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姫勇者ラーニャ 作者:松宮星

全ての終わりが来る前に

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ありえない! あいつが私を好きだなんて!

 何だよ、その鳩が豆鉄砲くらったような顔!
『え〜〜〜嘘? 信じられない』
 とか思ってるんだろ、どーせ。
 ラーニャの馬鹿! 馬鹿! 馬鹿!
 お父様以外の男なんてクズよとか、渋みも深みもないガキは嫌よねとか、素敵なオジ様とか……
 知ってるよ、ラーニャがオジ様好きなのは! 四つも下の僕なんか眼中になかったのも!
 時々、頬を染めながら僕を見ているけど、僕を見てない事も知ってた……僕の外見から父様を思い出してるだけだって……
 告白する気なんかなかったのに……


「いけませんよ、廊下で大声で姉弟喧嘩をなさっては。周囲に迷惑です」
 シャオロン様……?
 にこやかな笑みを浮かべて僕等に近づいて来る。その後ろから、兄様とアーメットが駆けて来る。シャオロン様の召使役の忍者アナンドに、兄様が話しかける。
「少し、外でも見て来られてはいかがです?」
 シャオロン様が僕へと微笑みかける。
「オレ、これからアジンエンデさんの所へ行くんです。手紙、預かっておきましょうか?」
「………」
 僕は目の端で、まだ少し距離のある兄様を見つめた。シャオロン様付きの忍者から、僕の玉砕間違いなしの告白騒動を聞いているんだろう。
 ラーニャはまだ茫然とした顔をしている。
 もういいや、ラーニャは……
 僕は懐から手紙を出し、それを渡す時、シャオロン様にしか聞こえないだろう小さな声で伝えた。一通はカルヴェル様に内緒で、と。
 父様あてと母様あての封書の手紙の間に、折り畳んだ紙がある。
 シャオロン様は頷きを返し、二通の封書とその間の紙を受け取った。
 僕は兄様達とは反対の方角へと廊下を歩き始めた。バンキグの人が道を開けてくれる。顔見知りの戦士が好奇心満々の顔でついて来る。
「ガジャクティン!」
 ほら、来た……
 振り返らなくてもわかる。兄様がアーメットを連れて、僕を追って来たのだ。
 兄様は優しいから、失恋決定のかわいそうな弟を慰めに来てくれると思ったんだ。
 もういいんだ……ラーニャなんか……
 どうせ、振られるんだ……
 今は……
 兄様の注意をそらす。神の封印の事で僕が動いているとは気づかれないように、失恋に泣くかわいそうな弟になりきっておこう。


* * * * * *


「ラーニャ様」
 肩をゆすられてる……


「大丈夫ですか、ラーニャ様? アジンエンデさんのお部屋に行きましょう」


 あんま揺らさないでよ、気分が悪くなるじゃない。
 ああ、でも、どうしよう……
 この王宮中が大パニックになっちゃうわ。姫勇者とその義弟の近親相姦なんて醜聞だわ。お父様の名誉が傷ついちゃうじゃない。そこまで考えられないなんて、ガジャクティンって本当、ガキだわ。だから、ガキって嫌いなのよ。周りに気を配らないんだもの。
 痛いなあ、腕をひっぱらないで。私、レディーなんだから、もっと優しくエスコートしてよ。


「ラーニャ様、無駄ですよ」


 無駄って何が?
 心配しても無駄?
 義弟が姉に告白、義弟は姉を好き、義弟は姉を愛している、義弟が姉を……


「だから、オレにインディラ語で話しかけても、駄目です。わかりません」


 インディラ語……?


 顔を向けたら、シャオロンが居た。にっこりと微笑んでいる。


「ガジャクティン様との喧嘩の時から、ずっとインディラ語でした。北方の人達は共通語すら話せる人がほとんどいません。多分、インディラ語がわかる方なんていないでしょうね」


 て、ことは!
 セーフね!
 バレてないわね!
 私がガジャクティンに告白されたって!
 ガジャクティンに好きだって告白されたけど、無問題! 何にも問題なし!……大丈夫……


「オレ付きの忍者アナンドさんからシャイナ語に翻訳してもらったので、オレは事情は心得ていますが……熱烈な告白でしたね」


 大丈夫じゃない!
 どーしよ!
 てか、どういう事!
 ありえない! 信じられない! あいつが私を好きだなんて!


