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姫勇者ラーニャ 作者:松宮星

サムライと忍者と巫女の国

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サムライの矜持! ムラクモの運命!

 師より賜った時、この刀には名がなかった。
 ゆえに、我は『小夜時雨(さよしぐれ)』と名付けたのだ。
 我が剣の師は刀剣類の収集家ではあったが、盗んだだけで満足し収集物を納戸に適当に放り込んでしまう……そんな方でもあった。
 刀の真の名を師は失念してしまわれたのだ。
 だが、伝え聞く特徴からして、『小夜時雨』の真の名前は『ムラクモ』であろうとは思う。
 有資格者しか鞘から抜けぬ、刀身から聖水を降らす、聖なる武器……
 ジャポネ刀の形状でその特徴の武器は『ムラクモ』しか記録にない。


 だが……だから、何なのだ?


 カズマの先祖がマヌケゆえ、師匠に本物と偽物を盗術ですり替えられた、ただ、それだけの事であろう。
 何故、阿呆の子孫に『小夜時雨』を渡さねばならぬ?



 道場に入って来た我とムジャに対し、一斉に刺すような視線が向けられる。
 カズマの師匠ムネヨシ、カズマの同門の子弟、そしてカズマ本人。
 道場の中はサムライだらけだ。
 カズマは睨むように我を目で追っていた。まだ二十そこそこ。家督を継いだばかり若造では、サムライらしい余裕を持った態度などできぬようだ。
 カズマは己の前の床に、刀を置いていた。実に金と手間暇をかけたような外見だ。木製の柄には鮫の皮をかぶせており、鞘にも黒や金の漆で模様が描かれておる。
『ムラクモ』であろう。
 我が手元にある『小夜時雨』こそが本物であれば、カズマのモノは師匠が用意した偽物。抜けぬよう細工を施された刀のはず。抜けぬ理由を己が技量ゆえとあきらめ、カズマの父祖は偽物と気づかぬままでいたのだろう、二十年ほど前までは。
 上座に仲介役のカルヴェル様と、カズマの師匠ムネヨシが座している。
 我はカズマと対面する位置に座った。ムジャがその隣にくる。我は東国忍者の姿。ムジャはインディラ忍者装束。二人とも忍者ゆえ、素顔は秘することは事前に了承を得ている。
 我も『小夜時雨』を自らの前に置いた。こちらの鞘はただの黒塗りだが。
 カズマの一族はミカドより『ムラクモ』を賜った。三代目勇者の時代のことだ。
 その後、ミカドの『武』を担っていたカズマの一族は、ミカドの戦士長を自称するショーグンに強引に吸収され、ショーグンの配下となった。三百年前のことだ。
 しかし、『ムラクモ』を守護する一族は、ショーグンを敬いながらも、ミカドを奉じ続けた。『ムラクモ』を賜った恩義ゆえに。
 それは、今世まで続いておる。
 つまりは……『ムラクモ』にサムライの存在意義を見出し、『ムラクモ』を後生大事に抱えてきた一族なのだ。
 その大切な家宝が、盗まれたとあっては面目丸潰れ。
 世に『女勇者セレス』が広まり、あの本に(われ)が『ムラクモ』の使い手と描かれておっても、カズマもその父シュメも盗難届は出さなかった。
 サムライらしく泰然と構え娯楽本など相手にせず、自分達の『ムラクモ』こそが本物と言い続けてきたのだ。
 その実、不安なので、裏で我との面会を求め続けてはおったのだが。
 世間に対しては自らの『ムラクモ』こそ本物と主張してはおるが、本物と言い切る根拠も自信もない。五十年近くその刀を抜ける人間が一人もいなかったからだ。
 オオエではなく、剣の師匠の里で我と面談したいとあちらが願ってきたのは、あちら側も極秘裏に事を進めたかった故だ。
 オオエに居ると思っていたカズマは、西のキョウ近くの山の中の里に移動済みと知ってこちらとしては困ったが。
 カルヴェル様に移動魔法で運んでいただけねば、ラーニャ様との合流が更に十日近く遅れるところであったわ。


