異次元世界大戦 独立艦隊海戦記(52/70)PDFで表示縦書き表示RDF


異次元世界大戦 独立艦隊海戦記
作:山口多聞



空母決戦 上


 ラバウルからの陸上航空隊の攻撃によって時間を稼いだ日本軍であったが、翌日真打とも言うべき第1機動艦隊分遣艦隊がガ島近海に進出してきた。同艦隊は空母「瑞鶴」、「翔鶴」、「剛龍」を主力として、巡洋戦艦1、重巡3、軽巡2、駆逐艦10からなっていた。司令官は進級したばかりの原忠一中将である。

 同艦隊は黎明から早速偵察機を飛ばして敵機動艦隊と敵上陸部隊を探した。一方の米機動艦隊も無線情報で日本機動艦隊の出撃を探知していたので、こちらも偵察機を出した。

 しかしながら、この日午前中はガ島近海の天候が悪く、双方ともに発見できなかった。結局機動部隊同士の対決は午後にまで持ち越されたが、ここで両軍とも予期せぬ事態に見舞われた。

 まず日本艦隊は空母「翔鶴」のボイラーが突然故障を起こし、速力が20ノットまで下がってしまったのである。これは全く原因不明の事態で、2時間後に回復したもののこれによって進撃速度が落ちてしまった。さらに、この間一時的に航空機の運用を停止したため、一部の偵察機の発進が遅れた。

 一方米機動部隊の方は日本の潜水艦の襲撃を受けた。この時米機動艦隊に攻撃を仕掛けたのは「伊26」潜水艦だった。同艦はソロモン海での哨戒任務に就いていたが、偶然にも米機動部隊を捕捉し雷撃を敢行したのであった。

 結果は空母にこそ命中弾を出せなかったが、重巡「シカゴ」に2本が命中大破、軽巡「ヒューストン2」に1本命中中破、そして駆逐艦「オブライエン」に1本命中、大破後沈没であった。

 1隻の潜水艦があげた戦果としては空前絶後のものである。しかしながら、「伊26」はこの後すぐに対潜哨戒機によって攻撃されてやむなく浮上。その後やってきた米駆逐艦に撃沈されている。また無線を打つことも出来なかった。

 どうして攻撃前に「伊26」が無線を打たなかったのか不明であるが、後に捕虜となって帰国した乗員の話によれば、どうやら無線装置がトラブルを起こしていたらしい。

 この雷撃によって、米機動艦隊は2時間ほど足止めを食らってしまった。

 こうした突発事態に見舞われた両軍であったが、夕方になってようやくお互いの姿を確認している。しかしながら、既に日没が迫っていたため、両軍とも航空攻撃は無謀として行わなかった。

 米機動部隊司令官のミッチャー中将は敵機動部隊を掃討していないことを理由に、上陸部隊護衛艦隊司令官のライト少将に一端後退するよう打診した。

 ライト少将率いる護衛艦隊は戦艦と空母を含んではいたが、戦艦は真珠湾から引き上げた旧式艦であり、空母は商船改造の護衛空母で、艦載機の合計は56機に過ぎなかった。

 そのためライトはミッチャーの要請を受け入れ、一端ガ島南方海域に後退している。そしてこの日の夜はお互い何事もなく終わった。

 翌朝、日米機動部隊は再び黎明からお互い偵察機を出して敵を求めた。日本側は最新鋭の艦上偵察機「土星」(2式艦上偵察機の空冷バージョン)が、また米軍側も最新鋭の艦上爆撃機SB2C「ヘルダイヴァー」が南海の空へと飛び上がった。

