発見っ!!
「八神先輩。ありがとうございました」
真琴ちゃんが弟の雅人と一緒に頭を下げる。
「別にいいよ。じゃあ、俺はこれで」
「あっ! 待って下さいよ! 八神先輩」
立ち去ろうとすると真琴ちゃんが引き止める。
俺はゆっくりと振り返る。
「何かお返しさせて下さい」
じゃあ、帰らせて……って言えない俺が居る。
早く帰って昨日出た新作のギャルゲーをやりたいんだが……
おい。これ見てる奴で「えぇー……ギャルゲーすんかよ」みたいな反応すんなよ?
ギャルゲー舐めんな!
ギャルゲーを見て……
『俺はハーレムを目指す!!』
と決めさせた程の凄さがあるんだからなッ!
……それに……ギャルゲーが無くても俺はお返しを貰っては駄目なんだ。
俺が雅人を見つけた訳じゃないから……
俺は色んな所を探し回った。
でも、何処にも居なかった。
じゃあ、どうやって雅人を見つけたかと言うと……
突然、携帯電話が鳴り出したんだ。
画面には『非通知』を知らせる文字がある。
「…もしもし」
(貴方の現在地から東に60歩、北に20歩。歩いた所にある公園に来て下さい。貴方の探し者が居ます)
それだけ言って相手が電話を切る。
声を聞くと女の人だった。
声を聞いても誰からかはわからなかった。
「一体誰で、何で俺の携帯番号を知ってるんだ?」
疑問に思いながらも言われた場所に向かう。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
公園には雅人と思しき人物が滑り台にもたれ掛かりながら寝ていた。
これが雅人を見つけた理由とお返しを貰えない理由。
この事は真琴ちゃんには伝えないまま俺は駆け足で家に帰る。
俺が見つけたと思わせて好感度を上げる為ではない………多少は………無いな。
伝えない方が良いと判断したから言わなかった。
真琴ちゃんの事だから捜すのだろうけど………
あの人は自分が見つけたのではなくて俺が見つけた事にしたのは何か理由があると考えた方が良い。
それがあの人の為でもあるから。
だから俺は真琴ちゃんに教えない事にした。