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  Dear... 作者:Donald
episode21:敗北の日
新一との再会を果たしてから数日たった頃、平次は哀に会うためにもう一度面会に向かった。
新一とは違い、哀は疲れきった様子もなかったし、むしろ、彼女が研究室に籠っていた頃に比べると顔色が良くなっている様な気さえした。

『この姿で会うのは“はじめまして”かしら?』

『あぁ…せやな…』

本当の哀の姿、宮野志保は“大人の女性”という雰囲気を醸し出していた。見たところ、平次とは年齢も近いようだ。

『工藤に会うてきたわ。あんたとも話しとかなアカンと思って来たんや。』

『あら。何かしら?』

深刻な顔で志保に話しかける平次に対し、志保は左手の爪のささくれをいじりながら少し退屈そうに答えた。

『あんたも工藤も、最初から殺人犯になるつもりで銃を持って行ったんか?』

平次はわざと“殺人犯になるつもり”と遠回しな表現を使ったが志保にはお構い無しの様だった。

『えぇ。そうよ。』

左手のささくれをいじるのをやめ平次の顔を見据えて、志保ははっきりとこう答えた。

『……何でや?何でそないな事する様な奴に成り下がったんや!』

平次の口調は次第にトゲのあるものに変わっていった。この言葉を聞いて、志保は静かに反発した。

『別に成り下がった訳じゃないわ。確かに、蘭さんを失ってしまったことはとてもショックだけど、ジンを殺したことについては私達の判断は間違ってなかったと信じてるわ。』

『人を殺す事が間違ってなかったっちゅーんか?』

平次は“信じられない”という目で志保を睨んだが、志保は平次の顔を見ようとはしなかった。

『…それが最善策だったのよ。私達はああするしかなかった。』

『何でや!それのどこが最善策やねん!』

気付けば平次は椅子から立ち上がり、声を荒げていた。全てに納得がいかなかった。

『だってそうでしょう?奴らは世界規模で動いてる組織なのよ?たとえ日本の組織のメンバーを警察に付き出したところで、メンバー補充はいくらでもできるわ。それに、蘭さん達が誘拐されたって事は、少なくとも工藤新一が生きている事がバレた可能性が高い。そうなれば、工藤君の周りの人達だって容赦なく殺されるのよ……』

表情一つ変えることなく、志保は一気に話しきった。平次は言葉を失い、脱力したように椅子に座り込む。そんな平次にとどめを指すように、志保は続けた。

『私は、あの場で亡くなったのを蘭さん1人にとどめられたのは奇跡だと思ってるわ。下手したら、あの場で全滅だったかもしれないし…工藤君がどう思ってるか知らないけど、私達がこうして生きて帰ってこられたのは、あの時彼がジンを殺してくれたおかげよ。』

『な…なんやとぉ!?』

この台詞に、平次も黙ってはいなかった。
しかし、志保は平然と話を続ける。
『私は正直、自分が捕まってホッとしてるの。ここにいる間は組織に怯える必要もないし。……あなたは工藤新一という人間に幻想を抱きすぎたんじゃないの?』

志保の言葉に、平次は何も言い返せなかった。彼には幻想を抱き、理想論を語りすぎていたかもしれないが、自分もそれなりに彼と付き合ってきたはずなのに、今は彼の気持ちが何一つ理解できないでいた。

『俺、もう行くわ…』

ポツリと一言呟くと、平次は面会室を後にした。

外は平次の心とは正反対に突き抜ける様な青空が広がっていた。小五郎の所へ行こうかとも思ったが、何を話したら良いのか、頭が混乱しそうで、今日はやめにしてホテルに戻ることにした。

今頃、和葉はホテルで1人だろうか?

こんな事、口に出しては言えないが、和葉のやかましい声が聞きたくてたまらなかった。


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