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姫勇者ラーニャ 作者:松宮星

姫勇者の目覚め

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三手に別れて! とにかく、ぶっとばす!

 姫勇者一行は三つに分かれ、三体の四天王と戦う。
 エーネとアジンエンデ、ゼーヴェとシャオロン、ジライとバテンサが戦う事は決定済み。
 後のメンバーはこっちで選んでいいって事なので、ガジュルシンの結界の中で私達は顔を合わせ話し合う事にした。
 魔族達は共通語を使ってきたから、アジンエンデやカラドミラヌ達は事情を飲み込めてなかったんで、まずは状況説明からだったけど。
「三つのグループには、必ず一人は魔法の使い手が入るように分けましょう」
 と、シャオロンがシベルア語で提案する。
「オレ達は三人とも魔法を使えません。結界魔法等の援助が無ければ、敵の攻撃を防ぎきれない恐れがあります」 
 魔法を使えるのはガジュルシン、司祭一人に、二人の魔法使いだ。
「僕はバテンサと戦いたい。良いだろうか?」
 と、ガジュルシン。珍しく戦闘意欲まんまんだ。『軟弱な棒キレのような王子』と言われたのが、よっぽど気に喰わなかったのだろう。
 私は全員の顔を見渡した。反対意見の者はいなさそう。
「良いんじゃない?」と、私。
「んじゃ、俺もバテンサ」と、アーメット。
 あ〜、はい、はい。あんたら二人で一セットですものね。色ボケする前から、主人と影で。
「では、ラーニャ様と魔法使いお一人に組んでもらい、魔法使いと司祭様が別のグループへ、ですね」
 と、すかさずシャオロン。私には『勇者の剣』があるから補助の魔法役は一人、もう一方のグループを魔法の使い手を二人にするって事だ。
「ラーニャ様はエーネとゼーヴェ、どちらと戦いたいです?」
 別にどっちでもいい。
 どっちでもいけど、ムカつくのはやっぱ……
「エーネをぶっとばしたい」
 シャオロンは頷いた。
「では、エーネと対戦するのは、アジンエンデさん、ラーニャ様、魔法使いのワズヴァヴィリさん。ゼーヴェと対戦するのは、オレとカラドミラヌさんと司祭様と魔法使いのナズヴァブラギさん。バテンサと対戦するのは、ジライさんとガジュルシン様とアーメットで。それでよろしいですね?」
 反対意見はなし。
 それで決定。
 アジンエンデの『よろしくな』との声に、頷きを返した。
 カラドミラヌが『俺に任せておけ』と、シャオロンにカカカと笑っている。
 ジライはガジュルシンとアーメットに、何か小声で話していた。バテンサの憑代体となったハンシロウという男との関係を説明しているようだ。


