異次元世界大戦 独立艦隊海戦記(48/67)PDFで表示縦書き表示RDF


異次元世界大戦 独立艦隊海戦記
作:山口多聞



新兵器投入


 第二次世界大戦は、後の世に言うハイテク兵器が登場した戦争でもあった。特にドイツはその先進国と言える存在であり、ジェット機、音響追尾魚雷、熱探知式の地対空ミサイル、無線誘導による滑空爆弾を開発し、実戦配備している。

 一方、日本の陸海軍でもこうした兵器を全く開発してないということはなかった。例えば音源探知による誘導兵器の開発は開戦前後から始まっていたし、また航空機を落とす殺人光線も本気で研究されていた。しかしながら、その規模はドイツなどから比べれば劣っていた事は咎めない。電探さえ、開発当初は制式化を危ぶまれていたのだ。幸い電探は、独立艦隊で行なわれた試験で、霧中や多島海での航行など戦闘時以外における使用にも有用であるとして、開発を続けることが出来た。

 しかし、その他のジェット機や誘導兵器などの研究は進んでいるとは言えなかった。一応陸軍ではロケットは開発されていたが、それは主に対地攻撃用の撃ちっぱなし方式であり、ハイテク兵器には程遠かった。

 そんな中で、ドイツ軍が1942年8月にスエズ運河を攻略し、さらに日本海軍がインド洋の制海権を握ると、大きく状況が変わった。それまで潜水艦、もしくは長距離輸送可能な飛行機で細々と人材や、わずかな資料を交換するしかなかった両軍は、大量の物資交換が可能となったのである。

 日本からはドイツで不足している生ゴム等の戦略物資、さらに「火星エンジン」や試作段階の「誉」エンジン、酸素魚雷、航空魚雷、擲弾筒、零式水上観測機や二式飛行艇などが輸出された。また日本では生産中止となった液冷式三式戦闘機「飛燕」や同じく液冷式艦上爆撃機「彗星」も輸出されている。

 零式水上観測機や二式飛行艇は、当時日本の航空機技術の中で特に抜きん出ていた水上機、飛行艇分野を象徴する機体であった。この2機種はエンジンや武装に改良が加えられた後、ドイツやイタリアでライセンス生産されている。

「飛燕」はもともとメッサーシュミット戦闘機と同じエンジンを積んだ戦闘機だったが、その大きさは一回り大きく、さらに航続力も長かった。そのため、この機体を見たメッサーシュミット博士は、「全く別物であり、エンジンさえ動けばMe109を凌駕する」と言わしめた。そして後のMe109戦闘機K型の改良に役立てられたとされている。

「彗星」は、日本ではエンジンの不調に泣かされ、早々に空冷エンジンに代えられてしまったが、ドイツでは自国製エンジンに改修した上で、フィーゼラー社とハインケル社でライセンスされ、旧式化したJu87「スツーカ」の代替機として戦場に投入されている。

 一方、ドイツからは20mmマウザー機関砲やパンツァーファウストといった即実戦投入可能な兵器類に加えて、He280ジェット機や音響魚雷の実物、さらにミサイルの誘導装置の図面に加えて、その実物も輸入された。

 これらを調査した日本軍技術陣は、ドイツの高い技術力と、それを生産し実戦配備できる工業力に舌打ちしたとされている。

 日本軍はこれらの中で、特に有用で開発が短時間で終わらせられると見込まれた対戦車ロケット弾、音響魚雷と無線誘導の滑空爆弾の開発を優先して行なうこととした。これらは日本でも研究が行われた物の延長上の物であったが、早期の開発が見込まれた。

 この内、対戦車ロケット弾は昭和18年2月に完成している。また音響魚雷は誘導装置の開発に苦しんだが、昭和19年2月に実戦投入された。残る無線誘導滑空弾は、誘導装置自体は戦前から研究されていたから開発は順調に進んだ。ただし、日本の物は工業レベルの遅れからか、ドイツより一回り大きくなった。

