美しき女策士3-1
女子校としてはなんとも珍しいことに、ここセントジョージ女学院には「武道」の授業が存在する。
「剣道」と「弓道」との選択だ。
これは同校創設以来の伝統で、初代理事長による「新時代の女子は、断じて守られているだけの存在であってはならぬ」という鶴の一声がその発端だとされていた。
もちろん、関連する部活動が活発なのは言うまでもない。
こと女子剣道に関しては、全国大会の常連にその名を連ねているほどだった。
「やあッ!」
「えいッ!」
「たぁッ!」
今日もまた、にわか造りの女武道が気合いを放ち、威勢の良い掛け声が武道館の中に木霊している。
本日のメニューとして予定されているのは、指導教諭の号令に合わせた素振りと打ち込み、それに続く試合形式の稽古だった。
試合稽古の内容は、短い時間での一本勝負。
審判役は、順番待ちの女生徒が行う手筈となっていた。
「めぇぇんッッ!」
それは、熱を帯びてきた試合稽古が間もなく一巡しようかという矢先の出来事だった。
裂帛の気合いが迸ると同時に、ばしん、という鋭利な打撃音が、その場の空気をびりびりと揺るがしたのである。
武道場に用意された二面あるコートのひとつで、男性の平均身長はあろうかという長身の少女剣士が、対峙した試合相手を文字どおり一蹴しているのがわかった。
それはもう試合にすらなっていなかった。
典型的な「瞬殺」とも言える。
完璧な一本を許した女生徒の側は、およそ抵抗らしい抵抗を試みることすらできなかった。
その力量差は、素人目にも明らかなほどだ。
やや遅れて、審判役の女生徒が「一本!」を告げた。
長身の少女剣士はそれを受け、対戦相手との間に蹲踞の礼を交わしたあと、待機している級友たちの列に復帰した。
凜と背筋を伸ばして正座しつつ、篭手を外して面を脱ぐ。
その下から現れたのは、思わず目を奪われるほどに整った顔立ちと、手拭いで覆われた豊かな金髪だ。
日本人離れした肢体を無骨な剣道着に包んだその少女。
それは、セントジョージ女学院理事長の孫、雪姫シーラそのひとだった。
たまたま隣の位置にいた彼女の親友・此路春香が、その耳元に向かって、茶化すようにささやいた。
「さっすがは剣道三段。お見事な太刀筋で」
「ありがと」
シーラもまた、小声でもってそれに応える。
「でも、わたしなんかまだまだよ。上には上がいるからね」
「こりゃまた、ご謙遜を。無外流だっけ? 居合い始めてからもう十年は経つんでしょ? 達人じゃん」
「それでも、全然パパには及ばない」
そんな戯れ言めいた友人の言葉を、しかし彼女は否定した。
「最低でもあのひとのレベルにまで追い付かないと、一人前だなんて口が裂けても言えないわ」
「このファザコンめ」
にぱっと笑って春香が言った。
「そういえばさァ」という枕詞で話題を変える。
「随分不思議だと思わない?、シーラ」
「何が?」
「ここ最近のこと全部よォ。決まってるじゃない」
春香の声がわざとらしく潜まる。
「先週のテロリストのことにしても轟先生のことにしてもさァ、新聞やテレビでちっとも触れてないってのは、これすっごく不自然なことだと思うんだけどなァ。
あれだけド派手に大騒ぎした挙げ句、終いには怪獣と巨大ロボットの殴り合いよ。ネットじゃとっくにお祭り状態なのに、そういうの大好きなマスコミが飛びつかないのって、これはもう違和感ありありオオアリクイだよォ。あんたはさ、当事者のひとりとして、そんな風に思ったりしないの?」
「あんまり現実離れしてるから、どう報道しようか迷ってるんじゃない?」
しらっとした口振りでシーラは答えた。