 三つのグループに分かれた私達を見て、エーネは大喜びをし、ゼーヴェは溜息をつき、バデンサは舌うちをした。
「おい、エーネ。従者どもだけでは歯ごたえが無さすぎる。すぐに勝負もつくだろう。全員を葬ったら、勇者との戦いに加わるからな?」
「いやよ、じっくり遊びたいもの」
 バテンサに対し、エーネは不満そうに唇を尖らせた。
「性急なだけの男のペースには合わせられないわ」
「では、おまえがピンチとなって、おまえから助けを求められたら加わる。それなら良かろう?」
 と、バテンサが食い下がる。
「きさまのメンツよりも、勇者の死の方が大事。我等は召喚の返礼をせねば、今世に出られんのだ。勇者だけは何としても殺さねばならん」
「ありえないことだけれども……わかったわよ。いいわよ。あんた達が暇で、私がピンチになったら加勢しても」
「では、それは逆にオレ達にも言えますよね?」と、シャオロン。
「あなた方四天王を倒した者は、まだ戦闘中の仲間の助けても良いって事ですよね?」
 エーネが無関心そうに、シャオロンを見る。おまえなんかどうでもいいと言いたそうな顔で。
「おめでたいわね。人間が三人か四人で、高位魔族を倒せると思っているわけ?」
「人間なんて、あなた方には塵にも等しいですものね。塵が集まって固まって戦っても、文句はおっしゃいませんよね? 強大なる魔族なのですから」
 エーネが肩をすくめる。
「好きにすれば?」
 よし!
 さすがシャオロン。言質をとってくれた。目の前の魔族を倒せれば、仲間の援護に回れるんだ。
 私はエーネを睨んだ。私とアジンエンデを包み込む形で、宮廷魔法使いのワズヴァヴィリが結界を張ってくれている。この三人で、このムカつく女魔族を倒すのだ。
「ここは狭いから、それぞれ異空間に行きましょ」
 上機嫌な顔でエーネが言う。
「勝者がこの次元に現れる……そういう風な術をかけるの。仲間の援護に行きたいなら、仲間の気が何処の空間にあるか探る事ね」
 おまえ達にはできないでしょ? と、エーネは言いたそう。おあいにくさま、『勇者の剣』があるもの。私は次元を渡れる。
 それに、いざとなればカルヴェル様からいただいた召喚の指輪を使えばいい。私達は一箇所に集まれる。でも、その場合、カラドミラヌ達を置いて行ってしまうのが問題。協力者の三人を危険な所に捨ててゆくような真似はできないから、指輪も使いどころを考えなくては。
 気をつけてと皆に言おうとしたんだけど、言う暇がなかった。
 私とアジンエンデと魔法使いは、どっかの建物の中にいた。  
 けっこう広い、石造りの建物の広間のような部屋。処々に蝋燭の明かりが灯っているいるけれど、全体的に薄暗い。古びた感じの汚れた部屋。
 異国風の造りだ。
 部屋の中央の床には、デッカい魔法陣。
 あれ?
 ここ、どっかで見たことあるような?
「再戦の為に同じ舞台を用意したのか」と、アジンエンデ。
 言われて気づいた。
 ここって、シャイナ教の古代神殿跡か。
 エーネと対戦した本殿の中だ。
「そっくりな場所を創ったの?」
 私の問いに、魔族は頷いた。
「やり直したいのよ」
 エーネは見る者を蕩けさせるような艶っぽい笑みを浮かべている。
「あの時は、姫勇者様は『勇者の剣』を使えないと思い込んでいたから……私とした事が冷静さを欠いてしまったのよ。憑代を壊され、魔界に戻され……悔しかったわ。だって、」
 エーネが口を歪めて笑う。
「本当なら、私、負けるはずがないのですもの。『勇者の剣』をまともに扱えない女に、本気の私を倒せるはずがない」
「何ですって!」
「三流剣士。きさまの思いあがりも今日で終わりだ。そのつたない腕では、何も斬れない。剣に振り回されてるだけの飾りであった事を思い知るがいい」
 本性出してきやがったわね、このクソ女〜〜〜!
「斬れるか斬れないか試してみましょう!」
 怒りと共に私は、背の大剣を抜いた。
『勇者の剣』も目の前の魔を不快に思っている。
 斬ってやる!
『勇者の剣』を上段に構え、私は走る。
 あの不快な魔のもとへと。
 ちゃちな魔法攻撃が左右から襲い来る。
 だが、剣と一体化している私にそんな攻撃魔法など通じない。
 エーネは冷笑を浮かべている。
 私がすぐそばまで迫っているのに!
 生意気な! と、思いながら剣を振り下ろした。
 その途端、エーネは消えた。
 いや、正しくは……入れ替わった。バンキグの宮廷魔法使いと。
 対象と対象の位置を入れ替える、置換魔法だ。
 結界に籠もっている魔法使いを結界ごと、自分と位置を入れ替えたのか?
 結界外からの攻撃なら、結界が弾く。
 だが、私は内部にいる。
 彼の結界の中、彼のすぐそばにいる。
 刹那にそこまで気づいたが、振り下ろしつつある手は止まらない。
 岩をも斬り裂く切れ味の『勇者の剣』。その鋭い刃が、憐れな魔法使いに振り下ろされていった……