 挨拶の後は、怨みごとから始まった。
 我との面談はカズマの亡くなった父シュメの願いであった。我に会うて、どちらの手のモノが真の『ムラクモ』か真贋をつけることを望み続けていた父はおととし亡くなった、インディラの忍者頭と父との面談がかなわなかったのは残念だが、今日のことは父の墓前に報告しておく……
 粘着気質とみた。カズマの周囲のサムライどもはシュメ殿おいたわしやとか涙を流しおる。
 次に、カズマは『小夜時雨』の来歴を尋ねてきた。
 亡き師匠より三十七年前に譲り受けた刀である事、師匠は刀剣の収集家であった事、師匠はこの刀を『小夜時雨』と呼ばれ他の名は一切用いなかった事。話せるのはその程度であった。
 師匠の名は忍の里の秘密に関わることゆえ、話せぬと伝えた。
 先日、ヤマセ兄弟子からカズマに教えるなとも釘を刺されている。二つ名の『白き狂い獅子』も口にできぬ。『白き狂い獅子』が個人名であるのか、暗殺者集団の名前なのかも、それすらも里は秘密としているのだ。
 次にカズマはカルヴェル様に尋ねた。
「その忍者所有の刀を『ムラクモ』と看過されたのは、カルヴェル様と聞いております。何を根拠にそう思われたのですか?」
 龍神湖の戦いの時だ、我が刀を見て、カルヴェル様が『ムラクモ』だと見抜かれたのは。
 聖なる武器に関する知識が豊富なカルヴェル様は、振れば刀身から雨を降らすジャポネ刀など『ムラクモ』しかないとおっしゃったのだ。
『女勇者セレス』第十三巻に、そう載っておる……
 あの本に載っている話の全てが真実だというわけではない。読み手もそれは理解している。
 じゃが、真実も多数含まれておるゆえ、世間は疑いを抱いたのだ。忍者ジライの刀こそが『ムラクモ』であり、カズマの一族は偽物を掴まされているマヌケなのではないかと。
 カルヴェル様は、はっきりとご自分の知識の確かさを相手に伝えた。
「わしはインディラ寺院所蔵の『聖なる武器に関する記録』にも目を通しておる。ジライの刀は、あの本に載っていた『ムラクモ』と特徴が合致する」
 おお! とカズマ側から歓声があがる。
 我が刀こそ本物とわかれば、カズマ側はインディラ国に対し返還要求ができる。
 じゃが……
「したが、あの本に全ての聖なる武器が記されているわけではない。代々の勇者の従者であった僧侶達によって、新たに発見された武器が書き足されておる。わしは忍者ジライの刀を『ムラクモ』と思うた。じゃが、真実は『ムラクモ』によう似た『小夜時雨』という刀やもしれん。本当のところはわからぬ」
 カズマ側が、がっかりする。
 しょせん、幾ら話したとて堂々めぐり。
『小夜時雨』が盗品の『ムラクモ』の可能性は高くとも、カズマ側は確たる証拠を見つけられない(事実はその通りなのだが)。
 話の進展などない。
 尚も、ネチネチネチネチ、カズマが昔の資料をひっぱってきて、ああでもないこうでもないと言うので……
 聞いているのが面倒になってきた。
 我は『小夜時雨』をつかみ立ちあがり、周囲が騒然とする中、その柄を粘着気質サムライに向けた。
「我が刀を『ムラクモ』とお思いならば、抜かれてみるがいい。正当なる所有者である方がな」
 そこで顎をしゃくり、フンと笑ってみせた。
「抜けぬと思うが、な」
 カズマは我を睨むように見上げた。
 まったく動こうとはせぬ。
 我が刀が真実『ムラクモ』であるのなら……自分には抜けぬとわかっているのだ。
『ムラクモ』の装備条件は、『無私無欲』。
『ムラクモ』奪還にやっきになり、『ムラクモ』に執着しておる以上、この男の心は、我欲にまみれておる。
 刀が好くわけがない。
「父ならば抜けたであろう……」