「たとえばさ、あんたが海外のニュースで『本日、宇宙から来た怪獣とそれを追ってきた宇宙刑事のロボットが戦闘状態に入りました。これがその映像です。ドヤァッ!』っていきなりやられて、それを素直に信じちゃうと自分で思ったりする? わたしなら、『何よそれ? いったいなんの冗談?』で終わっちゃうと思うな。
むかしなら何でも好き放題できてたマスコミもさ、最近は誤報やらなんやらあったら、いろいろ叩かれるようになったからね。だから、いまはまだ慎重に裏付け取ってる最中ってだけなんだと思うよ」
「なるほどォ」
腕組みしつつ春香は頷く。
「そういや、そうよねェ。実際に見てたあたしらでさえ、『マジかッ!』って思っちゃうような出来事を、その場にいない無関係な人間がまともに報道できちゃうわけもないか。ウチの学校の生徒にもきっちり箝口令が敷かれてるし、こりゃ記者の皆さんも大変だ」
「……あれを『箝口令』って言っちゃうのには、かなり抵抗があるけどね」
「言えてる」
◆◆◆
解説しよう。
ふたりを思わず苦笑させた「箝口令」とは、カーネル=ザンコック率いるブンドール帝国先遣隊と宇宙刑事ライガとが矛を交えた翌日、理事長の口より直々に同校生徒たちへと伝えられたものであった。
急遽行われることになった全校集会の壇上で立ち並ぶ少女たちの視線を一身に浴びた松乃は、短くも確かな言葉で次のような訓示を行ったのである。
「皆さん。すでにご存じの方も多いと思いますが、昨日当校に赴任なされた轟雷牙先生は、宇宙刑事警察機構より地球の平和を守るため派遣されてきた宇宙刑事でいらっしゃいます。当校で学ぶ皆さんにおきましては、自らの不用意なひと言が先生の大事なお仕事の妨げとならないよう、くれぐれも表立っての発言に留意するよう心がけてください」
祖母が放ったその言葉を聞いた時、シーラは思わずずっこけそうになった。
正直な話、「あのひとは気が触れてしまったんじゃないか?」と真剣な疑いを覚えたほどだ。
だが、学園を構成する大多数の少女たちから発せられた回答は、そんな彼女の正気をかえって自問させてしまうレベルの代物だった。
声を合わせて、少女たちはこう応えたのである。
「はい! 理事長先生!」
◆◆◆
「あれは衝撃的だったよねェ。でも勉強になったわ。いわゆるファシズムってのは、ああやって形作られるものなんだって」
「うちのお祖母ちゃんを独裁者みたいに言わないでよ」
冗談めいた春香の台詞に、シーラはすかさず突っ込みを入れた。
わずかに感情が入った分、声が大きくなってしまったのだろう。
指導教諭の口から「そこッ! 私語を慎みなさい!」というお叱りの言葉が投げかけられた。
「やべッ」とばかりに肩をすくめるふたりの少女。
その片割れに出番の時がやって来たのは、それから間もなくのことであった。
「次ッ、此路さん」
「おっし、行ってくるわ!」
慣れない手付きで面を付け、コートに向かって足を運ぶ春香。
今回、彼女の対戦相手となったのは、小柄な体躯のひとりの少女──衆道七海そのひとだった。
性格的なものがつい表に出てきてしまったものか、ただでさえ小さいその身体がさらにひとまわりは小さく見える。
まるで、猫と鼠ね。
見るからに素人然とした仕草で対峙するふたりを見ながら、シーラは思った。
蹲踞の礼をしたのちに向かい合う両者に対し、審判役の女生徒が始まりの合図を告げる。
「おっしゃァッ!」
「ひぃぃッ!」
竹刀を中段に構えながら、双方がいかにも双方らしい第一声を放った。
気合いによる威嚇が剣道の初手であるとするならば、勝負の行方はこの時点で決着を見ていたと言えよう。
問答無用な春香の勝利だ。
というより、七海のほうは、端っから戦意というものを持ち合わせていなかったようにうかがえた。
