episode20:戻れない二人
ー3日後ー
狭い空間。
壁が迫ってくる様な奇妙な感覚。
夜になると甦る銃の重みと血の匂い。
毎晩うなされ、ろくに眠れていない。頭がおかしくなりそうだ。
あれからどれくらい経ったのか、それすらも分からない。
ガチャン。
『出ろ。面会だ。』
ーーーーーーーーーーー
平次は面会室で新一を待っていた。会ったところで何を言えばいいのかも分からなかったが、平次には新一の口からすべてを聞きたいという思いがあった。
しかし、そんな思いとは裏腹に、嫌な汗が平次の掌や額からジットリと流れていた。
《何を緊張してんねん…工藤に会うだけやぞ?》
平次が自分に言い聞かせた、その時。
ガチャ
面会室の扉が開き、新一が姿を現した。会うこと自体は久しぶりではないはずだったが、新一は、この短い時間の間に豹変してしまっていた。目の下に隈は出来ていたし、何よりゲッソリと痩せていた。
『く…工藤…』
変わり果てた名探偵の姿に平次は言葉を失った。
やはり、ショックが大きかった。
『服部か…来てくれたんだな…』
新一は平次に小さく笑いかけたが、その言葉に感情はなく、平次に向けられている目も、平次ではなく、どこか遠くを見つめている様だった。
『当たり前や!心配しとったんやぞ!……例の事件の事、全部話せ。お前の口から全部聞きたいんや。』
平次の口から“例の事件”という言葉が出た途端、新一の眉が一瞬ひきつったのを平次は見逃さなかった。しかし、平次は新一を見据え続けた。
『……事件の事はあんま覚えてねぇんだ。気がついたら銃を手にして、ジンを撃ってた。』
新一の口から出たその言葉に反応して、平次は思わず椅子から立ち上がった。
『ふざけんな!!何が“気が付いたら”や!いくら相手が怪我しとったからって、がむしゃらで発砲した素人が一発で人殺せるか!!』
平次は自分の掌を強く握りしめた。
『お前、ホンマは…最初から殺す気やったんとちゃうんか?姉ちゃんが拐われた時点で決めっとんたんやろ?』
平次は納得がいかなかった。あの場で新一や哀が銃を所持していたこと。普段の新一なら、例え護身用でも“銃を持つ”なんて発想には至らないだろう。
最初からあの男を警察につきだす気などなかったのか?最初から自分の手で決着をつけるつもりだったのか?
自分の命を危険に晒してでも…
『…お前みたいな勘の良い友達は持つべきじゃねぇな。』
ポツリと呟いた新一の言葉に、平次は頭に血が昇るのを感じた。
『……工藤っ…てめぇ…』
『お前には分かんねーよ…俺の気持ちはな…』
『あぁ。分かりたくもないわ。…こないな仕切りがなかったらお前の事ぶん殴ってるとこやわ。』
平次はそう言うと自分と新一を仕切っていた板を思いっきり叩きつけた。
そしてすぐ、平次は荷物をまとめ部屋を後にした。
荒々しく扉が閉められた音がこだまする面会室に残された新一は、久しぶりのライバルとの再会の余韻に浸るように、なかなか部屋から出ようとはしなかった。
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