 シャオロンはアジンエンデと少し話して手紙を渡してから、部屋を出て行った。
 アジンエンデの召使の忍もいない。
 ソファーに座る私。『勇者の剣』は外して、壁にたてかけた。
 アジンエンデはテーブルを挟んだ、向かいに座ってきた。二人っきりだ。
「飲め」
 テーブルには湯気のたつカップがあった。香茶。アジンエンデが淹れてくれたの? 気づかなかった。温かな飲み物を口に含むと、ちょっとだけ落ち着いた。
 アジンエンデも自分のカップを口に運ぶ。
 何も言ってこない。
 優しい眼差しで私を見つめるだけだ。
 シャオロンから事情を聞いただろうに。
 真面目で奥手で、綺麗で仲間思いで姉御肌のアジンエンデ。
「アジンエンデが好きなんだと思ってた……」
「ん? ガジャクティンか?」
 私は頷いた。
「アジンエンデにべったりだったし……」
「稽古をつけてやっていただけだ」
「馬鹿面でアジンエンデにみとれてた事もあった……」
「私は、あの子憧れの赤毛の戦士アジャンの娘だからな」
「それだけじゃないわよ……それだけじゃ……だって、あいつ……あなたを抱いて……しっかりしてって……ジライから庇って……アジンエンデはそんな女じゃない、軽々しくキスしちゃいけないんだって怒って……」
「友として案じてくれていただけだ。あの子とは互いの事情を話し、相談しあったからな」
「相談?」
「シャイナで普通の旅をしていた頃だ。火の番があったろ?」
 あったわ。一晩中、焚火の火を絶やさないように、交代で起きて火を見守るの。旅の練習だってシャオロンがさせていた。
「あの子が火の当番の時、共通語の練習をかねて、よく話をしに行ったんだ。すぐ親しくなったよ。ハリの村で私はあの子を魔族から守っているしな、信頼されてたんだ。いろんな悩みを聞かせてもらったよ」
「悩み?」
「馬の旅が思ったよりきつい事、家族の事……それから恋の悩みだ。好きな子がいるから、早く強くなりたい、守ってあげたいと言っていた」
 その好きな子が私? なんか納得がいかない。
「その娘は重度のファザコンで、『お父様』が大好きで『お父様』ばかり褒めちぎる。ガキ扱いして、自分を男として見てくれない。一緒にいると悲しくなるとも言っていた。だから、つい意地悪をしちゃうんだと」
 う。
 ち、違うわよ……あっちの方から、いつも絡んできたわよ。嫌味言ってきたわよ。『私のこと馬鹿』だって。『自分はラーニャと違って優秀』だって。
「あの馬鹿が私を好きなのって、私がお母様の娘だからじゃない? 勇者の血に惹かれたんだわ、きっと」
「それもあると言っていた」
 なに〜〜〜やっぱ、そうか、あの勇者おたく! 勇者ブランドだから私が好きなわけね! しょせん、血なのね!
「いや、それ()だ。おまえの好きなところをいっぱい教えてくれた。綺麗な顔も、勇ましい性格も、意地悪だけれども面倒見のいいところも、文句を言いつつも何事にも真剣に向き合うところも、大好きなんだそうだ」
「………」
「他にもいっぱい言ってたぞ、聞きたいか?」
「……良いわよ、別に……」
「強く立派な男になって、振り返らせたいと言っていた」
 何か頬が熱くなってきた。
「……アジンエンデはあいつにどんなこと相談してたの?」
 アジンエンデは微笑んだ。とても穏やかな顔で。
「好きな男ができたかもしれない。相手はジライだと言った」


 ぶっ!