 カズマの声には悔しそうな響きがあった。
「我が父、先代シュメの気性は、カルヴェル様もようご存じのはず。父シュメは、『ムラクモ』をミカドより下賜された刀として敬い、丁重に扱っておった。それが偽物かもしれぬと世間から嘲笑われても尚、死ぬまでその態度を崩さなんだ」
 カズマは感極まったような顔で、瞼を閉じる。父との思い出にでも浸っているのであろう。
「サムライたる者、主君よりいただいたお役目を果たすまで……『ムラクモ』が鞘より抜けぬ理由も、己が未熟故と考え、父は精進潔斎を欠かさず、日々、清廉な生活を送ったのでござる」 
 興奮のあまりか身も震わせている。
「父は世の声などまったく意にかけておらなんだ。インディラの忍者頭殿との面会を求めておったのも、『ムラクモ』を取り返さんが為ではなく、あくまで真贋を見極める為。偽物の刀を奉じていてはミカドへの不敬にあたると……父は死の床まで、ただそれだけを気に病んでおったのだ」
 カズマはカッと目を見開き、我を見る。
『小夜時雨』の所有者である我を。
「父の墓前に真の『ムラクモ』を供えることこそ孝行。それがしはそのように心得る」
「……なるほど」
 我は『小夜時雨』を己が腰に戻した。
「くだらぬ執着じゃな」
 周囲が殺気だつ。
 馬鹿サムライどもを見渡してから、我は若造を見下ろした。
「『ムラクモ』が欲しいのは、死人ではない、きさまであろうが。『小夜時雨』がまこと『ムラクモ』であろうがなかろうが、どうでもいいくせにな」
「なに?」
「我は優れた武器ゆえ『小夜時雨』を愛でておる。だが、抜けぬとなれば無用の長物。その時には捨てるわ」
「その刀を捨てる……?」
「さよう。刀とは生命を守る為にある。きさまら一族にとっては、違うようじゃがな。『ムラクモ』は家宝……主君への忠義の証。それゆえ、きさまの父は『ムラクモ』を敬い、奉じていたのであろう」
「その通りだ」
「それゆえ、あるべきモノが手元には無いかもしれぬ事に、きさまの父は不安を覚えた。だが、きさまは違う。偽物を掴まされておると、世間から嘲笑われるのが嫌なのだろう?」
「………」
「『ムラクモ』かもしれぬモノがきさまの手元にない、それが気に喰わんのだろう? 家宝を盗まれた愚かな一族とそしられるのが悔しい、だから、『小夜時雨』も手に入れておきたいのだ。違うか?」
「………」
 カズマはしばらく無言の後、口の端を微かに開いた。自嘲の笑みだ。
「さようでござるな。今、それがしにもわかりもうした。我が手元の刀が真の『ムラクモ』であろうとも、世間の者が『小夜時雨』こそ『ムラクモ』と信じておれば、我が心は休まらぬでござろう。それがしは、『ムラクモ』の守り手として生きてきたご先祖様を辱められとうない」
 挑むようにカズマが我を見る。
「それがしは『小夜時雨』が欲しい。それが『ムラクモ』か真贋がわからずともよい。我が手の内にさえあれば」
「ならば、立ち合え」
 我は口元を歪ませた。
「きさまの剣技を見せてみよ。あっぱれな腕前であれば、『小夜時雨』、譲ってやっても良い」
 え? と、いう顔で、横に座るムジャが我を見る。この程度でうろたえるな、未熟者めが。
「じゃが、こちらは『小夜時雨』にて勝負いたす。あまりにもつたない腕であれば、きさま死ぬるだけだぞ」
 その刀、できるだけ封印しとくんじゃなかったんですか? と、ムジャがボソボソ。うるさい。
 阿呆め。向こうは他に漏らさぬわ。『ムラクモ』盗難を認められぬ立場上、『ムラクモ』と思われる刀を他の者が振るっていたなどと断じて認められぬのだ。
 それに……この刀を直に目にせねば、カズマとて納得はできんだろう。


