異次元世界大戦 独立艦隊海戦記(50/67)PDFで表示縦書き表示RDF


異次元世界大戦 独立艦隊海戦記
作:山口多聞



攻撃隊出撃!!中


 戦いはまず、米戦闘機隊と日本戦闘機隊との戦闘から始まった。上昇してくるF6F「ヘルキャット」に対して、双胴の「剣風」戦闘機がその重馬力と頑丈な機体に物を言わせて急降下した。

 最初米戦闘機隊のパイロットたちは、その機影を見て日本軍の新型戦闘機と考えた。しかしお互いにすれ違ったところで、ようやくその機体が紛れもないP38戦闘機であるのがわかった。

 この反航戦では、お互いが高速ですれ違ったために被弾機こそ出たが撃墜された機体は皆無だった。だが、編隊を組んで上昇していたF6F戦闘機のかなりの数が編隊を崩してしまった。

「ガッデム!!卑怯なジャップめ!!」

「俺たちの国の飛行機を使いやがって!!」

 気勢を制されたアメリカのパイロットたちは、すれ違ったP38に向かって悪態をついた。

 この時、97機いたF6Fの内の凡そ3分の1が急降下していたP38戦闘機の追跡に回り、残る機体は体制を立て直して上昇を再開した。

 そこへ今度は上から零戦隊が襲い掛かった。ただし零戦隊はF6Fに向かっての急降下を途中で止めて、旋回をし始めた。この行動に米軍パイロットは首を捻ったが、まもなくその答えが彼らの目の前で炸裂した。

 突然空中で数十の爆発が発生し、まるでタコの足の様な火の線がF6Fに襲い掛かった。

「うお!!」

「なんだ!!」

 米戦闘機隊のパイロットは、またもや日本軍が行なった予想外の攻撃に大きく取り乱した。再び編隊を崩したり、上昇をやめてしまう機体が続出した。

 この時零戦隊が使ったのは、日本海軍独自の兵器である空対空爆弾の3号爆弾であった。この爆弾は、いわば航空機用三式弾と言える爆弾で、敵機の頭上で炸裂した爆弾の内部に仕込まれたリンを含む弾子が網のように敵機を包み、撃墜または撃破する兵器である。

 弾子は飛び出ると四方八方に煙を引きながら飛び散るので、搭乗員達は別名タコ足爆弾と呼んだ。

 ただし、見た目は派手だが60kgの小型爆弾であるから1発あたりの破壊力はタカが知れている。おまけに信管は時限信管であるから精度も高くない。だから下手な鉄砲数撃てば当たるの論理で、多数の爆弾を一斉に投じないと戦果は覚束なかった。

 この時は米戦闘機隊が密集していたおかげで、撃墜5、落伍3、撃破4とそれなりの戦果を上げられた。もっとも、その実際の戦果以上に大きかったのが、敵戦闘機が一時的にせよ動きを乱した所であった。

 そこを逃さず、28機の零戦が再び急降下して襲い掛かった。およそ2,5倍の敵であったが、烏合の衆と化している今なら互角に戦えた。

 F6Fの後ろに回りこむと、零戦隊はその必殺の武器である20mm機銃を次々と叩き込んだ。中には試験段階であった30mm機銃を搭載していた機体もあり、その弾を喰らったF6Fはすさまじい打撃を負った。

 この空戦で、零戦は5機を損失したが、F6F14機を撃墜し8機を落伍させ10機以上に被弾を確認した。

 既に半数近くが撃墜されるか戦闘不能に陥ったF6F戦闘機隊であったが、残存する機体は遮二無二爆撃隊へと突進した。そしてそこで彼らが見たのは、またも見慣れたアメリカ製の機体が日の丸をつけて悠然と飛行している様子だった。

「畜生!叩き落してやる!!」

 米戦闘機隊はフルスロットルで、攻撃隊の中でも一番目立つB17爆撃機に襲い掛かった。しかし彼らを待ち受けていたのは、日本や独逸の戦闘機パイロットを苦しめた防御銃座からの砲火だった。