 両軍偵察機の搭乗員たちは、それこそ血眼にして敵機動艦隊を探したが、先に発見したのは日本の「土星」艦偵であった。米軍機に比べて高速であったことが有利に働いた。

 この報を受けるや否や、原は直掩機を除く全ての機体に発艦命令を出した。

「全機出撃!!とにかく空母を叩け!!」

 3隻の空母から艦戦47、艦爆45、艦攻40の計142機が出撃した。いずれも「烈風」、「彗星」、「天山」と言った最新鋭機であった。

 一方米機動部隊の方は日本軍に発見されたのに遅れること20分、日本機動艦隊を発見した。

「急いで全機発進させろ!!日本軍の攻撃隊が来る前になんとしても発進させるんだ!!」

 すでに日本側の偵察機に発見されていたため、ミッチャーはとにかく一刻でも早く攻撃機を発進させるよう、繰り返し命令した。そして間もなく、艦戦40、艦爆60、艦攻27の合計127機が出撃した。艦爆が艦攻に比して多いのが、急降下爆撃を重視した米海軍の特色であった。

 こうしてお互い矢を放った両機動艦隊は、今度は敵攻撃機の襲来に備えた。直掩戦闘機を上げ、乗員が戦闘配置に就く。

 発進した時刻は日本側の方が20分ほど早かったが、途中でスコールを迂回したため、攻撃開始時刻の差は米攻撃隊に比べて5分であった。

 まず戦闘機同士の戦闘によって、戦いの幕が上がった。この時米軍側が上げていた直掩戦闘機の数は計43機。日本側とほぼ互角であったが、性能的には日本側の「烈風」が米軍の「ヘルキャット」に勝っていた。

 「烈風」は零戦の後継機になるべく開発された新型戦闘機で、当初は格闘性能が重視されたため艦攻並みの大きさになる予定であった。しかしその後前線からの意見を踏まえて、速度性能が重視されたため、一回り小さくされている。またエンジンも生産性に難があった「誉」に換えて、三菱製の「勲」を搭載している。さらに川西社製の自動空戦フラップを搭載するなどして、零戦に勝るとも劣らない格闘性能を可能にしている。

 搭乗員たちも半分は開戦以来のベテランで占められており、部隊全体の練度も米軍機に比べて遥かに高かった。

 結果戦闘機同士の戦いは日本側の損失5機であったのに対して、米軍側の損失22機と一方的な戦いとなった。

 そして戦闘機隊の戦いを横目に、艦爆と艦攻が一斉に突入した。

「突撃!攻撃目標は輪陣形中央の敵空母だ!!」

 攻撃隊隊長の友永少佐の命令の下、攻撃隊は2隻の「エセックス」級空母と、1隻の「インディペンデンス」級空母に攻撃を集中した。

 一方米艦艇側も対空戦闘を始めた。

「全火器使用自由!!ファイア!!」

 5インチ両用砲、40mm機関砲、20mm機関銃がいっせいに発砲した。しかし、その数は一昨日の対空戦闘時より明らかに少なかった。損傷艦艇の後退や、また現在戦闘継続中の艦艇にも、対空砲などが損傷しているものが多かったためだ。

 それでも米艦隊の対空砲火は奮戦し、「彗星」5機と「天山」6機を撃墜するか、飛行不能なほどの損傷を与えている。だがその程度で攻撃を止めることなど当然出来なかった。

 対空砲火を突破した攻撃機が次々と3隻の空母めがけて投弾した。

 結果は悲惨以外の何物でもなかった。まずミッチャー中将座上の「エンタープライズ2」は魚雷3本と爆弾7発を喰らった。当初は米軍お得意のダメージコントロールのおかげで沈没は免れたかに見えたが、爆弾の命中のショックで航空ガソリンが漏れ出して、それに引火、大爆発を起こしたためについに放棄された。

 また空母「ホーネット2」は魚雷4本と爆弾2発を受け、最終的に自沈処分にされた。さらに空母の「レキシントン」も沈没はしなかったが、飛行甲板を破壊されたため戦闘の継続が不可能となった。

 こうして米第17任務部隊は事実上壊滅したのであった。そして米太平洋艦隊は、再び3ヶ月以上の間、攻勢を見合わせざるを得なくなった。

 


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