 この新型誘導滑空爆弾は、三式対艦誘導弾と名付けられ、早速実戦投入されることとなった。ただし、前記したとおり大きな爆弾になったため、搭載できる航空機が限られた。この時点では一式陸攻のみであったが、一式陸攻に積むと爆弾倉からはみだし、大幅な速度低下を招いた。そこでこの爆弾を、開発中の「連山」が実戦配備されるまで搭載することとなったのは、ペイロードに余裕があり、なおかつ大型の爆弾倉を持つ鹵獲したB17となった。

 
 特試航空隊が最前線であるラバウルへと次々と進出したが、その中のB17はその大きさも去ることながら、機首に付いている突起が人々の目を引いた。

「本当にあの爆弾を今回の作戦で使うのかい?」

 その突起を2人の男が見ていた、1人は大尉の階級章を付けた飛行服の男で、もう1人は3種軍装を着た技術大尉であった。

「もちろんです。三式誘導弾の有効性が確認されれば、今後の戦争が大きく変わります。」

 なんとなく嫌そうに言った飛行服の大尉、「米山」重爆隊隊長兼1番機機長の竹下大尉の言葉に対し、三式誘導弾の開発に携わった1人である技術将校の河野技術大尉は自信に満ち溢れた表情で言った。

「そうは言うけどよ、演習じゃ随分と外れたじゃないか。俺はこんな信頼の置けない兵器を前線に出すのは危険だと思うがな・・・」

 竹下大尉は、今回使うことになった新兵器にあまり信用を置いていなかった。

 三式誘導弾をこれまでに演習でも何回か投下してきたが、どうも開発されたばかりの誘導装置に無理があったのか、まず母機から発せられる無線の電波を拾ってちゃんと誘導される爆弾が50パーセントも出た。さらに電波を拾って誘導されても、搭乗員がまだ扱いなれていないために、その内命中するのは20パーセントだった。

 そのため、1回飛行場近くの標的に対して投下した誘導弾が、あろうことか女子飛行兵の宿舎に突っ込むという事故が発生した。幸い飛行兵は訓練で外に出ていたため、死傷者は奇跡的に1人も出なかった。しかし、宿舎は滅茶苦茶になってしまい、それ以来「米山」搭乗員の女子兵からの評価は地を這うレベルだった。

「大丈夫ですよ。これまでの失敗から誘導装置には何回も改修を加えています。現に最後の演習じゃ大分良くなっていたでしょ?」

 河野はそう言うが、それで竹下の心配を払拭する事は出来ない。

「そうは言うがな、やっぱり信頼できないよ。こいつを使うくらいなら、やりなれた水平爆撃をした方がマシだよ。」

「そうは言いますが、水平爆撃を対艦爆撃に使っても命中率が極端に低いのは大尉も良く承知でしょ?確かに三式誘導弾の信頼性はまだ低いかもしれませんが、こいつがしっかり誘導されれば、その命中率は水平爆撃とは比較にならないくらい高まります。」

「だからその、しっかり誘導されるかが心配なんだよ!」

 現場で戦う兵士にとって、使う武器の信頼性が即運命を決める可能性が高いのだ。それなのに、今回はその信頼性が低い兵器を使うのだ。竹下が憂鬱になるのも道理であった。

「御安心を・・・我々が徹夜で整備します。必ず8割の誘導弾がちゃんと誘導されるようにします。」

 自信を持ち、強い意志を込めてそういう若い技術大尉に、竹下は冷ややかな視線を浴びせつつ、一言こう言った。

「とにかく頼むよ。」



 御意見・御感想お待ちしています。
 今回登場した三式誘導弾の元ネタはドイツ軍のフリッツXという実在兵器です。
 それと「米山」をはじめとする機体の名称は、羅門祐人先生著の「独立愚連艦隊」を参考にしています。











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