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翔龍機神ゴーライガー  作者: 石田 昌行
第四話:墓前の花は、獣の臭い
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墓前の花は、獣の臭い4-1

「──以上のとおりでございます、総統エビル」

 うやうやしく跪きながら、女は静かに報告を終えた。

 露出の多いファンタジックな衣装をまとった、艶のある美女だ。

 その黒尽くめの肢体からは、どこか嗜虐的な雰囲気が醸し出されている。

 彼女の正面に広がる濃厚な闇。

 その中央上部に、真っ赤な目がふたつ、煌々と浮かび上がっているのが見えた。

 まなじりの吊り上がった、なんとも威圧的な双眸だ。

 その眼の主が、重々しい声で女に応えた。

『ご苦労だったな、オイロケー』

 それは、ブンドール帝国の首魁・総統エビルの声だった。

 腹の底に響き渡るほどの重低音が、張り詰めた空気をびりびりと振動させる。

『ネオ機界獣量産化成功の暁には、我がブンドール帝国は正面から連邦に挑むだけの戦力を保有することとなるだろう。そのためにも、おまえにはより一層の尽力を求めねばならぬ。期待しておるぞ』

「はッ! ありがたきお言葉」

 主人からの讃辞を賜り、女は一段と頭を下げた。

「このオイロケー、必ずや」

『それともうひとつ──』

「魔女……セイレーンのことでございますね?」

『そうだ』

 迅速に我が意を察した腹心に対し、満足げに魔王が答える。

『かつてこの宇宙全体を震撼させ、当時の銀河連邦を崩壊寸前にまで追いやった稀代の大魔道師。宇宙刑事どもの手によって倒されたのち、その邪悪なる魂は、復活を恐れる旧神エルダーゴッドの名において、この聖なる星のいずこかに固く封印されたものと聞いておる。

 その縛めを解き、黄泉がえりし彼の者を我が盟友として迎えること叶えば、惰弱な連邦政府に成り代わって我らブンドール帝国がこの宇宙を統治することも決して不可能事ではなくなるだろう!

 オイロケーよ! 星辰の整いし刻は、いまこの瞬間も着々と近付いてきておる! かねてより申しつけてあるとおり、おまえはそれまでに魔女セイレーンの封じられし先を突き止め、その復活を助けるのだ!

 さすれば、我らが勝利の功一等は、紛れもなくおまえの頭上に輝くだろう。

 この任務、断じて失敗は許されぬことぞ!」

「心得ております」

 ブンドール帝国の大幹部・オイロケー参謀は改めて深く一礼し、真紅のマントを翻しながら立ち上がった。

 優雅な足取りでこの場を去って行く彼女とドクター=アンコックがすれ違ったのは、それから数秒を経たおりのことだ。

 醜怪な老人に一瞥すらしない美女とは対照的に、苦々しげに顔を歪めたアンコックの口から「この女狐めが」という侮辱の言葉が漏れ出した。

 だがその呟きはオイロケーの側にも、そして総統エビルの側にも、なんの反応をももたらすことはなかった。

 軽く舌打ちをした怪老は、同僚と入れ違うようにエビルの前に進み出た。

 がばっと身体ごと跪き、すぐさまお追従を口にする。

「ご機嫌麗しゅうございます、総統エビル」

 顔を上げることもなく彼は言った。

「このアンコック。御心に沿う新たな策をお持ちした次第にございます」

『──申してみよ』

 なんの脈絡もなく切り出された怪老の不躾に、しかし魔王はその耳を傾ける。

 「ははッ」とさらに深々と平伏したのち、ドクター=アンコックは悠々と語り出した。

「総統閣下。それがし、この聖なる星を子細に調べましたところ、極めて面白きことに気付きましてございます。まずは、こちらをご覧くださいませ」

 身を起こしたアンコックがさっと左手をひと振りするや、何もない空間上に鮮明な映像が浮かび上がった。

 地図だ。

 それも、地球最大の大陸、その東端に沿って存在する四つの大きな島を中心としたものである。

 その地図を指し示しながらこの醜怪な老人は、おのれの主に持論を説いた。

「地にはびこっている原住民(虫けら)どもがもっぱら『地球』という名で呼んでいるこの惑星ほしにおいて、さまざまな事象が大地を流れる気の流れ、いわゆる『龍脈』というものに強く強く影響を受けていることが判明いたしました」

『龍脈、とな』

「いかにもでございます、総統エビル」

 怪しく笑って老爺は言った。

「この惑星をひとつの生き物として例えるなら、地を流れる気はいわば血液。そして龍脈とは、それの流れる血管の役割を果たすものにてございます。この龍脈を流れる気によって、この星に生息する生き物は固有の生体波動バイオリズムのみならず、驚くべきことにその思惑ですらを左右されるのでございます。

 つまり、この龍脈とそこを流れる大地の気を操作することによって、我らブンドールに都合の良い行動をこの惑星ほしの原住民に強いることも、あるいは可能となるのではと思われるのです」

『ふむ』

「そこで、この地図でございます。

 ここに描かれてある四つの島々には、大小様々な龍脈がそれこそ網の目のように張り巡らされてございます。その密度たるや、この惑星上において他に比肩すべき土地がないほどでございます。

 総統エビル。いま私めがあなたさまに進言いたしますのは、この四つの島々に溢れる気脈の流れを解析することが、聖なる星全域を速やかに制圧するための有意義な一助になるのではないかということです。力を用いずしてこの惑星上の住人すべてを支配できる可能性があるのであれば、手間を惜しまずいかなる布石をも打っておくべきなのではないかということです。

 この島々を流れる無数の龍脈、そのほとんどの起点となっておるのは、ここ、連中が『フジサン』と呼び習わす休火山でございますが、いかに我らブンドールの科学力が優れているとは言え、さすがにいきなり未知の本営を攻めるのは無謀というもの。ゆえにそれがし、我らが最初に手を付けるべき龍穴として、すでにひとつの候補地を複数のそれより選び抜いてございまする。

 閣下。何とぞ勇断をもって、この老いぼれにご奉公の機会をお与えください。この場で閣下のご裁可が下り次第、不肖アンコック、自ら手勢を率いて同地に赴き、すみやかに解析作業へと取りかかる所存にございます」

『うむ』

 総統エビルが重々しく応えた。

『そなたには、機界獣ビゴランテを与えよう。その知謀を駆使し、思うがままを成すが良い! して、アンコックよ。おぬしが向かわんとするその龍穴の名は、いったいなんというのだ?』

「はッ」

 畏まって怪老は答えた。

「『ミナカミヤマ』と申しまする」

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