異次元世界大戦 独立艦隊海戦記(30/67)PDFで表示縦書き表示RDF


異次元世界大戦 独立艦隊海戦記
作:山口多聞



戦いの終焉


 独立機動艦隊の攻撃隊が米機動部隊に攻撃を始めた数分後、独立機動艦隊にも米機動部隊を発進した攻撃隊が襲い掛かった。

 戦闘はまず直掩の零戦隊と攻撃隊の護衛戦闘機であるF4F「ワイルドキャット」の空中戦から始まった。この時米戦闘機隊は戦訓から2対1、いわゆるサッチ・ウィ−ブ戦法で零戦に挑んできた。しかし、零戦とF4Fの数の差が30対40であり、さらに零戦自体も馬力をアップした33型であったため、結局この空戦の結果は3対12と零戦の圧倒的勝利となった。

 しかし敵戦闘機には圧勝できたが、艦爆と艦攻の阻止には失敗した。

 続いて米攻撃隊に牙を向いたのは打撃艦と巡洋艦の主砲だった。これらの艦艇には今回対空用の3式弾も積まれていた。40cm砲8門、20cm砲4門、15、5cm砲4門から打ち出された計16発の3式弾は、米軍が密集体系を解かなかったという幸運に助けられ、艦爆4機、艦攻3機を血祭りに上げた。

 しかしやはり巨大な主砲では限界があり、一斉射撃できたのはその一回だけで、仲間の仇討ちとばかりに米攻撃隊は猛然と突撃してきた。

 そして彼らは輪陣形内の艦艇でひときわ目立つ2隻の空母の内の1隻を見て仰天した。

「こいつは「レキシントン」だ!!」

 旧米空母「レキシントン」こと帝国海軍空母「翠鶴」はこれまでにも戦闘には参加したが、米軍相手にその姿を見せたのはこれが始めてであった。

「この泥棒野朗が!!」

 米攻撃隊のパイロットは激高し、艦爆隊は「翠鶴」目掛けて一斉に急降下した。また艦攻隊も「翠鶴」を狙わんと海面スレスレに舞い降りた。

 もちろんそれに対して何も行なわれないはずがない。輪陣形を形成する各艦から一斉に対空砲撃が開始された。日本海軍の対空射撃指揮装置は米軍の物に比べて時代遅れで、さらに近接防御火器や大口径機関砲に恵まれていなかった。そのため相対的に対空攻撃能力は下がっているのだが、独立機動艦隊は一味違った。

 独立機動艦隊は新兵器の実験などもその任務の一環となっている。だから電子機器なども実戦試験の名でプロトタイプが配備されている。そしてこの時2隻の打撃艦と巡洋艦には試製2式滞空射撃指揮装置が搭載されていた。

 2式対空指揮装置は、昨年竣工した新鋭の「綾瀬」級防空軽巡洋艦に搭載されている99式対空指揮装置の簡略版として設計しなおされた物で、原型の99式や米軍の射撃指揮装置よりは劣る物の、これまでの98式対空射撃指揮装置が速度350km程度の航空機を捕らえるのが限度であったのに対し、一気に450kmまであげている。

 さすがに戦闘機を追うのは無理だが、雷撃機なら十分な性能であった。

 また高射機関砲自体もようやく量産が始まった試製2式40mm機関砲を各艦が積んでいた。これによって独立機動艦隊は日本海軍の中でもかなり対空攻撃のレベルが高い艦隊となっていた。

 この猛烈な対空砲火によって、3機の艦爆と2機の艦攻が突入前に撃墜された。また、米搭乗員を最も驚かせたのは、彼らが狙った「翠鶴」ともう1隻の空母である「天城」に搭載されていた新兵器であった。