「な? な? な?」
「すまんな。不倫をしかけていた」
「不倫とかそんなのどうでもいいわ!」
 なにそれ? ガジャクティンが私を好きで、アジンエンデがあの変態が好き? 知らないわよ、そんな事! そうだ、その上、うちの馬鹿な弟と義弟が恋愛中なんだから、どんだけ乱れてたの姫勇者一行!
「でも、納得がいかない! アジンエンデ、ジライなんか好きじゃないって、前に断言した!」
「実の娘に言えるか。おまえの父親に惚れたなんて」
 え? あ、まあ、そうか、常識的には……
「……でも、その秘密、何でガジャクティンには言ったわけ?」
「ラーニャの事で何度か話を聞いてやっているうちにな、私の事を聞かれたんだ。年長者の私の経験談を聞きたかったのだろうが、あいにく私はその手の事は苦手で……事情を話した。『極光の剣』の持ち手として子づくりをする義務がある事、ハリハラルドには恋愛感情はなかった事、ジライを見ると心が乱れるがあんな変態は伴侶にしたくない事とかとりとめもない事を話し、どうしたらいいか参考意見を聞いた」
「ガジャクティン……何って言ったの?」
「変態はやめとけと言われた」
 あ、うん、それは納得。
「アレは妻子を愛してるから決して私の伴侶とはならないとも、な。まだ十九なんだし、急がなくてもいいはずとも言われた。旅を続けていれば出会いがあるかもしれないし、せっかく南に来たんだから南でしかできない事を一緒にしようよと誘われた。だから、私も子づくりの事は、親父殿の事が落着してから考えれば良いと思った」
「………」
 ふぅん。
「事情を知っていたから、ジライに接吻された私をとても心配してくれたんだ」
 そうだったのか。
「あの子はいい子だ」
 それは……知ってる。
 くそ生意気で馬鹿で意地悪な、うっと〜しい勇者おたくだけど……一緒に育ったんだもん、悪い奴じゃないのは知ってる。
 だけど……
 だからこそ……
 男には思えなかった。
 私の頭の中では、義弟はずっと小さいままだ。『ラーニャ、あそんで』と、つきまとって来たちっこいの。ちょっとキツい事言うと、すぐ泣くのがうっと〜しかったけどかわいくて、私の後をついて走って来るワンコみたいに思ってた。
 それがズンズンでっかくなって、私よりも頭が良くなって、いろんな武術が上手になって……
 と〜ても面白くなかった。 
 私のが年上なのに、私より優秀になろうとするなんて生意気と思った。
 ガジュルシンの頭が良すぎる事では嫉妬した事ないけど、保護してあげてた奴が私以上の存在になるのは許せなかった。
 やっぱ、無理。
 どうしても、無理。
 ガジャクティンは義弟だ。
 お父様とは違う。
 顔や体や声は似てる。けど、ときめかない。
 ガジャクティンにはお父様のような落ち着きがない。怒りっぽい。上品さも包容力もない。
 堪え性もない。殴ると、すぐに感情的になってギャアギャアわめく。そうだ、あいつ、緊縛プレイも嫌いなんだ。その道の崇高な手引書を読んでた私を『罪人じゃない人間を縛りたがるとか、僕には理解できないね』と鼻で笑いやがったんだ。女王様プレイの何たるかがわかってない! 奴隷向きじゃない!
 駄目よ! あいつとは、嗜好が合わない!
 あいつを男とは思えない!
 M奴隷になんかできない!


 あいつの女王様にはなれない……


 私はあいつに応えられないのだ……


「ラーニャ」
 いつの間にか、アジンエンデは私の隣に座っていた。私の肩を抱いてくれる。
「性急に答えを出す必要はない」
 アジンエンデが私に微笑みかける。
「今は大魔王退治の旅の最中だ。恋愛で煩いたくないという言い訳もできる。それに、ガジャクティンはまだ十四。大魔王退治の旅でのガジャクティンの成長を見守ってから答えても良いと思う」
「そっか……大魔王退治が終わるまで返事保留って言えばいいのか……」
 そうね……
 それなら……
 義弟を傷つけずにすむ。
 私に振られて、がっかりするあいつを見ずにすむ。昔みたいにわんわん泣く事はないだろうけど。
 悲しそうに泣くあいつは見たくない……
「ありがと、アジンエンデ、そうする。私、ガキは嫌いだから、大魔王退治であんたが成長するのを待ってから返事してやるって言っとく。そうすれば、あいつも希望が持てるから頑張るだろうし」
「今、その方が都合がいいとか思っただろう?」
 アジンエンデが私をジーッと見つめる。
「永遠に振らずにすむからな」


 え?


