行方不明だった弟が異世界から帰ってきたらしい
私には年の離れた弟がいました。私が高校三年、弟が小学校五年の時、両親が事故にあってからは、私が世話をして面倒を見てきた大切な弟。
それからは二人とも大きな病気をすることなく、大変だけど幸せな時が流れていったのでした。でも、そんな幸せは突然終わりを告げてしまう。
弟が高校生になった二度目の夏、突然行方不明になってしまったのだ。
もちろん、私は直ぐに警察に連絡して、捜索願を出しました。
でも、それから数ヶ月……一向に情報は集まらなくて……
「姉ちゃん、ただいまぁー」
「おとうとぉぉ~~~」
それが今日、帰ってきたんだよぉーーー
思わず抱きついて泣き出してしまうのは悪いことか。いや当然だ。
玄関先で泣き付かれたままで恥ずかしくなったのか、弟は私を引きずるように家の中へ。
そしてソファーに座ると、落ち着くまで頭を撫でてくれた。
「今までどこ行ってたの? お姉ちゃん、心配したんだよ」
「それは……姉ちゃん、驚かないで聞いてくれ」
私の肩を掴んで離すと、真剣な目付きで見つめてくる。
抱きついた時に思ったけど、ちょっと逞しくなってて、顔や腕にもいろいろと傷跡が。
「実は、異世界に行ってたんだ」
「い、せかい?」
弟の突然な言葉も、お姉ちゃんは一生懸命考えるよ。
異世界と言えば、ファンタジーで魔法とかばんばんとばしたりする奴だよね。つまり、そこに行ってきた……と、うん違うな。
そうかっ、『異なる世界』つまりこことは別世界な所に連れて行かれてたんだね。
「大変だったよね」
「うん、最初言葉も分からなくてさ」
海外っ、海外なのね。犯人めー、絶対にゆるさん、国際手配してもらわなきゃ。
「そこで剣とか振ってて、ほらこんなに剣だこが」
そう言って見せてくれた両手には、確かに硬くなった皮膚。
でも剣? 武器とかなら今どき拳銃とか仕込まれそうだけど……あっ、異世界って。
この時、私は気付いてしまった。弟は余りの過酷な状況に、連れて行かれた場所が異世界だと思い込んだのだ、と。
多分、ツルハシとかで穴を掘らされてたのだろう。
そんな弟のことを思うと、また泣いちゃいそうになる。でもダメ、笑うの私、お姉ちゃんでしょ。
「俺には無理だけど、他には魔術師がいてさ」
魔術師……手品師さんかな。
本当、テレビとかで見ても、何がどうなってるのか分かんないもん。
突然、杖がボッて燃えたり
「火とかの属性魔法でしょ」
ビリビリに破った新聞が元に戻ったり
「回復魔法でしょ」
鳩をたくさん出したり
「精霊の召喚でしょ」
グルグル繋がれての瞬間移動大脱出
「テレポートとかいろいろ」
「凄いよねー」
「うん、俺も使いたかったんだけどなー」
才能が無いって言われたらしく、弟はちょっと落ち込んじゃった。
昔からちょっと不器用だったもんね。
「あと、お約束だけど魔物も出て、戦闘で傷も負っちゃって」
顔や腕の傷はその時に出来たんだぁ。ちょっと男気アップだねっ。
でも、獣が出るような場所……は、普通にあるか。日本でも野良犬とかに襲われたら傷付くし。
その時、弟のお腹から音が響く。
「あはは、お腹空いてたんだった」
「じゃあ、今日は好きな物を沢山作ってあげる」
やったあ、と嬉しそうにハシャグ姿から、やっぱり食事はあんまり貰えなかったんだね。
「こっちに帰ってきてから、まだ食べてないんだ。あっちのは口に合わないというか、やっぱり日本食に限るよ」
そんなに不味いのを食べさせられてたのなら、お姉ちゃん腕によりをかけて作っちゃう。
そう言えば、から揚げとかコロッケ、ハンバーグって日本食でいいんだよね?