シーラの目からするとその技術的なレベルはどっちもどっちなのだから、ひとたび腹をくくって抗えば、おそらく勝敗はどっちに転ぶかわからないものであったろう。
にもかかわらず、彼女は頭から自分の勝ちを投げていた。
もったいないな、とシーラは思う。
もう少し自分に自信を持ったらいいのに──…
大声を発した春香が七海めがけて打ち込んでいったのは、その瞬間の出来事だった。
構えた竹刀を大上段に振り上げつつ、足音を立てて突進する春香。
なんとも無様な足裁きだ。
足裏までもがはっきり人目に付いている。
「七海ィ! 覚悟ォ!」
芝居がかった言葉で、春香が七海を威嚇する。
目一杯体重を乗せた面打ちが、莫迦正直に真っ正面から打ち下ろされた。
「ひゃああ」
頭を抱えた七海がその場でばっとしゃがみ込んだのは、春香が最後の踏み込みを行ったのとほとんど同じタイミングだった。
およそ「ありえない」反応だった。
武道経験者であるシーラや審判役の女生徒だけでなく、それを見ていたすべての少女たちが思わずその目を点にする。
限定された春香の視界で、七海の姿が忽然と消え失せた。
そして、いったい何が起こったのかを頭が理解するよりひとこま早く、その両足が七海の身体に蹴っつまずいた。
「ふぎゃあッ!」という奇声を放ち、春香は顔面から前方めがけてダイブした。
面金が激しく床板と激突する。
続けざまに爆笑が湧き起こった。
「なーにやってんのよ、春香~」
「ばっかで~」
「いや~、笑わせてくれるわ~」
だが、その笑いが収まるのにさほどの時間は要しなかった。
転倒した春香が、突っ伏したまま起き上がってこないのだ。
少女たちの目の色が、あっというまに深刻そうな色合いに変化する。
そんな彼女らを代表するように、「春香ッ!」とひと声叫んだシーラが親友の側に駆け寄った。
あとを追った指導教諭と力を合わせてその身体を仰向けの状態にひっくり返し、面金越しに顔を覗く。
「誰かッ!」
真っ青な表情でシーラはわめいた。
「気絶しちゃってる! すぐ保健の先生に連絡してッ!」
◆◆◆
「たぶん軽い脳震盪だと思うから、しばらく様子を見てみましょう」
養護教諭の追露慶は、努めて冷静な口振りでそう言った。
「もし目が覚めて頭痛や吐き気を覚えるようなら、その時はすぐ救急車で病院。そうじゃなければ、とりあえず帰宅して一日ゆっくり休むことね。さいわい明日から土日だし、学業に影響出るようなこともないでしょう」
「ありがとうございます」
気絶した春香の付き添いで保健室までやって来た雪姫シーラは、指導教諭の秋山三冬ともども、この白衣を着た女性教諭に向け深々と頭を下げた。
その場違いなまでに恐縮した姿を見て、慶は小さく苦笑する。
彼女は言った。
「何もあなたが頭を下げることないのに」
「友人ですから」
その発言にシーラが応えた。
「いろいろ困ったちゃんなとこありますけど、春香は、わたしの大事な友人ですから」
「そう」
回答を受け、改めて慶は口元を綻ばせた。
「なら、あとの細々したことはあなたにお任せしたほうがよさそうね」と三冬を保健室から退出させる。
「私も付いていますので、もし何かあれば連絡を入れますよ」と。
これで保健室の住人は、ベッドの上で気を失っている春香を除けば、シーラと慶のふたりきりとなった。
三冬が姿を消すのと前後して慶はおもむろにその場から離れ、自分のデスクの椅子に着いた。
身体ごと振り向いて、頬杖を突きながらシーラと向き合う。
その全身から、ふわっと濃厚なフェロモンが発せられた。
白衣の下は地味なブラウスと黒のスカートという出で立ちのなのに、この匂い立つような色気はどうしたことだろう。
どきりとしたシーラの頬が、かすかな赤みを帯びてきた。