「……どういうこと?」
「大魔王戦の後ならば、返事をしたくてもできない……だから、あの子を傷つけずに済む。そう思ったな?」
「カルヴェル様に聞いたの……?」
「私と別れてからのおまえ達の冒険は聞いた。知恵の巨人に会ったそうだな」
「聞いたのね……」
 ひどい、カルヴェル様……誰にも言わないでって頼んだのに……
「だが、おまえが巨人からどんなものを見せられたのかまでは聞いていない」
 え?
「しかし、私にはわかるのだ。おまえの内には目を閉ざし耳を塞ぐ子供がいる。五〜六才ぐらいに見える。怯えて縮こまって、ずっと震えている。『死にたくない』と言っている」
「やだ……」
 そんな……
 何で見えるの……
 嫌いよ、霊力の高い人間なんて……
「何でわかっちゃうのよ……内緒にしてたのに……」
 鼻がツーンとする。やだ、泣いちゃいそう。
「怖いの我慢して……いつも通りにふるまってるのに」
「すまない」
 アジンエンデの笑みが苦笑に変わる。
「見えるようになってしまったのだ」
 私の肩をアジンエンデがぎゅっと抱きしめてくれる。
「巨人が見せた未来の中で、おまえは死んでいたのだな?」
 私は頷きを返した。
「僧侶ナラカと戦って……犬死にするのよ」
 思わず笑みが漏れた。
 ナラカの強大な魔力を前に、私は肉の一片も残さずに木端微塵。なのに、倒せなかったのだ……
「とどめを刺せずに死ぬの……とどめは『勇者の剣』を拾ったアーメットが刺してくれていた。それでナラカは消滅。勇者アーメット様にこの世は救われるのよ……」


 馬鹿だったと思う。
 私も仲間も、絶対、死なないと思っていた。
 気力で負けたら、未来が閉ざされるから、悪いことは考えまいとしてきた。
 でも、この地上最強の武器『勇者の剣』を持つ勇者も、死ぬ時は死ぬのだ。
 八代目勇者フィリップ様の代は、勇者一行は全滅した。
 六代目勇者アレックス様は、死にはしなかったけれど、発狂した。
 大魔王戦で亡くなった従者も少なくない。
 お母様の代のように全員が無事だった方が少ないのだ……


「だが、未来は変えられるのだろう? 巨人が皆に聞こえる声でそう言ったと聞いた。未来は一つではない、と」
「私が死なない未来もあったわ」
 巨人が私の心に送ってきた映像。
 さまざまな未来。
 その場に居合わせた人間達がどういう行動をとるかで、未来は変わっていった。
「だけど……私が死んだ方がいいのよ」
 拳を握り、私ははっきりと言った。
「仲間を犠牲にして、生き延びたくないもの」


 アジンエンデは何も言わない。
 穏やかな顔で、私の次の言葉を待っている。


「ガジュルシンの能力封印はね、時間が経つほど効果的なの。封印できる能力もどんどん広がってって、どんどんナラカが弱くなってゆくわけ。だから、しばらく逃げ回ってからのが倒しやすいのよ。私の生存率も高まる。だけど、そうなると……」
 私はうつむいた。 
「仲間が死ぬのよ。まずはジライ。ほとんどの未来で真先に死んでたわ、私を庇って……」
「そうか……あの男はおまえを守る事に命を懸けてるものな」
「それから、ガジュルシンかガジャクティン……どっちかが死ぬ。二人とも死んでる未来もあった。二人を助けようとしてアーメットやシャオロンが倒れていた未来もあった。勇者一行全滅の未来もあった。逃げ回ったあげく、仲間を皆殺しにして、僧侶ナラカを倒せないって最悪の未来もあったわ……」
 体が震えてきた。
「冗談じゃないわ。私、勇者なのよ。仲間を守り、世界を守るのが勇者よ。仲間を犠牲にするなんて、絶対に嫌! それぐらいなら、私が!」


