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吹雪の村

作者:キュウ
5分ほどで読めるミニ短編です。
お茶とかコーヒーとか片手にごゆるりとどうぞ。
また、本作は別に公開中の『魔の吹雪』と合わせて読んでいただくと、
さらに楽しんでいただけると思いますので、そちらもぜひどうぞ♪
『魔の吹雪』→ http://ncode.syosetu.com/n8427ea/
 あるところの雪原。
 一面に広がる白の景色と、刃のような突風、そして限り無く飛来する雪たちの彩るその雪原を男が独り、力無さげにゆらゆらと彷徨っていた。
 この迷い路に入りこんでから、どのくらいの時間が経ったか知れない。手足は散り散りに悴み刻々と限界に近付きつつある。身体中はずっしりと重たく、今にもバタリと倒れてしまいそうだった。
 忘我のままに足を動かすことも、もう幾度となくあった。もはや、彼にできるのは、ただひたすらに祈りを捧げるのみだったが、その声は一瞬の内に、彼自身の耳にすら届かないほどに、すぐさま風にかき消されるのだった。
 男は歩き続けた。その昔、今の彼のように、この吹雪によって存在を失ってしまった、たった一人の家族を見つける為、どれだけ傷みに晒されても、どれだけ、このまま倒れてしまい刹那に極楽へ至りたいと思おうとも、歩き続けた。
 やがて、その彷徨の末に辿り着いたのは、「吹雪の村」だった――。

 目を覚まし、冷たい雪に埋もれた頬を持ち上げた。眼前を彩るのは相も変わらない雪景色と、点々と建っている何件かの小屋。その間を縫うようにして何人もの人々が歩き回っていた。
 ここが何処なのか、どうやって来たのか、男にはまったく見当がつかない。思い返して浮かぶ景色は、全身の力を奪う魔のような吹雪の中を歩いていた自分の姿ばかり。その中いつの間にか意識が無くなり、いつの間にかここに倒れていた。
 やおら身体に力を込める。不思議と、あれほど疲労を抱えていた身体がすんなりと起き上がった。
 辺りを見渡してみた。右を向いても左を向いても、絶えず雪の降るのが目につく。あの吹雪に比べると随分と力の感じられない、穏やかな雪が舞うように降っていた。
 足を動かし始め、男は、手近な小屋の窓へ近寄り、中を覗いてみた。そして男は、あまりの驚きに目を剥いた。
 小屋の中はがらんどうに寂れていて、人の姿は無く、ただ冷たい風が渦巻いているだけなのだが、屋根が在るにも関わらず、内部を雪が降っていたのだった。
 彼はその信じがたい景色に目をこする。そして再び中を覗いたが、その様子に変化は見られなかった。
 しばしの沈黙が意識を支配する。幾らかの記憶を辿る景色が頭をよぎり、怖れとも哀しみともとれない震えが全身を襲った。やがて男はハッとして、すかさず辺りへ視線を迷わせた。
「……」
 やはり未だに雪は降っている。見える景色へ少しだけ足を運んでも、雪はきちんとすぐそこに降っている。
 スイと、肩のすぐ横を、後ろから誰かが追い抜いた。振り返り、こちらをチラリと見てきた彼女の姿に不思議と目を引き付けられた。
 薄く開いた唇からは息も漏れていないように見える。灰色の目は虚ろげに、焦点を見定められない。肌は雪のように真っ白で、足取りは少しも重みを感じさせず、雪のようにフワフワしていた。
 何より目を惹いたのは、その遠い昔にいなくなった、大切な誰かによく似た、懐かしい顔立ち全てだった。
 彼女はすぐさま前を向き直し、真っ直ぐ何処かへ歩いて行った。
 すかさず、片手を出して「待って」と言おうとした。言おうとして止めたのは、否応なしに目に留まった自分の手に驚いたからだ。
 その手は、これまで自分が見てきたそれとは明らかに異なって真っ白く、辺りを歩いている人々と同じように、雪のようにそこはかとないのだった。
 そしてもう一つ、気付いた事実を受け入れる頃、もはや霞んだ意識を繋ぎとめることは困難となってしまっていた。絶え間なく身体へ迫る雪の粒一つ一つが、スウーッとすり抜けていくのだった。
 一切の冷たさも肌触りも感じさせず、雪は身体を無いものと見なすように、全てがすり抜けていくのだった。
 ふと、力無さげに三度辺りを見渡した男は、そこを徘徊する人々が、目的無く彷徨う亡霊のように、見え始めたのだった……。

 肌を掻いては力を奪う「魔の吹雪」。その丁度中心部には、数多の遺体が散らばり、棄てられたように倒れていた。
 そのうちの一体から零れ落ちる色褪せた景色の中で、ある兄妹は目を輝かせ、老人の語る伝承に毎日のように、耳を傾けていた。
お疲れさまでした♪
HP(→http://kyunote.blog.fc2.com/)にて
コメントや編集後記、ほかのお話のまとめも掲載しておりますので
ぜひこちらにもどうぞ

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