異次元世界大戦 独立艦隊海戦記(8/67)PDFで表示縦書き表示RDF


異次元世界大戦 独立艦隊海戦記
作:山口多聞



第一次ミッドウェイ海戦


 整備兵やパイロットたちが汗だくになりながら、整備と補給を完了させた艦載機の群れがようやくエレベーターで甲板に上げられ、並べられていく。

「急いでくれ、こんな時に敵の急降下爆撃機に襲われたら洒落にならんぞ!!」

 近江参謀長が甲板を見ながらそう呟いた。

 既に敵艦隊との距離は100kmを切っている。つい先ほど電探室から対艦用電探で敵艦影らしき物を捉えたという報告が入ったばかりだった。

 桑名は上空直掩の戦闘機に敵の急降下爆撃機の接近に注意するよう命令し、各艦の見張り要員には、雷撃機の接近に注意するよう命令を出していた。

「攻撃隊、発進準備完了まで後3分です。」

 航空参謀が現状を伝える。甲板に並べられた艦載機にパイロットたちが乗り込み、既にプロペラを回して暖機運転に入っている機体もあった。

「ようし、少し早いが艦首を風上へ向けろ!全機揃わなくて良い、出せる機体から発艦させろ!!」

 航空機を発進させるには充分な揚力を起こさせるための風力を確保する必要がある。そのため、艦を全速で走らせ、艦首を風上へ向ける必要がある。

「は、取り舵一杯!!機関最大戦速!!」

 艦長の朝倉大佐が操舵室に繋がる伝声管に向かって命令を言う。まもなく、操舵室からの復唱が帰って来る。そして、しばらくして艦が左に傾き始めた。

 艦首から出る吹流しの水蒸気が甲板に描かれた線と重なる。艦首が風上へと向いた証拠だ。

「発艦始め!!」

 甲板士官が旗を振る。それと同時に戦闘の1式艦戦がスルスルと動き始めた。また、階下のカタパルト付きの第2甲板からは爆弾を抱えた艦爆が出撃していく。

 五月雨式での発進という前代未聞の発艦方法であったが、敵の攻撃もなく、なんとか攻撃隊の60機は発艦を完了させた。

「発艦が完了したな。これより「天城」は艦隊後方に退避。打撃艦を先頭にして敵艦隊へ突撃する。全艦最大戦速へ!!」

 航空隊の発艦を終わらせた実験艦隊は、敵艦隊との砲撃戦を求めて突進を開始した。

 一方、発進した攻撃隊は敵艦隊との距離がわずか95kmという超至近距離であったから、わずか20分で敵艦隊へと到達した。

 この時、米艦隊にとっての不幸は攻撃隊を発進させようと風上へ向かって走っている事であった。実は米艦隊も「レキシントン」の艦載機を実験艦隊へ向け発進させようとしていたのだ。

 しかし、米艦隊の不幸は実験艦隊に接触した偵察機が電信を発信出来なかったことであった。そのため、彼らが実験艦隊への攻撃準備を開始したのは実験艦隊の水上機に接触されてからであった。

 タッチの差で米艦隊は実験艦隊の先制を許したのであった。しかも、発艦のために艦首を風上へ向けて走らせていたために、回避運動も出来ない。直掩戦闘機も発進していなかった。

 この光景に、攻撃隊隊長の秋田は狂喜した。

「やったぞ!敵さん直掩機を上げてないし、回避運動もしていないぞ!ようし、戦闘機隊は敵空母の艦上を機銃掃射して敵の艦載機を破壊しろ、艦爆、艦攻は重巡と駆逐艦を集中攻撃しろ!後は直ぐに艦隊が砲撃戦で片付けてくれる!全機攻撃開始!!」

 秋田の命令の下、攻撃隊は一斉に攻撃を開始した。

 まず戦闘機隊が「レキシントン」めがけて突っ込む。もちろん、米艦艇も対空戦闘を開始したが、1式戦闘機は零戦やF4Fよりも高速の600km以上のスピードで突っ込んだために、追いきれないという事態が続発した。

