攻撃隊出撃!! 上
ガダルカナル島奪回を目指す米軍機動部隊に対して、日本側はガ島をはじめとする各地の航空基地から米機動部隊と米輸送船団に攻撃をかけた。しかし、米艦隊の対空火力は大きく増強されており、損害に対して戦果は大きくなかった。
そんな中で、ラバウル北飛行場に展開する特試航空隊の「米山」爆撃隊は出撃準備に掛かっていた。この時のため、整備兵たちが和訳されたマニュアルを元に、各機体は徹底的に整備されていた。
本来、こうした多発機の整備は難しい。エンジンの出力を併せるのに苦労するからだ。だが、整備兵達は良くこの問題を乗り越えた。
18機のB17こと「米山」爆撃機が発するエンジン音で、ラバウル北飛行場は満たされていた。さらにP38こと「剣風」、B25こと「豪山」、A20こと「双山」も発動機を回して出撃準備に掛かっていた。
戦闘機30機、中型爆撃機47機、大型爆撃機18機の計95機からなる攻撃隊は、米機動艦隊をその目標にしていた。
「早朝の偵察の結果では、米機動部隊はガダルカナル島東南300km海上を遊弋中である。その後方150kmには輸送船団の存在も確認されているが、我々はとにかく制空権確保のために、米機動部隊を叩く。」
隊長の竹下大尉が、集合した搭乗員たちの前で訓示を述べる。
「これまでに出撃した攻撃隊の損害から考えて、米機動艦隊の対空火力はそうとう強力だと考えられる。我々自身も大損害を覚悟しなければならないだろう。だが俺は敢えて言おう、生きて帰ってこい。例え撃墜されても脱出して救助を待て。飛行機の代わりは用意できても、お前らの代わりは用意できないからな。以上だ。」
「敬礼!!」
搭乗員たちが一斉に敬礼をする。用意された壇上で演説していた竹下も答礼する。
「解散!!全員搭乗せよ!!」
命令を受けた搭乗員たちが一斉に愛機に向かって走り始める。竹下も壇上から降りて、自分の「米山」に向かって歩く。
彼の「米山」は既に暖機運転も済ませて、いつでも発進できる態勢が整っていた。
「隊長、エンジン、機体共に異常なし。いつでも発信できます!」
つなぎを油で真っ黒に汚した整備班長が、竹下に敬礼しながら言った。
「ありがとう。」
整備班長に笑顔で敬礼すると、彼機体前部のハッチから乗り込んだ。そして操縦席に上がる。
「隊長、エンジン、機体共に異常なし。他の機体も異常なさそうです。」
機長席に座る竹下に、副操縦士の吉田少尉が声を掛ける。
「おう。」
「出撃予定時刻まで後5分です。」
吉田の声を聞き流しながら、竹下は機内通話装置のスイッチを入れた。
「こちら機長だ。各部状況報せ?」
すぐに返答がなされた。
「こちら爆撃手、異常なし。」
「上部銃座異常なし。」
「側面一番銃座異常なし。」
「側面2番銃座異常なし。」
「下部銃座異常なし。」
「尾部銃座、異常なし。」
「ようし・・・全て異常なしだな。」
あとは指揮所に発進開始を示す旗が上がるのを待つだけである。そして3分後、それは掲揚された。
旗が上がるのを確認すると、まず滑走距離が短くて済む護衛役の「剣風」戦闘機が離陸を開始した。つづいて中型爆撃機である「豪山」と「双山」が離陸を行なう。それら先行機は、事故を起こす事もなく、無事全機空中に浮かび上がった。
その光景を見届けた所で、竹下は機体を前進させた。次は彼らの番である。
「ようし、行くぞ!!」
「はい!!」
滑走路の端に着くと、彼はスロットルを全開にした。4発のライトサイクロンエンジンの出力が最大にまで上昇し、「米山」の機体は加速していく。だが重い誘導弾を腹の中に抱えた機体は、双発爆撃機のようには浮かび上がらない。
滑走路の7割を過ぎたところで、ようやく揚力を得て機体が浮かび上がり始める。竹下と吉田はその瞬間を逃さず、操縦桿を引いた。
間もなく、機体が浮かび上がった。失速しないように注意しつつ、2人は機体を上昇させていく。
「米山」の機体は安定し、速度を上げ上昇していく。
竹下は操縦を一端吉田に任せて、機内通話装置で尾部銃座の隊員に問うた。
「よし!こちら機長だ。尾部銃座、後続機の状況を報告せよ!」
「こちら尾部銃座、現在3番機が滑走中・・・今離陸しました。異常なしです。」
「了解。」
18機の「米山」が発進するまでには少しばかり時間が掛かる。そのため、先行機はしばらくの間空中で待機する。
「米山」の最後尾機が発進し終わったのは、それからおよそ20分後であった。18機の「米山」は空中に集合すると、3機ずつの小隊を組み、先に飛び立った「剣風」、「豪山」、「双山」とともに進撃を開始した。彼らはこの後、ブーゲンビル島から発進してくる攻撃隊と合流する予定であった。
ブーゲンビル島、ブイン基地から発進してくる予定の機体は零戦28機、1式陸攻10機、99艦爆8機であった。
数時間後、ガダルカナル島沖に遊弋する米機動部隊のレーダーが多数の機影を捉えた。
「敵機か?」
レーダー室からの報告を受けた、機動部隊司令官ミッチャ―中将は参謀長に聞いた。
「方位からしてそれ以外に考えられません。」
「わかった。ならすぐに迎撃戦闘機隊を向かわせろ!それと各艦は対空戦闘準備だ!!」
「イエッサー!!」
日本機接近の報を受けて、米機動艦隊の動きは活発となる。対空砲や対空機関砲に兵士達が取り付き、現れるであろう日本機を迎え撃つ。また空母の艦上では待機していたF6F「ヘルキャット」戦闘機が次々とエンジンを始動させて、発艦にかかる。
「日本機は機数およそ150!速力200ノットで接近中!」
レーダー室から、スピーカーを通してさらなる情報がもたらされる。
「150か・・・今まで最大規模だな。」
ミッチャ―が呟いた。
「おそらくこの方面の機体を掻き集めたのでしょう。」
「迎撃の戦闘機は何機上がっている?」
「既に48機が上空に下ります。また、各空母に待機していた36機もまもなく発艦します。状況によってはさらなる増援も行ないます。」
「合計84機か・・・少し不安だ。残った機体も急いで上げさせろ!」
150機全てが戦闘機でないとはいえ、半分の数の戦闘機では相当機数が潜り抜けてくるかもしれない。ミッチャ―は万全を期すことにした。
「了解!!」
それから間もなく、格納庫内に残されていた「ヘルキャット」全てに出撃命令が下された。最終的に米機動艦隊が出撃させた「ヘルキャット」は97機であった。
20分後、米戦闘機隊は日本の攻撃隊を確認した。
「タリホー・ターゲット!!(敵機発見!!)」
敵機発見を合図に、「ヘルキャット」は次々と機体下部に付けていた増槽を投棄した。そして突撃を開始した。
「ゴー・アタック!!(突撃!!)」
こうして激しい空戦は始まった。
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