 そこで、うっかり感情を昂らせてしまった。
 急いで顔をふく。
「だから、おまえは父親を遠ざけているんだな。側に置いておくと、真っ先に死なせてしまうから」
 違うわよ……うっと〜しいから、接近禁止を命じたの。
「ガジャクティン達とも、できるだけ一緒にいないようにしているんだろ? おまえは優しいから」
 クソ生意気な義弟も、色ボケした二人も知らない。勝手にやってりゃいいのよ。私の側に来ないで、安全な所で……
「おまえは、いい奴だ、ラーニャ」
 違うわよ……
 違うったら……
 アジンエンデがポンポン私の肩を叩いてくれる。私の顔は見ないようにしてくれてる。その心遣いは嬉しい。


「どんな戦闘場所だった?」
「……砂漠」
「何処の?」
「知らない。ペリシャかトゥルクかシルクドか……砂漠はインディラにもあるし、アフリ大陸は砂漠だらけって噂だし……」
「だが、砂漠ならば、北方ではない。未来にしても、まだ先の未来なのではないか?」
「わかんないわよ、移動魔法でいきなり最終決戦の砂漠に飛ばされるかもしれないもの」
「それもそうか」
 アジンエンデがしばらく考えてから聞いてくる。
「その場にいた仲間は誰だ?」
「必ず居たのは、アーメットとジライと、ガジュルシンとガジャクティンとシャオロン。未来によってはカルヴェル様や上皇様や姫巫女がいた……」
「舅殿が?」
 言ってから、アジンエンデが首を傾げる。
「私は?」
「アジンエンデ?」
 アジンエンデが居た未来……?
 あれ?
 あれ? あれ? あれ?
 巨人から送られてきた映像の断片、断片が心に甦る。
 しかし……
「無い……と、思う」
 アジンエンデが居る未来はなかった。
 え?
 どういう事?
 アジンエンデはその場にいない?
 その時には死んでるの? 単にいないだけ?
「その巨人、違う未来予想を、その場にいた人間の組み合わせで示したのではないか?」
 どうだろう……?
「カルヴェル様も舅殿も姫巫女も戦闘力が高いから、未来予想に加えた。それだけの事ではないのか?」
 そうなのかしら……?
 でも……
「……わかんない」
 正直、わかんない。あの巨人がどうやって未来を見せたのかなんて。
「ラーニャ、私が戦闘に加われば確実に未来は変わるぞ」
 アジンエンデがにっこり笑う。
「しかも、私は霊力が高まった。前より強いぞ。役に立てると思う」
「アジンエンデ……」
「カルヴェル様も舅殿も姫巫女も全員、戦闘に巻き込んでしまえ。可能ならば、他の者もだ。巨人が示さなかった未来を作り出すのだ。皆が生き延びる道を探そう」
「そんな道……あるのかしら?」
「ある。絶対だ。私を信じろ」
 信じろって……
 嘘……何か……すごい……
 自信にあふれた顔、それでいて優しそう……
 アジンエンデが別人みたい……
 全然、ためらいがない。
 霊力が強まった事よりも何よりも、その魂が頼もしい。
 はっきり言ってくれた。
『道はある』って……
「この先に待ち受けるものについて、皆に話せ。知恵を絞り合おう」
「………」
「巻き込む事は恐れるな。逆の立場を考えろ。義弟達がおまえに内緒で命をかけて皆を守ろうとしていたとしたら、どうだ? そんな自己犠牲、おまえは嬉しいか? 嬉しくなかろう? 何故、相談してくれなかったんだと悲しく思うはずだ。皆で運命に抗い戦い続けても、運命に勝てんかもしれない。命を落す者が出るかもしれん。だが、精一杯やる事をやれたのなら、誰の心にも悔いはないだろう。私はそう思う」 


《信じずともよい。未来ならば変える術はある。望まぬ未来を拒むのであれば、変わる運命を選べ。未来は一つではない》


 巨人の言葉を思い出しながら、私はアジンエンデに抱きついた。
 深く、深く、感謝しながら。 
+注意+
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