* * * * * *


 ゼーヴェはこの空間が好きなのだろうか?
 前に対戦した場所は崩壊したはずなのに、そっくり同じと思える異空間にオレは出現していた。カラドミラヌさんと、シベルア司祭と、宮廷魔法使いナズヴァブラギさんと共に。
 上空にも四方にも果てはなく、足元が銀色に輝く異空間。光源などないのに、昼間のように明るい。
 足をすって確認すれば、平らな金属のような感触が戻って来る。あの時と同じだ、靴底が平らだと滑りそうだ。 
「素足になるか?」
 ゼーヴェが俺に尋ねる。
「だが、蹴りでの奇襲は無駄だ。もう通じない」
 オレは苦笑を漏らした。
「そんな気はありません。奇襲は一回限りだからこそ有効なんです」
 雪靴ですから今日はこのままでと、オレは相手に頭を下げた。
 こことそっくりの場所で、オレは親友と戦った。降りて来たゼーヴェを受け入れ、自ら望んで体と脳を明け渡しゼーヴェと同化して魔となった友と。
 リューハン……
 オレは一度、目を閉じ、友の顔を心に浮かべてから、眼を開いた。
 少し私事の会話をさせてくださいと、オレはカラドミラヌさんにシベルア語で頼んだ。ゼーヴェとは一度、対戦しており、その時、あの魔族がオレの親友の体を使った事はバンキグの方達にもさっき説明した。
 気の済むようにしろと、『狂戦士の牙』の持ち手が俺へとニヤリと笑いかける。オレはバンキグ戦士に礼を言ってから、再び敵を見据えた。
 今、ゼーヴェはペリシャ戦士に宿っている。おそらく南の言葉しか憑代体の脳は理解できない。オレは共通語で尋ねた。
「お尋ねしてもよいでしょうか?」
「うむ」
「あなたは、以前、シャイナの大魔王教団が用意した憑代ではなく、その周囲にいたリューハンに憑依した。何故なのです?」
「好ましく思ったからだ」
 ペリシャ戦士の姿の四天王がニヤリと笑う。
「俺は戦闘を好む。魔界においても常に戦ってきた。召喚されたとて、牙のない豚の体には宿りたくない」
「リューハンは戦士として評価されたという事ですね?」
 魔族が頷く。
「召喚の場にいた者の中で、一番、優れた戦士であった。それ故、宿り、おまえとの闘いを望む、あの男の願いも聞いてやった。それだけだ」
「なるほど……」
 オレは左の拳を握りしめた。
「リューハンを憑代に選んだあなたをずっと怨めしく思っていました。あなたは彼の魂を穢した。その罪を許す気はありません。ですが……あなたは、唾棄すべき魔というわけではなかった。敬意をもって、リューハンの武に応えてくれていたのだと知って嬉しく思います」
「俺はおまえを知っている。おまえの友と脳を共有していた時の記憶は残っている。もはや、あの男のようには思考できないが、おまえへの感情は覚えている。今度こそ、俺はおまえに勝ってやろう。俺に体を明け渡したあの男の為にも、な」
「あなたは魔族らしくない」
 オレは笑った。
「憑代に使っただけの、たかが人間の為に、戦ってくださるんですか? リューハンの為に?」
「戦うのはなりゆきだ。だが、一度戦いとなったら、牙を持つ戦士には敬意を表す。死して敗れた者であれ、戦士であった者を辱める気はない」
「あなたは、武人ですね」
 笑みは心からのものとなった。
「魔の中にあなたのような思考をする方もいたとは驚きです。あなたと対戦できて嬉しいです」
「おまえも人間らしくない」
 ゼーヴェが腰の曲刀を抜く。
「滅ぼすべき魔と共感するなど、光の戦士にあるまじき精神だ」
「オレも戦士には敬意を表してきました。あなたとは持てる力の限りをもって戦い、武人としてあなたを倒しましょう」
「おまえを殺すのが惜しくなってきた」
 ゼーヴェが魔族らしくない顔で笑う。
「決めた、消滅はさせない。俺が勝ったらおまえの体をもらう。肉片となっていても再生して使う。今世の体におまえを使わせてもらおう」
「そういうところは、魔族ですねえ」
 オレは『龍の爪』を前方に向けて構え、腰を落とした。左手の指には妻から渡された指輪をつけている。左右、どちらの手でも戦える。
 カラドミラヌさん達に、会話は終わったと伝えた。友の体を乗っ取ったいきさつを聞いたとも。優秀な格闘家だった為に魔に選ばれたのだ、あの魔は友を未だに武人として高く評価してくれているようだとも。
 いい奴だなと、カラドミラヌさんは言って『狂戦士の牙』を構えた。好敵手とやりあうのが戦士の醍醐味だとも付け加えて。その顔は楽しそうに笑っていた。