 上昇してくるF6Fを認めると、早速18機の下部銃座が一斉に銃撃を開始した。

 さすがに頑丈なF6Fであるから、被弾しても早々墜落する物ではない。逆にお返しとばかりに「米山」に向けて翼内に持つ6挺の12,7mm機銃で攻撃を開始した。

 だがここで一部の米軍パイロットは目測を謝ってしまった。さらに、銃撃後の回避運動に切れがなく、側面や尾部、機首の銃座に撃たれて被弾する機体が続出した。さらに1機に集中的に攻撃する方法でなく、各機がバラバラに銃撃をしたために、「米山」爆撃隊はほぼ全機が被弾こそしたものの、投弾前に撃墜された機体は2機に留まった。

 そして米艦隊に近づくと、高高度からの誘導爆弾攻撃を行う「米山」は高度をそのまま維持し、1式陸攻や「豪山」といった低空からの雷撃や反跳爆撃を行なう機体は高度を下げた。

 この時「双山」(A20ハボック)2機と、1式陸攻3機が追いついてきたF6Fに撃墜されてしまったが、残る機体は突撃を敢行した。

「全兵器使用自由!!オープン・ファイア!!」

 戦闘機隊の防御網を突破した攻撃隊に向かって、米艦艇の対空砲火が一斉に撃ち方を始めた。

 頑丈な米国製の機体を多用しているとは言え、墜落しない飛行機などこの世に存在しない。確かに日本製の機体に比べて被弾に強かったものの、さすがに1機、2機と限界に達して海上に叩きつけられる機体が発生した。しかしそれでも彼らは攻撃を止めるわけにはいかなかった。

「投下!!」

 先陣を切って突入した「双山」が、輪陣形外縁で対空砲火を撃ち上げる駆逐艦に向かって、2発の250kg爆弾を投下した。

 ピシャ!ピシャ!

 子供がやる石を使った水切り遊びのように、爆弾が海面を飛び跳ねる。1発は敵艦手前で沈んでしまったが、もう1発は敵艦中央部に直撃した。

 ドグワ―ン!!

 敵駆逐艦の煙突付近に命中した爆弾が炸裂した。そして数秒後には搭載していた弾薬が誘爆したらしく、小規模な爆発を起こした。艦中央部の缶室に被害が及んだらしいその駆逐艦は、みるみる行き足が遅くなっていき、艦隊から落伍した。

「まずは1隻。」

 その戦果を見届けた「双山」のパイロットは呟くように言った。

 それとほぼ同様の光景が、艦隊の輪陣形外縁部で起きていた。「双山」や「豪山」が次々と駆逐艦や軽巡に対して反跳爆撃を行い、たいした装甲を持たぬ両艦艇は、次々と戦闘不能、もしくは火力半減などの大打撃を受けた。

 しかし、両機種はそれより内部の重巡以上の大型艦、特に空母には全く近づこうとさえしなかった。

「一体何を企んでいるんだジャップ!?」

 艦隊司令官のミッチャ―中将は、本来いの一番に狙うべき空母に全く近づきさえしない日本の攻撃隊に、不審の目を向けていた。

 一方その頃、上空5000mを飛行する「米山」爆撃機では、爆撃手が滑空爆弾の誘導装置の電源を入れ、さらに爆弾倉の扉を開いて攻撃を開始せんとしていた。

「全機投下用意よし!!」

「誘導装置異常なし!!敵艦艇捕捉!!」

「ようし、誘導爆弾投下用意!!」

 「米山」爆撃機1番機機長の竹田が叫ぶ。周囲の空には、そこまで多くはないが散発的に対空砲火が撃ち上げられている。その中を、彼はしっかりと操縦桿を握って操縦する。

 そして。

「投下!!」

 爆撃手が投下スイッチを押す。その途端、ガコンという音が響き、機体が一気に軽くなった。


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