異次元世界大戦 独立艦隊海戦記(29/67)PDFで表示縦書き表示RDF


異次元世界大戦 独立艦隊海戦記
作:山口多聞



攻撃!米機動艦隊


 翌朝、独立機動艦隊と米第17機動部隊は、双方共に通常よりも早い時間から偵察機を発艦させて索敵にあたらせていた。そして両軍共にほぼ同時刻に敵機動部隊発見の方がもたらされた。

「攻撃隊発進!!」

 この命令が桑名中将とハルゼー中将より下されたのもほぼ同時刻だった。独立艦隊からは艦戦42機、艦爆35機、艦攻29機が出撃した。一方の米機動部隊からは艦戦40機、艦爆48機、艦攻20機が出撃した。

 両軍の攻撃隊の数はほぼ拮抗していた。そしてやはり両軍とも1回の攻撃に稼動する全機を発進させた全力出撃だった。

 両軍攻撃隊は一路それぞれの敵を目指して飛んだ。

 そして先に攻撃を開始したのは日本軍攻撃隊だった。発艦時刻はほぼ同じだったが、巡航速度が若干勝る日本軍攻撃隊が先に到達したのであった。

「全軍突撃せよ!!」

 昨日に引き続いて攻撃隊を率いる若井大尉機から、突撃を意味するト連送が発進される。前方には海面上に航跡を残して疾駆する艦艇の姿が既に見えていた。

 その突撃する攻撃隊を止めんと、米軍のF4F「ワイルドキャット」が立ちふさがった。しかし攻撃隊の護衛に戦闘機を割いていたため、「ワイルドキャット」の数は22機と少なかった。旧式となりつつある零戦21型にさえ単機同士の性能では勝てないというのに、出力を1,5倍に強化した零戦33型、それも2倍の数の機体に勝てる道理などなかった。

 零戦隊と「ワイルドキャット」の戦いは短時間で終わり、「ワイルドキャット」の被撃墜数が17機、それに対して零戦の被撃墜数は2機であった。

 結局「ワイルドキャット」隊は日本攻撃隊を止められるぬまま壊滅した。

 そして邪魔者が消えた敵艦隊上空へと艦爆と艦攻が殺到した。それに対抗して、米艦艇から一斉に対空砲火が始まった。米17任務部隊の護衛艦の数が少ないのは既に記したが、それでも彼らの対空火力は強力だった。

 この時の米艦艇はこれまでの戦訓を踏まえて、多数の5インチ両用砲や40mm機関砲を積み込んでいた。さらに護衛艦の中には5インチ両用砲を主砲として8基搭載した「アトランタ」級軽巡の「ジュノー」もいた。

 これら艦艇から撃ち上げられる砲弾によって、空には無数の爆発煙が発生した。

 しかし日本海軍攻撃隊は思わぬ行動に出た。それまで整然と組んでいた編隊を分離し、各機バラバラで突っ込んできたのである。

 実はこれは独立艦隊のパイロット達が前回のインド洋海戦の戦訓を基に開発した戦法だった。インド洋海戦では旧式巡洋艦改造の対空巡洋艦によって味方機多数が撃墜されるか損傷を負っている。

 この攻撃失敗の理由を、パイロット達は編隊を組んだために狙い撃ちにされたと判断した。そこで今回は各機がバラバラに散って四方八方から攻撃する戦法を試みた。これなら敵も照準を付けるまでに時間がかかり、攻撃隊の損害を減らせると判断した。

 しかし米軍の電子技術恐るべし、彼らは日本軍より優れた対空射撃指揮装置を備えていた。それと連動した両用砲の威力は凄まじく、短時間で3機の艦攻を撃墜している。

 バラバラでの突入が必ずしも有効とはいえないことを早速露呈してしまった。もっとも、必ずしも無駄ではなく、人が人力で動かす機銃座の照準を惑わすにはかなり有効であった。また、今回は敵戦闘機を早いうちに撃滅できたために、戦闘機が敵艦艇に機銃掃射をして攻撃隊の突入を支援している。さらに、米軍は艦爆隊が「彗星」に更新されていることを知らなかったために、一部の砲や銃座はそのスピードについていけなかった。