「両舷噴進砲発射用意!!」

 新設された砲座の射撃指揮所で指揮官が叫ぶ。

「目標直上の急降下爆撃機!!撃てー!!」

 6機の艦爆が同時に急降下を掛けた瞬間、艦首よりに設けられたスポンソンの砲座から、凄まじい砲煙を残して、多数の噴進弾が発射された。

 噴進弾とは言わばロケット弾である。もちろんミサイルのような誘導を持たない無誘導弾だ。同じような兵器としてはソ連のカチューシャロケットが有名である。

 独立艦隊が搭載していた噴進砲は1弾の口径が12cmで、これを28連装としたものだった。この多数のロケットで面での敵航空機撃墜を図ったのだ。

 実際かなりの効果があった。一斉に尾を引きながら飛んでくる物体に米搭乗員は仰天し、恐怖のあまり狙いも付けずに爆弾を投下した。結果「翠鶴」には1発も被弾しなかった。

 もっとも、良い事ばかりではなかった。噴進砲は発射時に凄まじい爆煙を残したために他の高角砲や機関銃の発射がしばらく中断となった。また敵に与えた恐怖は大きかったが、撃墜に至ったのは1機のみで、さらに噴進弾の1発あたりの重さがあり、再装填に時間が掛かった。

 ただし米軍のパイロットたちは2隻に搭載された新兵器を恐れてか、それ以後積極的な攻撃を控えてしまった。代わりに目標とされたのが2隻の打撃艦だった。

 この2隻は昨夜ガダルカナル島を砲撃し、つい数時間前艦隊に合流したばかりであった。艦隊内では比較的大きく、巨大な砲塔が目立ってしまった。

 もちろん2隻とも必死の操艦を行い爆弾と魚雷をかわしていった。しかし、ネームシップの「背振」に対して、2番艦の「多良」は運から見放されてしまった。

 米軍機の目標となって10分後、ついに除けられず、後部甲板に1000ポンド爆弾1発を被弾してしまった。

 「背振」級は主砲こそ40cm砲を積んでいるが、基の船体は8000t級大型貨物船の設計を流用している。そのため船体強度は一応強化していたものの重巡程度の物しかない。その船体にこの打撃は痛かった。これがもし500ポンド爆弾であったか、命中が前甲板の砲塔だったらなんとかなったかもしれない。

 後部甲板での爆発により対空火器の4割が使用不能となり、さらに煙突にも被害を受けたために速力が一気に半減した。

 米軍機のパイロット達がこのチャンスを見逃すはずがなかった。残弾を有する機体が一斉に「多良」に殺到した。速力が半減し、対空砲火も減った同艦に逃れる術は無く、最終的に魚雷2本、爆弾3発を受けた。

 商船が元となっている艦がこれほどの打撃に耐えられるはずが無く、まもなく艦首から沈み始め、30分後には沈没した。

 打撃艦「多良」の沈没と前後して米軍機は引き上げ、米軍の最終的な戦果は「多良」撃沈のみだった。他にも複数の戦果を上げたと報告したが、いずれも誤報であった。

 こうして独立艦隊は貴重な艦船を1隻失ってしまったが、空母1隻を撃沈した上、米機動部隊は撤退したので、戦略的には勝利であった。

 この後独立艦隊はしばらくガダルカナル近海に留まったが、間もなく空母「隼鷹」と「飛鷹」を主軸とする第2機動艦隊が同海域に進出したため、トラック島に帰還した。



打撃艦「背振」型性能データ
全長180m 排水量1万6千t 速力31ノット
武装40cm連装砲2基4門
  10cm連装高角砲4基8門(98式のプロトタイプ)
  40mm連装機関砲4基8門
  25mm連装機銃8基16挺
  水偵3機(格納庫に搭載)

 八八艦隊計画用に製造された40cm砲塔、「長門」級戦艦の改装後に降ろされた砲塔の有効利用と、短期間で量産可能を目的とした打撃艦として設計された。建造費を浮かすために船体は大型高速貨物船の設計図を流用。イギリスのモニター艦に比べて航用性能がアップしたが、戦艦との砲撃戦は自殺行為。主に対地攻撃と空母護衛、巡洋艦以下の艦艇への攻撃を主任務とする。元ネタは羅門佑人先生のコスミック刊「独立愚連艦隊」の高速打撃艦「背振」級と経済界刊「独立日本艦隊」の戦艦「坂本」級。


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