 我が抜刀すると周囲から溜息が漏れた。
 青白く輝く、冴え冴えとした刀身。
 亡き師匠がこよなく愛された、玲瓏たる刀だ。
 素振りをしてみせたのは、カズマへのサービスだ。
 刀身から雨が降る。聖なる水の飛沫が床へと飛び散る。
 カズマの顔に複雑な感情が浮かぶ。
 伝え聞く家宝そのものの刀を、卑しい忍者が使っておるのだ。
 誇り高いサムライには、さぞ屈辱であろう。
 家宝『ムラクモ』とされる刀を同門の者に預け、カズマは刀掛のものを取る。日頃、腰に差しているのだろう実用刀を抜いたのだ。


 白刃を構え、我とカズマが対峙する。
 カルヴェル様にカズマの師匠ムネヨシ、カズマの同門の者達が見守る中、我らは真剣を手に睨み合う。


 幼き頃より剣術修行を積んできたサムライだけあって、真剣を構える姿勢も堂々たるものであった。
 才もあり、良き師につき、それなりに剣は使えるようじゃ。
 あくまでそれなりだが……。
 剣術でまともに勝負してやっても勝てるが……
 まともな剣で叩き潰しては、サムライの面目を潰してしまう。
 我が卑怯な手を使った故、負けたのだと思わせてやった方がいい。
 予想通り、じりじりと距離をつめてきおる。
 若造は堪え性がない。
 我が実力とてある程度読めるであろうに、早う勝負を決めたがる。
 上段から斬りかかってきたので、体をずらし、それから高々と跳躍した。
 あまり高くない天井に左手だけでわざと一度ぶらりと垂れ下がってから、カズマの背後に降り立ってやった。
 慌てて振り返り、真剣を振りまわす。
 それを刀で受けてやりもせず、体術だけで全てかわしてやる。
 若造の顔が朱に染まる。
 たわけめ。
 力量差を思い知れ。
 二度とつまらぬ願望など抱かぬように、な。
 きさまが『小夜時雨』を手に出来ぬのは、未熟なる腕ゆえ。
 己が実力の為。
 そうと思い知れ。
 きさまなぞに、我が刀は譲らん。
 袈裟掛けに斬りかかってきたところを身を低くしてかわし、カズマの右腕を下方から蹴りあげる。
「ぐっ」
 カズマが跳ね上げられた手から刀を取り落とす。
 勝負はあったが……
 その瞬間をより屈辱たるものにする為に、我は『小夜時雨』を一閃していた。
 刀身から生まれた水が、カズマの顔を濡らした。


