異次元世界大戦 独立艦隊海戦記(24/67)PDFで表示縦書き表示RDF


異次元世界大戦 独立艦隊海戦記
作:山口多聞



ガ島攻防戦 出撃編


 独立機動艦隊がラバウルに進出した2日後、遅れて特試航空隊もラバウル北飛行場に進出してきた。この飛行場は現在台南空をはじめとする主力戦闘機隊が進出している東飛行場からは離れた位置にある予備飛行場で、実験部隊ですぐに移動してしまう可能性がある特試航空隊に今回あてがわれたのだった。

 その特試航空隊が出撃準備を完了させしだい、独立機動艦隊はガ島方面の米機動部隊撃滅と現地米軍基地設備破壊のために出撃する予定だった。

 ラバウルに停泊している間に、情報が断片的に入ってきた。それらは主にラバウル基地航空隊所属の新鋭偵察機「暁雲」によってもたらされた。「暁雲」は陸軍の100式司偵の海軍用機で、使用機器に若干の違いがある以外はほぼ同一の機体であった。そのため現段階で帝国海軍最速の時速600km強で飛行する事が出来た。

 その「暁雲」が集めてきた情報に寄れば、敵艦隊の内輸送船団は早々と退避し、現在ガ島近海にいる艦隊は確認されていなかった。目指す敵機動艦隊も航空機の補充を行なっているためか、戦線を離れていた。しかし、陸上基地の方には動きが見られた。

 ガ島を占領した米軍は、その機械力に物を言わせて、空襲と艦砲射撃で破壊したルンガ飛行場を短期間で修理し、ヘンダ−ソン飛行場と名付けた上で使用可能にしていた。ちなみにヘンダ−ソンとはミッドウェイ海戦で戦死したパイロットの名前だ。

 当初米軍のガダルカナル島への航空機の派遣は、8月20日に第一陣31機を護衛空母「ロングアイランド」で送り込む予定だった。

 しかし、ラバウルに停泊中の日本機動艦隊(独立機動艦隊)が確認されると、一端撤退する機動艦隊から戦闘機と艦爆の一部を抽出して送り込んだ。その戦力はF4F戦闘機24機にSBD艦爆12機だった。さらにその翌日にはPBYカタリナ飛行艇も複数派遣されていた。また数日後には長距離のフェリー飛行が可能なB17やB25といった機体も配置されている。

 そして米軍の凄い所はこれら航空機が運用するのに必要な燃料弾薬を時間の掛かる船ではなく、飛行機を使って全て運び込んだことであった。米軍がいかにガダルカナル島を重視していたかがわかる。

そして米軍としてはこの日本機動艦隊に出てこられると、ガダルカナル島を電撃奪回されかねないので、なんとしても撃滅しておきたい所であった。しかし、生憎と対抗できる米機動艦隊は補給のため、一時的にエスピリット・サントまで後退しており、少なくとも1週間は前線へ戻ることは不可能だった。

 ラバウル軍港停泊中であるから陸軍機による空襲も行われたが、まだスキップボミングを採用していなかったために、高高度爆撃か低高度奇襲攻撃しか行えなかった。これが輸送船団か駆逐艦隊なら損害を与えられたかもしれないが、機動部隊では話が違った。

 高高度爆撃は打撃艦と巡洋艦が試験的に積み込んだ3式弾による電探連動射撃を受けたために搭乗員が及び腰となったために明後日の場所を爆撃しただけに終わり、低高度爆撃は独立機動艦隊が24時間の警戒態勢に入っていたために、猛烈な対空砲火の反撃をうけてこちらも成功しなかった。また、電探情報を受け取ったラバウル航空隊が早めに邀撃機を上げられたのも攻撃不成功の一因となった。

 そうした米軍の爆撃は艦隊の将兵に若干のストレスこそ与えたが、出撃を挫くには至らなかった。そして独立機動艦隊は特試航空隊の出撃準備が整った8月13日にラバウルを出撃した。

 艦隊は一路南下しガダルカナル島を目指した。今回独立機動艦隊の作戦目的はガ島敵飛行場への徹底的な反復攻撃による基地機能の破壊だった。

 空爆だけならラバウル航空隊もいたが、護衛戦闘機の航続距離ギリギリであるために搭乗員の負担が重く、さらにポートモレスビーへの空襲も行なう必要があるために、ガダルカナルへの有効な爆撃を続けるのは不可能だった。

 当初は作戦目的に米機動艦隊の撃滅も目標であったが、その米艦隊は存在しないために、今回は基地のみを狙う事となった。

 もっとも、敵機動部隊が絶対に出てこないという保証はないが。

 出港直後、旗艦である空母「天城」の艦橋では、桑名司令官と近江参謀長が話し合っていた。

「今回の作戦は随分と場当たり的ですが、大丈夫でしょうかね?」

 自分たちの置かれた状況に不安を感じる独立機動艦隊の近江参謀長が、司令官席に座る桑名艦隊司令官に聞く。

「大丈夫という確証があったら誰も戦争する必要などないよ。まあ米軍の隙をつけるのなら、第8艦隊の時みたいに上手く行くだろうが、生憎と我々は既に米軍に姿を見られている。しかもだ。」

 桑名がそう言い終えた時、電探室から繋がったスピーカーに電探要員の声が入る。

『敵航空機らしき反応あり。艦隊の前方20海里!』

「上空直掩の戦闘機隊にただちに知らせよ!!」

 航空参謀が無線室との電話回線を開き、命令を発する。無線室では上空の戦闘機に無線で報せが行っているはずだ。

「出港した途端監視付きだしな。まあ空母2隻の機動部隊相手なら米軍がピリピリする理由もわかるが・・・とにかく、今は臨機応変に対応するのみだ。参謀長、対空対潜警戒を厳重にせよ!敵と戦う前にやられては話にならんぞ。」

「了解です!通信参謀、各艦に伝達!」

「了解!!」

 キビキビと動く将兵たちを見て、桑名中将は満足げな表情をした。

(実戦を経験したおかげで、将兵の練度は確実に向上している。この将兵の一人たりとも無駄に死なせたくないものだな。)

 心の中でそんな事を考えながら、桑名は窓の外に広がるソロモンの海へと視線を向けた。

 ラバウルを出港した独立機動艦隊は、出港早々にカタリナ飛行艇の接触を受けたが、その後数回に渡って潜水艦や航空機の接触を受け続けた。

 もっとも航空機については、独立機動艦隊の電探で早々と探知され、撃墜される機体が続出した、最終的にカタリナ飛行艇3機、ハドソン爆撃機2機が撃墜され、戦闘機隊の撃墜スコアを稼がせることとなった。

 また潜水艦も昼間は「天城」と「翠鶴」から発進した対潜哨戒機が飛んでいるために近づけず、夜になると今度は闇のために雷撃を行なえなかった。逆に近づきすぎて、駆逐艦に積まれた試製2式水中探信義によって探知された「S44」が撃沈されてしまった。

 捕獲艦や実験艦ばかりのゲテモノ艦隊の独立機動艦隊であったが、試験段階で積み込んだ様々な電子兵器や新兵器がここで役に立った。

 こうして独立機動艦隊は、敵に動きこそつかまれていたが何の被害を受けぬまま、ガダルカナル島へと接近した。


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