 護衛艦の対空砲火を突破した艦爆と艦攻はとにかく敵空母に的を絞った。この2隻を沈められれば、ミッドウェイ以降悪化し始めている戦況を再び日本側に取り返せられるからだ。

 もっとも、2隻の空母だって沈められたくないから必死に操舵を繰り返す。特にハルゼー中将の旗艦であり、開戦以来のベテラン空母である「エンタープライズ」は艦長の的確な操艦もあって、最終的な被弾は前甲板に爆弾2発を喰らい中破したのみで、その後の応急修理によって短時間で航空機の離着艦が可能になっている。

 一方不運だったのはもう1隻の空母であった「レンジャー」である。「レンジャー」は条約期間中に建造された中型空母で、後の「ヨークタウン」級空母の建造に際し数々のデータを提供した、いわばその後の米空母の礎的存在だった。

 しかし、防御が弱く、さらに速度が若干遅いという弱点を今回の作戦で完全に突かれてしまった。まず急降下した「彗星」の500kg爆弾が甲板を貫通して航空機用燃料庫で爆発し大火災と大爆発を引き起こした。

 さらにその火災によって減じた対空砲火の穴を雷撃機によって攻撃され、左舷側中央部に集中的に3発の魚雷を被雷してしまった。

 2万tもない中型空母にこの打撃は重すぎ、結局「レンジャー」は被雷から40分後に船体が2つに割れて沈没してしまった。

 第17任務部隊の損害はその他に駆逐艦1隻が戦闘機の機銃掃射で小規模な爆発を起こし、そこに魚雷1本を喰らって航行不能となったために自沈処分された。

 また強力な対空砲火を浴びせた「ジュノー」も爆弾1発が命中し、後部砲塔群が全滅するという大被害を負っている。そして「ジュノー」は海戦終了後、エスピリット・サントへの帰還途中に日本海軍潜水艦「伊26」の雷撃を受けて大爆発、轟沈する事となる。
 

「やってくれるじゃないかジャップ!!」

 レンジャーが真っ二つになって沈むさまを眺めながら、ハルゼーは「エンタープライズ」艦橋でそう吐き捨てるように言った。

「だがこの借りは百倍にして返してやるからな!!ブローニング!!こちらの攻撃隊はどうした!?報告電はまだ入ってこないのか!?」

 ハルゼーはただそれだけが気になった。たとえ「レンジャー」を失っていても、敵空母2隻の打撃を与えられたのなら帳消しに出来る。

 しかしそれに対するブローニングの表情はあまりさえなかった。

「申し訳ありません。敵戦闘機の機銃掃射で通信用アンテナが損傷し、送信は出来ますが受信が出来ない状態となっています。現在修理中です。」

「だったら他艦に急いで問い合わせろ!」

「了解!」

 ブローニングは急いで発光信号によるリレーで無線受信可能な艦に情報を問い合わせた。

 そして間もなく攻撃隊から戦果報告が入ってきた。

「敵艦種不明大型艦1撃沈、空母1、巡洋艦1大破。その他数隻に損傷を負わす。」

 その報告はハルゼーを落胆させるのに充分な物だった。さらに帰還してきた攻撃隊の数も出撃時の3分の2にまで減っていた。

 その姿を見て、流石のブル・ハルゼーも撤退と言わざる得なかった。


 御意見・御感想お待ちしています。











ケータイ表示 | 小説情報 | 小説評価/感想 | 縦書き表示 | TXTファイル | トラックバック(0) | 作者紹介ページ


小説の責任/著作権は特に記載のない場合は作者にあります。
作者の許可なく小説を無断転載することは法律で堅く禁じられています。




BACK | TOP | NEXT


小説家になろう