「そこまで」


 上座からの声に、我もカズマも周囲のサムライどもも一斉に上座へと顔を向ける。
 カルヴェル様とカズマの師匠ムネヨシとの間に、たいそう大柄な男がいる。サムライの中では浮きまくる異質な姿をしている。
 何故、ここに? カルヴェル様の仕業であろうが……
「刀をおさめよ、ジライ」
「………」
 とりあえず、ここは命令に従っておくべきだろう。
 ムラクモを鞘に収め、我は上座に対し平身低頭した。
 ムジャも我に倣う。
 上座の大男は、上座のムネヨシに対し顔を向けた。が、微かにすら頭は下げぬ。
「インディラ国第三子ガジャティンだ。前触れなき訪問、非礼を許せ」
 異国の王子の突然の出現。
 身分制度にこだりのあるサムライ達は、慌ててガジャクティンに対し、頭を下げた。
「カルヴェルの魔法にて、ここに運んでもらったのは他でもない」
 サムライ達に顔をあげさせてから、インディラ国第三王子は突然出現した理由をまず説明してから、本題に入った。
「我が父からの言葉を伝える為だ」
 ナーダの?
「そなたらも知っておるとは思うが、我が父はインディラ教大僧正候補であった。又、先代勇者セレスの旅に同行し、聖なる武器についての見聞も広めた方でもある」
 まあ、そうだな。
「刀身から聖水を生み出し、有資格者以外は鞘から抜けぬジャポネ刀の形の聖なる武器は『ムラクモ』以外ない。父はそうおっしゃった」
 む?
「ゆえに……『ムラクモ』にあまりにも酷似した『小夜時雨』が、『ムラクモ』と無縁であるはずがない。両者には浅からぬ縁があるはず」
 むむ?
「古の時代より伝わる刀ゆえ、聖なる武器『ムラクモ』の誕生は伝説にて伝わるのみ。伝説は、数多くの人間の手にて変遷しがちなもの。今日までの間に重要な情報が欠落した疑いもある」
 むむむ?
「すなわち……『ムラクモ』と『小夜時雨』が共にこの世に誕生した、夫婦(めおと)刀の可能性も否定できぬ」
 むぅ?
「しかし、おそれながら……」
 ムネヨシが戸惑いながら口を開く。
「夫婦刀というものは普通、大小に大きさが分かれており」
「ならば、双子刀だ。共に生まれたゆえ、大きさも、性質も、特徴も、皆、同じなのだ。外装は後人のなしたものゆえ、異なるがな」
 何が言いたいのだ、こやつ……?
「我が父の願いを伝える。共に生まれしものならば共にあるべき。今世の『小夜時雨』の使い手忍者ジライが没した後は、インディラ国は双子たる聖なる武器が共にある事を欲し、『ムラクモ』を所有する一族に『小夜時雨』を寄贈する事を望む。我が父の望み、受ける意思があるか否や」
 ほほう。我が死後か……
「それは……願ってもなき事。しかし……」
 カズマが我をチラリと見る。
「その事をご配下の忍は納得しましょうか?」
「納得する。な、ジライ?」
「はい、ガジャクティン様」
 インディラ第三王子に対してだけ、我は恭しく答える。カズマの視線など無視。
「私がこの刀と共にあるのは、共に戦う為にございます。死後のことなど預かり知りませぬ。お国のご意思に従います」
 誰ぞに譲りたいわけではない。棺桶まで武器を持ってゆく気も微塵もない。
 我は我、『小夜時雨』は『小夜時雨』じゃ。
 死後のことなど、どうでもいい。『小夜時雨』が誰の手に渡っても構わん。
 この若造の手に渡るのならば、それはそれで『小夜時雨』の運命。
 ガジャクティンは満足そうに頷いた。
「では忍者ジライの死後、インディラ国は『小夜時雨』を『ムラクモ』の所有者に寄贈する」
「ははっ。謹んでお受けいたします」
 頭を下げ、かしこまるカズマに対し、ガジャクティンが王者然たる笑顔を見せる。そういう顔をすると、つくづくナーダに似ておるわ、こいつ。
「共に生まれたもともとが一つであった刀が、一つ所に集うのは喜ばしいことだ。刀も再び巡り合えたことを喜び、混じり合い、ひとつの刀に生まれ変わる奇跡を起こすかもしれぬな」
 ガジャクティンの言葉に、カズマは一瞬、呆け、それから深々と頭を下げた。『さようにございますな』と言って。
『小夜時雨』もカズマの手の内の『ムラクモ』も両方本物としておき、有資格者が現れた時には偽物はこっそり処分してしまえと勧めているのだ。世間に対しては、双子刀ゆえ、二刀が合体して一つとなったのだと発表して。
 聖なる武器には、神秘的な奇跡はつきもの。見え透いた大嘘とて、堂々としてればまかりとおるであろう。
 なるほど。
 普段、第一王子の陰に隠れて子供然としておるが、結構、頭が良いではないか、この王子。
 まあ、シナリオを書いたのはカルヴェル様であろうが。


『小夜時雨』と『ムラクモ』は双子刀であり、カズマ所有の『ムラクモ』も偽物ではないとインディラ王家は認めたのだ。その上、我の死後には『小夜時雨』をもらえる事となって……
 カズマに不服などあろうはずがない。
 たった今、この場でもらったところで、我欲の強いカズマでは『小夜時雨』は抜けぬ。
 しかし、手元に無ければ、抜けるかどうか試す必要もない。我が手元にしばらくある方が、若造サムライも誇り(プライド)が守れるというわけだ。


『姫勇者ラーニャ』の新刊には、双子刀『小夜時雨』と『ムラクモ』の話を載せねばなるまいが……
 我はジャポネに来ておらぬ事になっておる。
 どんな話にすべきか……悩ましい。
 まあ、いい……
 ムジャに考えさせよう。
 はよう新しい話を、名作家様に書いてもらわねば、の。 
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