それは、本人にとってもあまりに意外な反応だった。
一瞬の戸惑いが少女を襲う。
追露慶は、一昨日学園に着任したばかりの新任教諭だ。
年の頃は三十路を優に超えている。
ただし、その雰囲気からは年増というイメージなど欠片も見られない。
例えるなら、有名女優のそれに似ているとでも言えようか。
なんとも妖艶な美貌の持ち主である。
切れ長な双眸から伸びる粘着質の眼差しで、この養護教諭は金髪娘を嘗め回した。
同時に、見せつけがましく左右の脚を組み替える。
タイトスカートから伸びるモデルのような脚線美が、否応なしに強調された。
それとともに、シーラの表情がむっとしたものに変化した。
嫌悪感もあらわに、彼女は尋ねる。
「何かわたしの顔に付いてますか?」
「あなたが噂の雪姫さんね」
微笑みながら慶が応えた。
「『セントジョージの金髪姫』 有名よ。ここいらの男の子たちじゃ、知らない子なんていないんじゃないかしら。みんな、なんとかしてあなたと親密なお付き合いができないかって、日々悶々と妄想を膨らませてるはずよ。オンナ冥利に尽きるわね」
「はっきり言って迷惑です」
それを聞いて、シーラはきっぱり断言した。
「わたしのことなんてなんにも知らないくせに、外見だけ見て『好きです』『惚れました』『付き合ってください』なんて言われたって、こっちは嬉しくもなんともありませんから! 要するにそれって、わたしとセックスしたいってだけじゃないですか! 冗談じゃないです! わたし、男の人の性欲解消アイテムに成り下がる気なんて、これぽっちもありませんから!」
「辛辣ね」
苦笑しながら慶は言った。
「でも、あなたのその気持ち、わからないではなくってよ」
「えっ?」と声を上げるシーラの視線を、彼女はすぐさま捕獲する。
「私もね、そういった男たちの軽率な態度に辟易してきた経緯があるから。嫌よね。オンナを見てくれだけで選んでくる粗暴な連中なんて。私たちはショーウィンドウに並べられた商品じゃないのよって大声で叫びたくなるくらい」
「そ……そうですよ。そうですよねッ!」
やにわに腰を浮かし、シーラは大きく頷いた。
両の拳を握り締め、熱っぽく慶の意見に同調する。
「女をアクセサリーかなんかだと思ってるモンキー野郎なんてサイテーですよね! わたしなんて外見がこんなだから、もうヘリウムより軽いナンパ男だの自信過剰な勘違いナルシストだのがうじゃうじゃうじゃうじゃ寄ってきて、ホントの本気で心の底から『勘弁して~ッ!』って思ってるのに、ほかの娘にその気持ち話すと逆にうらやましがられたり自慢話に取られたりするんですよ! 同じ女の子なのになんでこの気持ちわかってくれないのって、何度言葉が出かかったことか!」
「眼中にない異性に言い寄られる気分は、なかなか同性には理解されないものよ」
ふっと笑って慶が応えた。
「美形は得だ、なんていったいどこの誰が言い出したのかしら? 美形には美形なりの悩みとか苦しみがあるものなのに、大多数のそうじゃないひとたちには、それを理解するだけの能力も意思もないときてる。だとしたら、そういった問題はこちらの側で考えるだけ無駄な努力なのかもしれないわね。
だから私思うの。あなたもそんな些事にいつまでもこだわってないで、新しい地平に目を向け直したほうがずっと建設的なんじゃないかって」
「建設的なこと、ですか?」
「そうよ」
ふと、慶の口元がより一層のほころびを見せた。
その身体から発せられるフェロモンが、ぶわっと急激に濃度を増す。
続けざまに彼女は告げた。
