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閑話 温泉に行こう

 シチョフ領を奪取し、論功行賞も終えた。

 再びエロシンなりバラキンなりに攻め込むにしても、少しは間を置かねばならない。

 

 俺はそのつかの間の休息を利用して、家族サービスも兼ねて領内視察を行うことにした。

 連れて行くのはリリ、クラリス、ビアンカ、チカ、マルティナの五人だけ、護衛は茜が影から見守るのみ。

 ほぼ家族水入らずと言う訳だ。


 ナターリャさんも行きたがっていたが、彼女には下賜した領地を運営してもらわなければならなかったので、辞退してもらった。

 酒の相手をしてなにか間違いが起きたら、家族不和の原因になり兼ねないので正直ほっとしている。


 そんな前置きがありながら、現在は旧シチョフ領を見回っているところだ。

 シチョフ領は特にこれと言った産業も無い。

 殆どが林業と農業である。

 農業にしても山間の盆地に作られたものなので、それ程生産性は高くない。

 クレンコフ領よりかはマシだが、決して褒められた程の収穫高ではない。 


 だがシチョフ領には、これというもの一つがある。

 それは湯治場だ。

 

 シチョフ領東部は湯量が豊富な温泉が所々で湧き出ているらしい。

 特に俺の直轄地の東部には、湯治場として有名なアキーウ村がある。

 そこは温泉街と言ったら語弊があるかもしれないが、湯治客用の施設が整っており、多くの怪我人や病人がそこを訪れている。

 

 俺達はこれからアキーウ村へと視察に向う予定だ。

 ゴホン、あくまで視察であることを強調しておく。

 みんなで温泉に入ってキャッキャウフフなんてことは、……少ししか考えていないんです。

 リリとクラリスが寝た後に、部屋つき露天風呂でチョメチョメ……、なんて楽しい思い出作りは、……ほんのチョットしか思ってないんですからね。

 

 ふう、つい妄想を膨らませてしまったな。

 想像力が豊かすぎるのも困ったもんだぜ。


 そっち方面しか考えていないように思えるが、温泉地を観光産業として確立する事が今回の視察の最大の目的であると、一応断りは入れておく。

 俺も領主である以上、それ位のことは考えているのである。


 さて、そろそろアキーウ村に到着したようだ。

 山の中と言うから、かなりの悪路を想像していたのだが、思っていたよりも楽な道のりだった。

 これならば街道を整備すれば、馬車も通れるかもしれない。

 交通の便さえ良くすれば、観光地として盛り立てて行く事が出来るからな。

 

 この村をどのように変えていこうかなどと、先走ったことを考えながら門をくぐる。

 今回はお忍びできているので、過剰な歓迎は無い。

 しかし俺がくることを誰も知らなければ、観光産業の話ができないので、組合長を始めとする一部の人間には抜かりなく伝えてある。

 

 そのため俺達はまず組合へと顔見せに向う。


「失礼、組合長に三好が来たと伝えてくれ」


 俺は仮名を名乗り組合長へ到着を知らせる。

 するとすぐに奥の事務所から五十歳程の男が出てきた。


「これはようこそお越し下さいました。ささ、こちらへどうぞ」


 あくまでお忍びなので大袈裟な受け答えをせずに、応接間へと案内してもらう。

 中に入り腰を下ろし湯で口を湿らせてから、少し威厳を出そうとしながら口を開く。


「いきなり訪れて済まないな。今日は此処の温泉を観光業として生かせないかと思い、視察に来たんだ。あと、前もって伝えてあると思うが、あそこはちゃんと押さえてあるんだろうな……?」

「ふふふ、勿論ですとも。露天風呂付きの最上級客間はしっかり確保してありますのでご安心下さい」


 後ろの女達は、何を言っているんだと言う顔をしているが、俺と彼は通じ合っているのだから問題ない。

 

「そうかそうか、では早速案内して貰えるかな。今日は疲れたので視察は明日と言う事にしておこう」


 本当は全く疲れていないのだが、早く温泉を楽しみたいから仕方が無い。

 皆も温泉は初めてらしいので、今日はゆっくり楽しんで貰いたいからな。


「それがようございます。既にお部屋のご用意は万端で御座いますので、今からご案内いたします」

「ああ、宜しく頼む」

 