 また、米艦艇の対空砲火もこの時期はまだ後の針ねずみと言わしめるものとはお話にならないほど貧弱であった。

 1式艦戦の群れは、易々と「レキシントン」に銃撃を開始した。甲板に並べられていたF4FやSBD「ドーントレス」が次々と炎上した。

「レキシントン」の乗員は爆発する前に、急いで炎上した機を海上に投棄した。しかし、この作業によって発艦は事実上不可能となってしまった。

 戦闘機隊が敵空母の航空機発進能力を奪うと、今度は艦爆隊と艦攻隊が周りの巡洋艦と駆逐艦に猛禽のごとく襲い掛かった。

 8隻は対空砲火を打ち上げ、必死に回避運動を行なった。実験艦隊航空隊の技量が劣っていたこともあってか、命中弾はそこまで多くはなかった。しかし、それでも1式艦爆の積んでいた500kg爆弾と97式艦攻の91式航空魚雷は1発で大きな打撃力を持っていた。

最終的に、駆逐艦2隻と重巡1隻が沈没を避けられないほどの大打撃を受け、さらに3隻が大なり小なりの打撃を受けていた。

 そして、この時駆逐艦がかわした魚雷の1本が「レキシントン」に命中した事が海戦の趨勢(すうせい)を決定付けた。

 この魚雷は「レキシントン」の艦尾に命中し、4軸のスクリューの内2軸を破壊してしまったのだ。これにより、「レキシントン」の速力は全速の半分である15ノットまで落ちた。

 最終的に、この戦闘はほんの30分ほどで終了したが、米艦隊は戦闘艦艇の半分以上がなんらかの損傷を負うか失われており、事実上壊滅していた。

 一方、攻撃隊の被害は艦戦1、艦爆1、艦攻4であった。艦攻の被害が多いのは、低速であったために被弾率が上がったことが原因であった。

 夕立のように突然やってきた攻撃隊は、やはり短時間で引き上げたが、米艦隊の災厄はこれだけではなかった。

 攻撃隊が引き上げると、米艦隊は沈没艦の乗員救助と火災の消火を開始した。その40分後であった。付近海上を警戒していた重巡の「チェスター」が水平線上に艦影を発見した。

 そして間もなく、「背振」級から発射された40cm砲弾が米艦艇に降り注いだ。慌てて「チェスター」も反撃を開始したが、間もなく40cm砲弾を被弾して戦闘不能に陥った。

 この時点で米艦隊で戦闘能力を維持していたのは巡洋艦1隻とのみであった。その艦も救助作業中であったために、戦闘は出来なかった。

 そして、実験艦隊は米艦隊を取り囲むように展開した。米艦隊司令官のニュートン少将に取りうる選択肢はもはやなく、彼は全艦に白旗を上げさせざるを得なかった。

 その30分後、実験艦隊からランチで桑名司令官が「レキシントン」に乗り移り、正式な協定が結ばれた。

 その結果、実験艦隊としても米兵全てを捕虜にしている余裕は無いので、空母「レキシントン」と巡洋艦「ペンサコラ」を除く米艦は乗員込みで解放する事にした。ただし、ニュートン少将を始めとする高級士官だけは、情報を持っているため捕虜として「天城」で日本へと連行される事となった。

 こうして第一次ミッドウェイ海戦と呼ばれる戦いは終わった。

 実験艦隊はこの後日本軍に占領されたウェーキ島へ赴き、そこで給油艦から燃料をわけてもらい、12月24日に日本へと帰還している。意外と時間がかかったのは「レキシントン」を曳航したために速力を制限されたからだ。

 そして、この戦いでの勝利によって実験艦隊の株は大いに上がる事となる。


 御意見・御感想お待ちしています。











ケータイ表示 | 小説情報 | 小説評価/感想 | 縦書き表示 | TXTファイル | トラックバック(0) | 作者紹介ページ


小説の責任/著作権は特に記載のない場合は作者にあります。
作者の許可なく小説を無断転載することは法律で堅く禁じられています。




BACK | TOP | NEXT


小説家になろう