異次元世界大戦 独立艦隊海戦記(7/67)PDFで表示縦書き表示RDF


異次元世界大戦 独立艦隊海戦記
作:山口多聞



敵空母見ユ


 ミッドウェイ爆撃を終わらせた攻撃隊が「天城」に帰還してきた。桑名が見ていた限りでは、朝飛び立っていった数とほとんど変わっていなかったように見えた。

 そして間もなく航空参謀が報告を持ってきた。

「攻撃隊の被害ですが、未帰還機はありませんでした。被弾機も4機のみで、いずれも軽損傷だそうです。また、戦果ですがミッドウェイ基地の滑走路に相当数の被弾を与え、駐機中の小型機約10機を撃破、格納庫複数を破壊。その他飛行艇2機の炎上と、複数の対空陣地に火災を発生させたのを確認したそうです。」

「意外と被害も戦果も少ないんだな。」

 報告を聞いた近江参謀長が怪訝な表情をした。

「乗員の話では、敵基地の規模は本当に小規模で、対空応陣地や格納庫など狙うべき場所があまり無かったそうです。その結果敵の反撃も小さく被害も少なく済みましたが、戦果も僅少な物となりました。」

「そうか・・・」

 近江はもう少し戦果があるものと期待していたらしく、少し落胆していた。

「なあに参謀長。この作戦はあくまで真珠湾作戦のおまけみたいな物だ。先ほど真珠湾へ突入した攻撃隊が奇襲を成功させたと報告があったんだ。我々はその使命をしっかり全うしたという事だ。無駄な被害も出さず済んだだけよしとしよう。」

「は。では、艦隊を帰還させますか?」

「そうだな、2次攻撃の必要もなさそうだし。じゃあ、帰るとするか。」

 桑名が艦隊に反転命令を出そうとしたその時であった、無線室から連絡が入った。

「報告します。上空直掩中の戦闘機隊より入電、SBD「ドーントレス」と思しき敵機1機を撃墜せり、位置艦隊より南西35km地点。なお敵機は北西より飛来したとのことです。」

 その報告に桑名が首を傾げた。

「なんだと?南西、ミッドウェイから飛んできた敵機ではないのか?それに、電探は何で見つけられなかったのだ?」

「ミッドウェイから飛んできたとは思えません。位置がおかしすぎます。それと、電探は捉えていたのですが、味方の偵察機と誤認したようです。」

 航空参謀が言う。ちなみに、電探は「天城」に元々付いていた物をそのまま1式対空対艦電探として使用していた。

「ふーむ。参謀長、君はどう思う?」

「状況から考えるに、敵空母が近海にいる可能性があります。それに、先日の件もあります。」

 近江の言う先日の件とは、ハワイ真珠湾に潜伏していた海軍の工作員から空母「エンタープライズ」、「レキシントン」が相次いで出港したという連絡であった。

 連絡を受けた時点で、こちらの作戦に気付いての迎撃行動ではないかということが疑われた。しかし、ハワイ近海の味方潜水艦からは空母が遊弋している予兆は見られず、警戒はしつつも、訓練か何かでの出港と判断していた。

 その空母が、この近くにいる可能性が出てきた。確かに、ハワイから近いこの海域で訓練する可能性は無きにしも有らずであった。

「やはり敵機動部隊かな?こちらの偵察機はどうした?北西海域には出撃していないのか?」

 すると、再び航空参謀が答えた。

「南西海域には「背振」の水偵が出ていますが、今の所発見の報は来ておりません。」

「そうか・・・」

 桑名はしばし思案する。ここで彼が執るべき策は3つある。1つは現海域で敵機動部隊の捜索を続けること。しかし、先ほどの米軍機が撃墜前になんらかの報告を送っていたら危ない。2つ目は、一目散に離脱し敵との戦闘を避ける。実験艦隊の艦艇の多くは高速だから敵を撒ける可能性は充分ありえる。しかし、敵が空母で有力な航空戦力を積んでいるとなると話は別である。さらに、敵を前にして尻に帆を掛けて逃げるのは帰還した際にまずい。3つ目は、前の2つの折衷案で、離脱しつつも敵艦隊の捜索を続ける。というか、これ以外に選択肢は無かった。

「仕方ない。艦隊は一端南に転進し、ミッドウェイ環礁から離れる。ただし引き続き航空索敵は続行せよ。それと、航空隊は第2次攻撃を対艦装備で準備せよ!」

「了解!」

 取りあえず方針は決まり、実験艦隊は南へ向けて動き始めた。ただし、残存燃料の関係から短時間しか行なえない。

 一方、甲板下の格納庫内では整備兵が帰ってきた航空機の整備、補給を開始していた。そこへ新たな命令により、新たに第二次攻撃のために対艦装備の準備に入った。

「敵空母がいるのか!?」

「対地攻撃だけじゃなかったのかよ!?魚雷は積むのも調整するのも手間が掛かるんだぜ!?」

「ぼやぼや言わずに手を動かせ!!」

 整備兵達は悪態を付きつつも、爆弾庫から対艦用の撤甲爆弾や魚雷を取り出し、艦載機に装備を始めた。

 また、帰ったばかりのパイロット達も用意された握り飯やいなり寿司をサイダーで急いで流し込むと、整備兵の手伝いを開始した。

 そして、桑名達がまちに待った報告が入ったのは、第二次攻撃準備の命令が出された40分後であった。

「偵察機より入電。敵空母「レキシントン」とおぼしき物1、重巡3、駆逐艦5見ユ。位置艦隊より西150km。針路東、速力22ノット!!」

 その報告に、艦橋にいたスタッフは一瞬言葉を失った。

「艦隊から150kmだと!近すぎるぞ!!」

 150kmと言ったら航空機なら、爆装した機でも1時間ほどしか掛からない。また艦艇でも相対速度が70km程なら2時間ちょっとで接敵してしまう。

 ただし、敵機がやってこない所を見るとどうやら先ほどの偵察機はこちらを発見できなかったようだ。

「どうします?一端離脱しますか?」

 近江が聞いてくるが、これには桑名も迷った。もしこのまま進めば2時間後には敵艦と接触する。砲撃戦となれば総合的に見てこちらが若干有利となる。しかし航空戦では「天城」がやられれば終わりである。空母は飛行甲板が使えなくなればそれで戦闘不能なのだ。

「いや、敵に突っ込もう!砲撃戦ならこちらに分がある。それに今更逃げても同じだ。とにかく今は一刻も早く艦載機の発進を急がせろ!!」

 一気に艦隊内の動きが慌しくなる。先ほどまで愚痴を言っていた整備兵たちも大車輪で魚雷と爆弾を装備していく。もしこのような状況で爆撃を受けたら完全にアウトである。整備兵たちは、ひたすら敵機がこないことを祈った。

 また、艦上の機銃座には兵達が配置に付き、空を睨む。しかし、肉眼でも、そして電探でも敵機が近づいてくる様子はなかった。


 御意見・御感想お待ちしています。











ケータイ表示 | 小説情報 | 小説評価/感想 | 縦書き表示 | TXTファイル | トラックバック(0) | 作者紹介ページ


小説の責任/著作権は特に記載のない場合は作者にあります。
作者の許可なく小説を無断転載することは法律で堅く禁じられています。




BACK | TOP | NEXT


小説家になろう