* * * * * *


 俺は親父の過去をほとんど知らない。
 大衆読本『女勇者セレス』から得た知識ぐらいしかない。後は耳にした噂か。
 親父は、東国の忍者の里一の忍で次期頭領候補の中忍だった。けど、女勇者セレスの暗殺に何度か失敗し里での評判が悪くなりかけてたところで、四天王のサリエルって奴に憑代体にされかけ仲間を殺された。サリエルの協力者ウズベルを討つ為に、抜け忍となり、その後、女勇者セレスの従者となった。
 知ってるのはそれぐらいだ。
 里でどんな風に暮らしていたのか、どんな仲間がいたのか、何を思って生きていたのかさっぱり知らない。『死の荒野』の登場人物の部下達は親父を慕ってたから、それなりにうまくやってたんだろうとは思う。
 妹がいるってのは、何でだったか忘れたけど、どっかで聞いた覚えがあった。亡くなってたってのは、この前、姉貴から聞くまでは知らなかったけど。
 それぐらいしか知らない。
 だから、ハンシロウなんて男も知らない。
 さっき、親父はハンシロウとの関係を、俺とガジュルシンにざっと話した。ハンシロウは、現頭領シラヌイの信任厚い部下の一人、上忍だ。親父が忍者の里にいた頃は、ハンシロウの父親が存命だったので、ハンシロウはまだ下忍だったらしい。
 このまえ親父が東国忍者の里の幹部と会った時に、二十年ぶりぐらいに再会したそうだが……
『年は同じゆえ、五才までは同じ家で育った。が、あちらは上忍の継嗣、片や我は異形の白子。身分が違った。アレにはいたぶられた記憶しかない。まともに話した事などなかったな』
 いたぶられたって……もしかして、親父、イジメられてた?
 バテンサは、憑代が親父と親父の兄弟子にあたる人間に対し劣等感を抱いていると言っていた。二人の才を羨み、己が技量不足を嘆いているって。
『まあ、あちらは継嗣とはいえ、忍者としての技量は平凡であった。接点なぞほぼ無かったが、美しく優秀な我を妬んでいたようじゃな。異形でありながら、二十代で次期頭領まで我は上りつめたからの』
 同い年ゆえの嫉妬か。 
 親父の兄弟子ってのは、ヤマセって上忍で、ハンシロウ同様シラヌイの幹部らしい。
『兄弟子は策を巡らすのが得意な方で、己が技量で上忍まで出世なさった。血筋ゆえ上忍となったハンシロウとは忍者としての器が違う。シラヌイもハンシロウなぞより兄弟子を信頼しているようじゃ』
 若い頃は親父に年をくってからは親父の兄弟子にかなわず、イジイジしていた中年のオッサンか。弱そう……
 大魔王四天王バテンサがくっついたから、そうでもないだろうけど。


