないよ」
「そうだな。でも、ライラに話を聞きにいくのは、急いだ方がいい。留守だと、何度も行かなくちゃいけなくなるから」
 ライラに街の状況を聴きにいくのは、スゥの役と決まっていた。
「ここから、ひとりで行けますか?」
 チョットマはネーロの言葉を遮った。
「私も行きたいの」
 ネーロが目を剥いた。
「おいおい、それはやめてくれないかな。ンドペキは、街の監視網にかからないエリアでのみ活動せよ、と言ってたぞ。スゥの案内役はチョットマのパパに任せる」
「でもさ、考えてみたんだけど、ライラの部屋に行くなら、途中で暗証番号を入れる扉が三回もあるよ」

 ネーロがスゥに目をやった。
「だから、部屋に行くのはできない。夜、あのバーに行くことになるよ」
 スゥはひとりであのバーに行けるだろうか。
「ねえ、スゥ」
 スゥはなんとなく上の空だ。
「スゥ! どうしたんだ?」
 やっとスゥが目を合わせた。
「えっ、ライラに会えるかって? もちろん大丈夫よ」
「暗証番号は?」
 スゥはニッと笑って、任せて、と言った。
「でも、途中まででも案内してくれると助かるけど」

「じゃ、私が」
「ダメ。チョットマのパパさん、よろしくお願いします」
「どうしてもダメ?」
「却下!」
 チョットマは残念だったが、仕方がない。
 遊びじゃないのだから。

 クシという名は出さなかったが、ネーロも気にしてくれているのだろう。
 そう考えて、チョットマはあっさり引き下がった。
「パパ、大丈夫?」
「もちろん」

「補給路の確保という点では、問題なさそうだな。スキャンが利いていなくて、兵士もいなければということだけど」
「そうね」
「どのみち、あそこを通るしか、ルートはないんだろ」
「そうみたい。ここは一本道だし」


「あった!」
 イナレッツェがプリヴのPCの中から、マップを探し出していた。
「おお! かなり詳しいぞ。使える!」
 画像は、建物の一階から地下のエリアをかなり網羅している。
 ビルの出入り口からこの部屋までの経路も明示されている。
「うーん、でも、抜けてる」
 チョットマはマップを睨んで溜息をついた。
「どこが?」
「だって、ライラの部屋のあるエリアが」
「ん? そうか。このマップだと、どこにその入り口があるんだ?」

 チョットマはかなり苦労したが、なんとかその入り口の位置を思い出した。
「ここから、サキュバスの庭に入るの」
「なるほど。でも、まずまずは正確だということだよな」
「そうみたい」
 チョットマはプリントアウトしたマップに、サキュバスの庭を書き足した。

「よし。少なくともこの周辺だけでも書き加えていこう。そろそろ出発できるか?」
 ネーロは明らかにチョットマに向かって聞いていた。
 チョットマは、その気持ちをありがたいと思ったが、口にはしなかった。
 話せばネーロ達を心配させてしまう。
 自分の身は自分で守らなくては。

「フル装備で走り回るの? 目立ちすぎない?」
 イナレッツェが不安そうな声を出した。
「うーん」
 このスラムで装備を外してしまうのは、勇気がいった。
 丸腰で敵地を歩くようなものだ。

「任務は偵察。目立つのはよくないよ」
 チョットマはそう応えたが、やせ我慢ではない。
 ンドペキの顔を思い浮かべた。
 無理はするな、と何度も念を押していた。
 そんなに思われていることに応えたかった。なんとしても作戦を成功させたい。
 そう思ったのだった。

「じゃ、着替えるか。幸いに、ここにはプリヴのコレクションがたんまりある」
「ナノカーボンのアンダーくらいはつけておいてもいいかもね。あの兵士がいないのなら」
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