異次元世界大戦 独立艦隊海戦記(14/67)PDFで表示縦書き表示RDF


異次元世界大戦 独立艦隊海戦記
作:山口多聞



コロンボ壊滅


 松坂達が撃墜した「ブレニム」爆撃機は、撃墜される寸前セイロン島のコロンボ基地に向けて無電を発信していた。

(我、日本の艦載機らしき航空機の攻撃を受けつつあり。)

 この無電を打ったところで、「ブレニム」は撃墜された。場所や敵の規模についても詳細情報がない簡単な報告であったが、セイロン島にある英軍基地は緊迫した空気に包まれた。

 南雲機動部隊の空襲を受けて損害を受けたのはつい先日のことなのだ。その時の空襲では港などの施設に対する損害が軽かった。それに対する追加攻撃は大いに有り得ることだった。だから。

「南雲機動部隊が第二次攻撃を仕掛けてきた!」

 彼らがそう考えるのも無理はなかった。

 ただちに各地の飛行場から、迎撃のために「ハリケーン」や「フルマー」と言った戦闘機が飛び上がっていく。前回零戦との空襲でそれなりの数を消耗したものの、その後インド各地の基地から増援を受け、なんとか戦闘を出来るレベルまで戦力は回復していた。

 そして、独立機動艦隊から発進した攻撃隊が向かうコロンボ上空には、60機ほどの「ハリケーン」と「フルマー」が舞っていた。そこへ、攻撃隊は突入した。

 今回第一波攻撃隊の指揮官は空母「翠鶴」飛行隊の小淵沢圭介大尉だった。彼は目標上空に敵戦闘機発見の報告を受け取ると、直ちに攻撃隊の全機へ向けて命令を発した。

「総隊長機より全機へ、敵戦闘機は戦闘機隊へ任せ、構わず目標へ突入せよ。全機突撃!」

 彼は敵戦闘機の壁を強引に突破する方法を選んだ。この時攻撃隊に随伴する戦闘機は30機であった。性能的に英軍機に劣るとは思えなかったが、必ずその壁を敵機は越えてくる。だったら、一刻も早く爆弾を投下して避退するのが良い。彼はそう判断した。

 命令を受けた1式艦爆、「明星」、S式艦爆、97艦攻がフルスロットルで突撃を開始する。

 一方、護衛の戦闘機は直ちに英軍機と空戦に入った。今回攻撃隊の護衛戦闘機はいずれも「天城」搭載の1式艦戦であった。この機体は強力な水冷エンジンによって、600kmを越す最高速度を誇り、なおかつ運動性能も良い。その機体を第一次ミッドウェイ海戦を潜り抜けたベテランたちが操っている。

 対する英軍の「ハリケーン」は、有名な「スピットファイア」の1世代前の戦闘機である。さらに「フルマー」に至っては、武装こそ強力だが、その他は戦闘機と呼ぶのが疑わしい性能しか持たない艦爆との兼用を兼ねた多座機であった。おまけと来て、それらを操るパイロットも多くはインドから派遣された実戦経験のないパイロットばかりであった。

 数的には2対1であったが、3分後には1,5対1、5分後には英軍機が次々と遁走する事態に陥った。彼らは急降下で爆撃機や雷撃機に一気に詰め寄れた所を、戦闘機との戦いをムキになって挑戦し、その結果大損害を被ったのであった。

 この空戦での被害は、日本側が戦闘機の防衛網を掻い潜った敵機によって攻撃された不運な艦爆と艦攻が1機ずつであったのに対し、英軍は「ハリケーン」13機、「フルマー」に至っては22機全滅という最悪の被害であった。

 その一方的な空戦のさなか、攻撃隊各機は指定された目標に次々と爆弾の雨を降らせた。ドッグ、クレーン、停泊中の輸送船、燃料タンクなどが次々と破壊され、結局20分の空襲でコロンボ港はほぼその基地機能を紛失した。

 さらに、30分遅れで突入した第二次攻撃隊が近郊に所在する飛行場を襲撃し、残存していた機体と滑走路、格納庫を破壊した。

 こうして、コロンボ港と近郊の飛行場はその機能を完膚なきまでに潰されてしまった。そして何より英軍にとって痛かったのは、機動艦隊攻撃へ向かおうとしていた爆撃隊の「ブレニム」や「ボーファイター」が地上破壊されてしまったことだった。

 偵察の「ブレニム」が命がけで報せた報告も、結局間に合わなかった。

 コロンボの軍施設が壊滅した頃、セイロン島にあるもう一つの軍港トリンコマリ−からは、攻撃隊が発進していた。海上の長距離飛行であるため戦闘機は付かず、爆雷装した「ブレニム」だけの23機の編隊だった。

 ちなみに、この攻撃隊は日本軍機ほど幸運には恵まれていなかった。艦隊手前80km地点でレーダーに捉えられ、無線誘導された戦闘機隊によって攻撃を受けた。

 これがもし無線機も電探もない南雲機動部隊だったら奇襲できたであろうが、生憎と独立機動艦隊は実験段階とはいえそれらを保有していた。

「ブレニム」隊は23機中17機が艦隊手前で戦闘機によって撃ち落され、直掩戦闘機隊のスコアを稼がせるだけに終わった。

 残る6機は戦闘機隊の壁を突き破って艦隊に突入した。各艦は保有する高角砲、機関銃を用いて全力で反撃した。

 敵機は空母への接近が不可能に近いと知るやいなや、目標を陣形外の巡洋艦「佐保」に向けた。投弾前に3機を撃墜したが、残る3機は「佐保」に投弾した。結果、500ポンド爆弾3発が直撃した。

 河川用の、駆逐艦に毛の生えたような小型巡洋艦にこの打撃は痛かった。幸い轟沈はしなかったものの、集中して艦後部に被弾したために航行不能となり、やむなく味方駆逐艦の魚雷で自沈処分された。独立機動艦隊初の損失艦であった。

 一方、殊勲の「ブレニム」もその後対空砲火と怒りに燃えて攻撃してきた戦闘機隊によって全機撃墜されてしまった。せっかくの戦果も、全滅してしまっては何の意味もない。

「敵機全機撃墜しました。巡洋艦「佐保」は残念ながら機関室への被害が大きく、先ほど退艦命令が出ました。」

 参謀が、桑名司令官の元に被害状況を報告してきた。

「そうか。駆逐艦には1人でも多く「佐保」の乗員を救い上げるよう厳命しろ。それと艦長の平塚中佐には自決は許さんと付け加えておいてくれ。我が艦隊は経験ある軍人を死なせる余裕はないものでね。」

「わかりました。」

 参謀は敬礼をすると、すぐに通信所に向かうため艦橋を出て行った。

「敵も中々やりますね。」

 近江参謀長が横から言う。

「当たり前だ。一方的に出来る戦争などそうそうないよ。大本営は無敵皇軍などほざいておるが、慢心は何よりも敵だ。先日東京が空襲を受けた事を忘れてはいかん。」

「わかっております。しかし、攻撃隊からも偵察機からも敵艦隊発見の報告が入りませんね。どこにいるんでしょうね?」

「前回南雲さんが空襲した時もいなかったから、もしかしたらインドかマダガスカル方面へ後退したかもしれん。それか、案外近くのどこかに潜んでいるかもしれない。とにかく、偵察機の報告を待とう。それと、攻撃隊の収容の用意だ。」

「了解です。」

 2人はまだみぬ敵艦隊も気になるが、目の前の事を片付ける事が今するべきことであった。ちなみに、この時英東洋艦隊はセイロン島から少し離れたアッズ環礁にいたのである。



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