ま、いっか。弟のためならフィッシュ&チップスだって日本食にしてあげるよ。
今のお姉ちゃんパワーは無限大なのだっ。
「あ、そうだ。はい、これお土産」
「わぁ、綺麗。これ宝石?」
そう言って渡されたお土産は、綺麗な青色の宝石。
これって凄く高価なんじゃないのかな。
「うん、あっちで見つけて……あんまり持ち帰れないけど、これだけは姉ちゃんに渡したくて」
「うっ、うぅ~~、お゛どーどーー」
そうだよね、監視とか厳しい中での脱走。あんまり物は持っていけない、それでも私の為に……私は何て大切な弟を持ったのだろう。
再び抱きついて泣き出す私を、まるでそうくると予想してたのか、直ぐに抱きとめてくれる。
「帰ってくるのって大変じゃなかった?」
「そりゃ大変だったよ。魔王を倒さないと無理って言われたし」
魔王、坑道の監督責任者ね。誘拐犯の一味なのかボスなのかは分からないけど、容姿が少しでも分かれば指名手配で捕まりやすくなるはず。
思い出すのは辛いかもしれないけど、私は弟にその人の容姿を訊ねた。
「うーん、黒っぽい服装で、すごいヒゲが生えてて、あと頭に二本の角が生えてた」
さ、サ○ーちゃんパパっ?! でも、いくらダンディなおじ様だって許さないよ。
弟は脱走の時を思い出したのか、悲しそうに俯く。
「あっちで泣いてくれた人もいたしね」
そっか、当然だけど捕まってた場所には、弟以外にも連れ去れた人が居るんだ。さっき言ってた手品師さんかな。
そんな環境でも仲良くなって、見つかれば殺される脱走。そんな弟の身を案じて泣いてくれる友人。
「残らないかとも言われた」
命を危険に晒すぐらいなら、か。
私も会えないのは寂しいけど、生きてさえいてくれれば良いから、友人さんを否定は出来ないな。
「でも帰って来たね」
「うん、姉ちゃんが居るからね」
思わず鼻で弟の胸元を何度かつついてしまう、何それ嬉しい事を言ってくれる。
「姉ちゃん、出来るのに俺が居ないと何もしないんだもん」
弟がいないと料理作る意味がないというか、カップ麺で済ませたり、掃除も適当になったりするだけだよ。
修学旅行で帰ってきた後に怒られたなぁー、ちゃんとしたもの食べなきゃダメって。
ここ数ヶ月も、カップ麺とかお弁当とかだったから、台所のゴミを見られたら大変。話を変えなくてはっ。
「お、お姉ちゃんはこれでも、会社じゃ仕事出来るねって褒められてるんだよ」
「うん、知ってる。だから俺が居なくても頑張りましょう」
弟に頭をぽんぽんと撫でられた。
久々な感覚に思わず涙が溢れ出し、弟の背中に両手を回して、胸元に思いっきり顔を埋める。
お父さん、お母さん。私達は元気で幸せにやってるよ。
「そういや、父さん達にも連絡しなきゃ。二人はまだ海外?」
「うん、行方不明って聞いて一度戻ってきたけど、いつまでもこっちに居られないしね」
事故って入院した両親も、退院してからは古傷が痛むー、とか言ってイチャついてた。いや、まあ命に別状がなくてよかったけどね。
それに、元から仲良かった弟とも、すっごいすっごい仲良くなれた訳だし。
お父さん、お母さん。私達は元気で幸せにやってるよっ。
女性一人称の初作品です。
最初は兄の予定でしたが、ブラコンよりシスコンの方が良いだろ、と思ったので姉に変更しました。
サ○ーちゃんパパは、分からない人もいるかなーと思ったり。
まあ、ああいった系統の根本だと思うので、ネタで出すならこちらかと。