第二次MO作戦 上
第二次MO作戦は1942年12月5日に発動された。最初の対決は、先発した連合艦隊指揮下の小沢中将率いる第一機動艦隊(一部第二機動艦隊を含む)とラバウルを始めとする陸海軍基地航空隊によるポート・モレスビー飛行場への空襲から始まった。
両部隊合わせて攻撃隊の総数は約600機。この内空母艦載機は最新鋭の零戦54型、「彗星」、「天山」であった。一方、ポート。モレスビー配置の米豪戦闘機は各種機体合わせて計300機であった。
この双方あわせて900機による大空中戦によって、日本軍は約70機、米軍機は150機がそれぞれ撃墜された。両軍合わせて220機が起こした火災の煙により、ポート・モレスビーの空は黒く染まった。
空中戦を潜り抜けた攻撃機は、対空砲火をものともせず、ポート・モレスビーに建設されていた3箇所の飛行場に爆弾の雨を降らせ、その全てを使用不能に追い込んだ。これによってポート・モレスビーの制空権は日本側の物となった。
しかし、米豪軍は空襲を見越して爆撃機を既に密林の奥に作った掩蔽豪に隠すか、オーストラリアやソロモン海に浮かぶウッドラーク島の飛行場へと退避させるかしており、航空戦力の殲滅と言う点では不十分な戦果であった。
そして米軍側による反撃も直ぐに始まった。日本軍がポート・モレスビーを空襲している最中、ウッドラーク島から来襲した米軍機に襲われた。この時来襲した米軍機は約100機で、その内訳は60機がP38戦闘機で、40機がB25爆撃機だった。
日本側は第二次ミッドウェイ海戦の戦訓から、直掩戦闘機を多く上げていたが、それでも総計40機で、米軍攻撃隊を止められる数ではなかった。
爆撃機40機はほとんど無傷で戦闘機隊の防衛網を突破した。しかし、すぐに次の反撃が行なわれた。この時第一機動艦隊には戦艦「比叡」、「霧島」、重巡「利根」、「筑摩」、「熊野」、「三隈」が随伴していた。その6艦の主砲が米爆撃機へ向けて轟然と火を噴いた。
この時、日本側は先日ガダルカナル奪回作戦で独立艦隊が試験的に行なった三式弾の射撃データを元に砲撃を行なった。しかし米爆撃機隊の乗員で、日本海軍が主砲用の対空弾を開発したと知る者はいなかった。
結果、三式弾の射撃によって17機のB25が撃ち落された。これは恐らく戦艦等が航空機を始めて大量撃墜した瞬間であった。
しかし、主砲の再装填には時間が掛かる、さらに残存する米爆撃機は被害拡大を防ぐ為に編隊を解いてバラバラに突っ込んで来たために、結局三式弾の斉射は一度きりだった。
だが日本側の対空戦闘の切り札はまだまだあった。今回の作戦には、日本が誇る98式10cm高角砲を主砲とする最新鋭の「秋月」型対空駆逐艦3隻も編成に加わっていた。
独立艦隊の実戦試験を元に開発された最新鋭の2式高射装置を搭載した3隻の対空攻撃能力はこれまでの日本艦に比べて遥かに高いレベルで、この時も3隻合わせて8機を撃墜している。
また、その他の艦艇も増強した対空火器を空に向けて一斉に放ち、4機を撃墜している。しかしここまでであった。残る11機は次々と艦艇に向けて投弾した。
この時米軍のB25が行なったのは水切り遊びの原理を応用した反跳爆撃だった。これは今回、米軍でも始めての試みで、また日本側も初めて味わった爆撃方法だった。
投弾された爆弾の内、半分は信管や波の影響を受けて不発や海中に突っ込んでしまった。やはり初めての方法だけに不慣れな部分が出てしまったのだ。
しかしキッチリと命中した弾もあった。まず2発が戦艦「霧島」に命中したが、これは舷側装甲に食い止められ、最小限の被害で済んだ。さらに1発が重巡「三隈」に命中し、後部砲塔群に被害を与えたために、「三隈」は戦線離脱となった。そして何より痛かったのは空母「飛鷹」の被弾だった。
空母は舷側のスポンソンという張り出し部分に多数の対空火器を備えているが、海面から高さがあり、この時は超低空で飛んで来たB25を阻止する事が出来なかった。
結果、「飛鷹」は左舷後部に500ポンド(約224kg)爆弾1発を被弾してしまった。これが正規空母だったら被害も小さく済んだかもしれないが、「飛鷹」は正規空母に性能は準じているとは言え、客船改造空母である。船体強度はそこまで強くない。そのため爆弾は舷を突き破って艦内で炸裂し、機関室と格納庫に被害を与えた。これにより、「飛鷹」は最高速力が16ノットまで減じ、さらに航空機の着艦が不可能となったために、戦線離脱となった。
こうして日本機動艦隊は、米軍攻撃隊の半分近くを撃ち落したものの、空母1隻と巡洋艦1隻の戦線離脱という代償を支払わされた。
そしてこの時、独立艦隊は連合艦隊機動艦隊の後方約300kmまで進出していた。
新しい旗艦となった戦艦「土佐」の艦橋にも米軍機による第一機動艦隊空襲を受けるの報が届いた。
「米軍機の攻撃で「飛鷹」が中破、戦線離脱か・・・あまり幸先の良いスタートではないな。」
新司令長官である近江中将が通信室から届いた報告を一瞥して呟いた。
「しかしポート・モレスビーの飛行場は潰しましたから作戦は成功へ向かいつつあるのでは?」
今回参謀長として就任した長谷川雷太大佐が意見する。彼はごく最近まで大本営勤務の人間であった。そのため、どこか戦場の緊張感をわかっていないように近江中将には感じられた。
「参謀長、ただポート・モレスビーの飛行場を撃破しただけではいけないんだよ。報告によれば、機動艦隊を襲った米軍機はポート。モレスビーとは逆の方向から来たそうじゃないか?となると、ソロモン海に浮かぶ島のどこかに米軍が基地を築いている可能性が高い。つまり、我々は背後の見えない敵に怯えなければいけないわけだ。」
今回の作戦では、機動部隊の攻撃隊はソロモン海から発進し、スタンレー山脈を越えてからポート・モレスビーを攻撃する方法を採っている。これはオーストラリア本土から来る米攻撃隊を警戒しての処置だった。ところが、それにもかかわらず米軍機の襲撃を受けてしまったのは、連合艦隊の偵察と情報不足だった。
「では我々は偵察を厳にするのに加えて、それら島々の飛行場を潰すべきなのでしょうか?」
その言葉に、近江は首を振った。
「我々の艦載機だけでは力不足だ。それに加えて敵機動部隊が出撃したと言う情報もある。基地攻撃中に艦載機の爆撃を受けたら話しにならん。だからまず偵察を重点的に行なう。それで敵機動部隊が攻撃可能圏内にいなければ基地攻撃を行う。もしどちらとも発見できなければ、このまま予定通り第一機動艦隊の後を追う。」
「わかりました。」
長谷川が敬礼して行動に移った。こうして独立艦隊も動き始めた。
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