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  Dear... 作者:Donald
久々の更新ですッ
episode17:カーテン・フォール
沈黙。

鼻につく火薬の匂い。

床を染めた愛しい血。

消えゆくか細い吐息。

『……蘭?』

どうか悪い夢であってほしい。

嘘だと言ってくれ。

『……蘭?』

真っ赤な血は温かく流れ落ち、主人の体は確実に冷たくなっていった。

自分の死より恐れたもの。
こうならないようにアイツを遠ざけてきたハズなのに…

どうして愛しい人が血を流す?

どうして蘭が撃たれてる…?



なんで俺なんか庇うんだ?
なんで俺なんかのために命を犠牲にするんだよ?

『……蘭。なんか言えよ?』

頼むから。

声を聞かせてくれ。

『……新…一…』

良かった。まだ生きてる。

生きてる。

『…ゴメンね?』

何謝ってんだよ。謝んなきゃいけないのは俺なのに…

お前がいつだって俺より先に言いたいこと言っちまうから

俺はいつだって素直になれねぇんだよ…

『…なッ…なんでお前が謝るんだ…謝んなきゃなんねぇのは俺の方…』

言葉が続かない。

言いたいことが溢れてきて、思いが込み上げてきて。


『…好きだよ。新一…』


ほら、また俺より先に…

『バカやろ……』

涙が溢れて声にならない。確実に冷たくなっていく蘭を抱き締めることしかできない。

俺の体温がコイツの体温を取り戻してくれたらいいのに…

俺の涙がコイツの血を全部綺麗に流してくれたらいいのに…

『…蘭。俺もお前の事が………蘭?』


嘘だ。

嘘だよな?

『…蘭!目開けろよ…』


俺は結局、お前にまだ何にも伝えてねぇんだぜ?

それなのに俺を置いていくのかよ…

『……何か言えよっ…』


頼むから、一人にしないでくれ…



『安心しろ。』

最も憎むべき男の声が、蘭の記憶を遮るように入り込んできた。

『お前ももうじき、愛しい恋人の元へ逝かせてやる……覚悟はいいか?』

銃口を向けられても、新一はもう微動だにしなかった。守るべきものを生きる目的を失ったから。

怒りと憎しみの籠った目でジンの銃口を睨んだ。銃口の向こうには親友を目の前で殺された哀しき少女が脱け殻のように涙を流していた。


ドンッ


園子は確実に新一の死を確信した。しかし、撃たれていたのは彼ではなく銀髪の男だった。
男はゆっくりと崩れ落ち、その場にしゃがみこんだ。

『…は…灰原?』

廃工場の入り口には銃を手にした哀がいた。哀は新一にもたれかかったまま動かない蘭を見て、悲しげな表情を浮かべた。

哀にとっても、蘭は守りたい存在だった。
哀は少しうつむくと、またすぐにジンに銃を向けた。

『てめぇまで生きてやがったのか…シェリー…』

哀の撃った弾は鋭くジンの腹部を抉っていた。ジンはすっかり体の自由を奪われていた。

『無駄口たたいてる時間なんてないわよ?私は全てを終わらせに来たんだから。』

哀はそう冷たく言い放つと、新一の方に目を向け、彼に選択を委ねた。

『とどめをさすかどうかは貴方次第よ。』

この一言に新一は大きく揺らいだ。

いくら相手が犯罪者でも、自分に殺す権利があるわけなかった。

しかし、奴に蘭を殺す権利があったのか?

そう考えると怒りと憎しみが巨大な渦となって押し寄せて来た。

優しい思い出が怒りに染まった。

愛しい声が憎しみにかき消された。

気づくと新一は銃を握り、奴の頭に向けていた。
奴もまた銃を新一に向ける。


ドンッ

ドンッ


鈍い銃声が二発、薄暗い工場内に響いた。

銃声の先にあるのは生か、死か。


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