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高校教師2
作:Maria


「…平さん!おはよう。気付かなかった?」



先生だ。
私ぼーっとしてたみたい。
大好きな先生の姿に気付かないなんて…。



今日は何だか少し寒い。
冬が本当にすぐそこまで近付いてきてる感じ。





「危ないなぁ。平さんはぼーっとするくせがあるからねぇ。気を付けて歩きなね(笑)」



二人きりの時以外は先生は私のことを平さんて呼ぶ。



そりゃ周りから見ればただの教師と生徒なわけだし。



別に全然良いんだけどさ…





何か寂しい。



君は他の生徒と一緒なんだよって言われている気がして…



ちょっぴり悲しいよ。



でもこれはただの私のわがままだよね。



分かってる。



私には罰があるの。



それは自分の幸せを願っちゃいけないってこと。



だからこんなささいなことにいちいち傷ついてなんていられないんだ。



秋の晴れた空はそれはそれは美しい。



けれどその美しさは、夏の晴れた空が持つ爽やかさなどでは決してなくて…



切なさと哀しさが入り交じったようなそんな美しさなんだ。





吹く風だってそう。



冷たいような暖かいような。





独りだけど一人じゃない。



秋ってそんな季節。



金曜日の5時間目の授業は先生の時間。



何か特別な感じがして私はこの日が一番好き。



そりゃ朝から先生に会える授業の日も好きだけど…



一週間の終わりの日の一番最後の授業。



何か特別な感じがして。



そんな時間に先生と同じ教室で一緒に過ごせることがたまらなく嬉しいんだ。



「明日練習問題の(2)当てるからちゃんと予習しときなよ〜♪」



きのうの先生の言葉。



先生のくせに…



少年ぽく笑う先生が私は大好き。



「じゃあ練習問題の問題やってみて。5分たったら当てるからね〜」



クラスがざわつく。



「え〜!先生ひどいよ〜この練習問題まじ難しいじゃん。前もって言っといてくれればいいのにー…」



「予習してくるのは当たり前でしょ。それに習った問題なんだから出来るに決まってる。じゃあ高田さん(1)ね。」



この練習問題は本当に難しいんだよなぁ。



良かったぁ。
予習してきて。



先生のおかげ。



だってみんな必死になって解いてる。



前のページにさかのぼって公式探したりして…



でもこの解き方って確か先生が前に教えてくれたやつ。



教科書のやり方だと難しいからって言って分かりやすく説明してくれたんだったなぁ。





だからちゃんとメモしておいた人はちゃんと解ける問題。





私、頭はあまり良くないけど先生の授業は誰よりも一生懸命聞いてるんだ♪



「じゃあ(2)は平さんね。(3)はねーじゃあ本郷君ね。!」





窓の外はもうすぐ私の好きなあの夕陽の色になろうとしてる。



あと少しで私と先生だけの幸せの時間。



もう少し。



あとちょっと♪





チョークの音が教室に響く。



私は右端に置いてあった白いチョークを手に取った。





私の愛しいチョーク。



私は問題を黒板に写し終わって席に座った。





本郷君が頭抱えながら前に出て書こうとチョークをつかむ。



私の愛しいチョーク。





それは先生のチョークなのに…





私の先生のなのに…



するとずっと黙っていた先生が口を開く。



「あーそれ俺のチョークだよ。勝手に使うなよ」





生徒たちがどっと笑う。



「先生冷た〜い(笑)」



本郷君は慌ててその横の短いチョークに持ちかえていた。



順番に丸つけをしていく先生。



それだけで愛しい。



結局全部合ってたのは私だけだった。



「平さんは完璧。良く頑張ったね。ちゃんと予習してきたの?」





先生、涼しい顔で微笑んでるけど…





先生がきのう教えてくれたんじゃん!!



まったくイケない先生だよね…♪



チャイムが鳴って先生が時計を見て教科書を閉じる。



「じゃあ今日はここまでです。また月曜日ね〜」



待ちに待った先生との時間。



金曜日は掃除がないからいつもよりも早く会える♪





今日はちゃんと問題解けたし、先生に褒めてもらえる♪



今まで一緒に居たのにもう会いたくて。



早く先生の隣に行きたくて。



私の足はうずうずしている。





髪もメイクも完璧。



よし!!





「失礼しま〜す」





ドアの向こうには私の大好きな優しい先生が…



「ごめん!今日ちょっと用ができちゃってさ…もう帰らないとなんだ。本当にごめんね。あ、気をつけて帰りなね。じゃあまた月曜日にね。」



女の勘てやつに年齢は関係ないらしい。






「…奥さん?」





先生、困った顔してる。





「まぁ…。急にご飯食べに行くことになっちゃって」



「そっか!分かった!!じゃあ先生も気を付けてね。じゃあさようなら。」





ホッとしたような顔してる先生がちょっとだけムカつく。



私が何も言わないって思ってるんでしょ。





言わないよ。



私は絶対先生を困らせるようなことは言わないし、そんなことはしたくないって自分にブレーキをかけてるもん。



それでもやっぱり思ってしまう。



やっぱりズルいよ。



だって先生は奥さんのもの。



毎日先生は家に帰って来て、毎日会えるんだよ。





月曜日も火曜日も水曜日も木曜日も金曜日も。



土曜日も日曜日だって…





だけど私は会えない。



会えるのは週に3回の授業中と放課後の少しの時間だけ。



だから私は知らないんだ。





休日の先生も朝起きたばっかりの先生も。



クリスマスもバレンタインだって私は先生にとっての一番にはなれないの。





分かってる。











先生との関係に先は見えない。



幸せな未来は私たち二人を待ってはいない。



私の一番嫌いな時間。





それは金曜日の夜から月曜日の朝まで。



寂しさと哀しさに押しつぶされぬよう必死にもがく私がいるの。














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