「男なんていう『つまらない存在』に気を取られてるからこそ、そういった不快な思いをすることになるのよ。思い切り頭を切り換えて、もうひとつの『性』にこそ自分のすべてを委ねるようにすれば、きっとそこに新しい『オンナの喜び』が見出せてくるわ。私が見るところ、あなたにはその資質と資格があると思うんだけど」
「は?」
その発言を聞いて思わず口をあんぐり開けたシーラに向かって、ゆるりと席を立った養護教諭が音もなく歩み寄った。
艶めかしい表情もそのままに、女は少女の顔を至近距離から覗き込む。
「どう?」
粘っこく視線を絡ませながら慶は迫った。
「私と一緒に、アブない橋を渡ってみない?」
ざわ、とシーラの背筋を虫唾が走った。
仰け反るようにして後退りながら、「せ、せ、せ、先生ッ! な、何を言っておられるんですかッ!?」と、発言の真意を確かめようとする。
だが、新任の女性教諭はなんとも怪しげな笑いでそれに応えた。
狼狽するシーラを壁際に追い詰め、その細い顎を手指でなでる。
「あら可愛い」
彼女は言った。
「ふふふ……初めてなのかしら。でも全然怖がることはないのよ。オンナの身体は、同じオンナが一番よく知ってるんだから。たとえあなたが初めてでも、責任持って、きっちりと天国に行かせてあげるわ。約束してあげてもよくってよ。それはね、とってもとっても気持ちのいいことなの。だから──」
「冗談ですよねッ!? お願いですから冗談って言ってくださいッ!」
感情的にシーラは叫んだ。
蛇に睨まれた蛙とは、まさしくこのことだ。
金髪娘の全身を、多量の脂汗が流れ落ちる。
そんな彼女に向かって慶は言った。
「あら、冗談に聞こえて?」
ルージュが塗られた肉厚の唇を、唾液に濡れた舌がぺろりとなぞる。
「もちろん……冗談に決まってるわ。もしかして本気にした?」
その「……」は何よッ!
その「……」はッ!
口元を引きつらせながらシーラは思った。
やばいッ!
やばいよッ!
このひと、ガチだッ!
どうしようもなく淫靡な空気が、保健室の中いっぱいに満ちあふれた。
愛想笑いを浮かべるしかないシーラの心臓が、緊張のあまりどきどきと早鐘を打つ。
耐えられなくなって彼女は願った。
必死に願った。
誰でもいいから、この雰囲気をなんとかしてェッッ!!
その願い事が見事に叶ったのは、ちょうど次の瞬間の出来事だった。
がらりと音を立てて扉が開き、唐突に背の高い若者がその姿を現したのである。
それは、シーラや春香の担任を努める、臨時講師の轟雷牙であった。
「ごめんくださいッ!」
扉を潜るや否や、場違いなほどの大声で彼は言った。
「此路さんが倒れたって本当ですかッ!?」
どうやら「武道の授業で春香が失神した」という知らせを聞いて、受け持った講義もそのままに、慌ててここまで駆け付けてきたものらしい。
絶妙のタイミングで、終業のチャイムが学校中に鳴り響く。
「ら、雷牙ァ……」
助かったァ、と言わんばかりに息を漏らし、シーラは雷牙の側へと駆け寄った。
意識して慶の方向を見ないよう、身振り手振りを加えながら、いままでに起きた状況を一心不乱に説明する。
ふん、と軽く鼻を鳴らした慶が改めて自分の席に腰を下ろしたのは、それと前後してのことだった。
デスクの上に肘を突き、両足を組んだままの姿勢で、姿を見せたばかりの臨時講師に視線を投げる。
その目の中に、なんとも不穏な炎が宿っていた。
見る者がそれを見ていれば、もしかしたら彼女の隠し持ったもうひとつの気質に気付き得たかも知れない。
だがこの時、同じ場にいた雷牙もシーラも、その微妙な色彩に気を留めるようなことはまったくなかった。
あれが轟雷牙──宇宙刑事ライガ、か。
そう心の奥底で邪な企みを弄びながら、追露慶は、否、ブンドール帝国の女幹部にして総統エビルの懐刀であるオイロケー参謀は、にやりと不敵に相好を崩した。