 バデンサにひっぱってかれたのは、真っ暗な空間だった。
 ガジュルシンが結界内に光球を浮かべた。が、闇は光を弾くばかり。結界外は全く光に照らされない。
「光を吸収する闇……でも、瘴気ってわけではなさそうだ……」
 ガジュルシンが首を傾げる。
《闇の世界よ。忍者とは闇に生き、闇に死すものであろう?》
 何処からともなくバデンサの思念が聞こえる。
《舞台は用意してやった。忍と忍同士。忍の技にて決着をつけようぞ。さっさと結界から出て来い、醜い白子。わしが葬ってやる》
 タイマンか?
 親父がフンと鼻で笑う。
「卑怯が常套の忍者の用意した戦場にのこのこ行くものか、阿呆。ハンシロウの技量は我には遠く及ばぬ。ハナから、まともな忍者対決なぞする気などあるまいに」
《わしはわしだ。バデンサでありハンシロウだ。もはや我等は一つ。魔である忍者を、『白き狂い獅子』とその加勢で討ってみせい》
「戦いたくば、きさまがこちらに来い。ガジュルシン様の結界の内へ、な」
 両腕を組み、親父が前方を睨む。
「はよう決着をつけたいのは、きさまだ。我等をとっとと始末して、ラーニャ様を倒しに行きたいのであろう? こちらに来い、来ねば我等はこのまま内に籠もる」
 親父が意地悪く笑う。
「この結界、半日はもつと、きさまは見立てたが……棒きれに見えようとも、この王子、魔力だけは膨大だ。半日どころか数日でも数週間も、結界は消えぬぞ」
 だから、『棒きれ』はやめとけよ、ガジュルシンがヘソを曲げるぞ。それに……数週間は無理だな。こいつ、体力が無いから。
 けど、魔力だけ測れば、結界維持は可能なように思えるはず。敵を焦らすには充分だ。
《それでは、きさまらとて、仲間を助けに行けぬぞ》
 親父が快活な声で笑う。
「ラーニャ様に我等の助けなぞ、不要。この地上最強の戦士は間もなくエーネを倒し、ゼーヴェも倒すであろう。我等はここでラーニャ様のご到着をお待ちしていてもよいのだ」
《……ならば、その時を、俺もここで待っていても構わんわけだ》
「そうだな。何もせずにおればいい。たかが人間三体に手も足も出ず、ただ指をくわえていた無能ぶりをラーニャ様にお見せすればよいわ」
 バデンサから答えが返らない。
 けど、憑代体の性格からいって、多分、怒っている。
 親父は相手のペースにのらず、戦闘に持ちこむ気のようだ。あからさまな挑発をしているから、コンプレックスの塊のような憑代体は冷静さを失ってそうだ。
「アーメット」
 俺の方を見もしないで親父が言う。
「ガジュルシン様を背負え、縛ってやる」
 へ?
「はぐれぬ用心じゃ。ガジュルシン様は複数の結界を同時に張れましたな?」
「できる」と、ガジュルシン。
「ならば、現在のこの結界に加え、御身の周囲に常に物理・魔法結界を張り続けられよ。アーメットをも包み込む形で」
 ガジュルシンの今、張っている結界はそれほど大きなモノじゃないと思う。半径数メートルの球形の結界だろう。こんな狭い所で戦う気か? てか、狭い結界の中ではぐれる?
 そいや、ジャポネの異界化した橋じゃ、距離感が狂ってたっけ。
 急いだ方が良さそうなんで、俺はガジュルシンに背を向けてしゃがんだ。
 ガジュルシンは戸惑いながらも、俺の背にのってくる。
「足、きちんと曲げてろよ」
 悔しいが、ガジュルシンと俺は身長差がある……かなり。ガジュルシンが俺を背負う方が自然なぐらいに。まあ、腕力も体力もない、こいつには無理だけど。
 敵を拘束したり鉤縄に使う為、忍者は麻縄を常備している。親父は投げ縄のようにそれを俺らにむけて投げ、あれよという間に俺の体とガジュルシンを結びつけてしまう。すげえ、捕縛術。
「瘴気ではないにしても、あの闇、触れぬ方が良いでしょう」
 忍の勘って奴だな。根拠はなくとも、ヤバそうなモノには触れない。勘ってのはけっこう、当たるもんだ。
「現在の結界は解きませぬよう、お願いいたします。バデンサが内に現れましたら、浄化・攻撃魔法にて援護をお願いいたします」
「ジライ、おまえは?」と、ガジュルシン。
「別働いたします」
 親父が『ムラクモ』を抜く。
 バデンサが、来るのか?
「忍には忍の戦い方がございます」
 言い終わるか終わらぬうちに、親父が『ムラクモ』で宙を薙ぐ。
 気配は何となくわかった。
 俺達の側に、何かがいる…… 
+注意+
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