 そして案内されたのはフェニックスの間と名づけられた豪華絢爛な部屋だった。

 ここはシチョフ家がエロシン家の面々を接待するためのみに、作られた客室だそうだ。

 三十人は楽に寝泊りできそうな大部屋に、豪奢な備品が備え付けられている。

 そして極めつけは一流旅館の大浴場と言っても差し支えない程の内風呂に露天風呂だ。


 エロシン家の奴らはここにお姉ちゃんを呼んでは、酒池肉林の乱痴気騒ぎを繰り広げていたらしい。

 なんてうらやまっ……、いやっ、退廃的な所業をしているのだ。

 既に嫁三人で満足している俺にとっては関係の無い話だと思う……。


「何これー、すごいすごいー」

「こんなお部屋、妾も始めてなのじゃー」


 二人は部屋に入るや否や、そこら中を駆け回り戯れる。

  

「ねえお兄ちゃん、先に湯に入っても良いかのう……?」

「ああ構わないぞ。熱いから気を付けなさい」


 クラリスが湯船に入りたがっているので許可してやる。


「あたしも入るのー! 待てー!」


 二人は仲良く湯に入り、やはり思った通り泳ぎ出した。


 俺は彼女達から目を話し居間へと戻る。

 すると残っていた三人は目をパチクリさせながら、部屋を回遊していた。

 はっきり言ってこの豪奢な部屋は、エロシン家ですら分不相応だ。

 一体どれ程の金を搾り取って作らせたのか考えたら、頭がクラクラして来る。

 

「流石にマルティナでもこのクラスの部屋は初めてのようだな」 

「当たり前だ。クレンコフ家に余裕などあるはずも無いからな」

「そうだったな、悪いことを聞いた」

「いっいや、別に秀雄殿を責めた訳じゃないんだ……」


 最近マルテイナの話し方は少し変わってきた。

 晴れて正妻になった事で、以前のきつめな感じを和らげようと努力しているのだ。

 だが染み付いたものは、なかなか抜けないようだが……。

 俺は少しきつめの方が色々な意味で好きなのだけどな。

 

 しかし正妻になれば、これからは公の場に出ることも多くなるだろう。

 なのでその辺りは、少しずつ直して行かないといけない。


「俺はお前のそんな所も好きだから、気を揉む必要はないぞ」


 そう言いながらマルティナの尻も揉みこむ。

 つい別の所も揉みたくなったのだ。

 すでにここは個室である。

 多少のおさわりは許されるだろう。


「あっ、ああっ……」


 同意なのか、あれなのか、分かり辛い反応をしつつも、表情は満更ではない感じだ。

 すると匂いを嗅ぎ付けたのか、イヌミミとネコミミが遅れを取り戻さんとばかりに、俺にくっついてきた。


「秀雄様、マルちゃんばかりでずるいですよ」

「そうにゃそうにゃ、女は平等に扱わにゃいと駄目だにゃー」


 おいおい、手は後一本しか無いんだぞ。

 仕方無い三本目を使うか。

 俺は両手と三本目のあれを使い三人を慰める。


 すると皆からそれぞれ個性的な反応が返ってきた。

 具体的に言うと問題になりそうなので自重しておく。


「ふー、これから先は夜にしよう。特にクラリスには教育上良くないからな」


 危ない危ない、俺の秀雄が暴発するところだったぜ。

 

 紅潮している三人をソファーに座らせてから湯に向う。

 バレスの顔を思い浮かべ、三人目を退出させながら。

 

 その後は回復した女達も加え家族全員で湯を楽しんだ。

 もちろん掛け流しだ。

 循環などできる訳ないので、当たり前なのだが。


 そしてこれまた王侯貴族が食するような豪華な料理が運ばれてきた。

 それに皆で舌鼓を打ち、酒を片手に再び湯へと向う。

 酒と温泉だけでも最高なのに、脇には可愛い嫁達。

 気分は最高だ。

 こんな毎日を送ったら堕落してしまうな。

 劉備玄徳が呉でやらかした気持ちが今なら解る気がした。


 さてそろそろ夜も更けて、リリとクラリスは寝たようだな。

 これからは大人の時間だ。

 先程の続きはしっかりしないと精神衛生上良くないからな。

 


---



 もう朝だ……。

 誰か……、みっみずをくれ。

 もうからっからだ……。 

 俺の隣では憑き物が落ちたような表情で、気持ちよさ気に嫁達が快眠している。

 

 これからは中二日で行こう。連投は肩を壊すからな。

 などと下らない事を思いながら蜂蜜水を一杯呷る。

 

「今日も視察はやめて置こう」


 そう呟いたが最後、疲れ果てた体は休息を求めていたようで、間も無く俺の意識は闇に落ちた。

 

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