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あぁ 闇よ。
作:不死花 憂助



13


 結局、松谷夕子と僕は付き合っている。正直言って、この辺りの話は恥ずかしいのであまりしたくない。しかし僕の人生を少しでも多く知ってもらうために話しておこう。
 伊藤の勇気ある行動から約一ヶ月が経って、僕や伊藤は松谷夕子と随分話した。僕は毎日の様に彼女がいつもいる学生食堂の隅の席へ行って彼女を笑わせた。僕の両親の話や、アルバイトでの人間関係を面白く、少し嘘も交えて話した。
 そしてそんなある日、僕は授業終わりに伊藤と一緒に煙草を吸って、彼に言った。
 「伊藤、まだ夕子さんの事好きなの?」
 「あ・・う〜ん。多分」
 伊藤は相変わらず煮え切らない男だった。
 「多分か。」
 「慶介は?」
 「絶対。」
 「へへへ」
 僕はこんな会話が恐ろしく恥ずかしかったが、これは彼には話さねばならない事だった。
 「明日、告白する。」
 「本当?」
 驚いている、という感じの反応ではなかった。
 「そうしろよ。慶介ならいける気がする。」
 「伊藤は?」
 「もうした。」
 僕の言葉に間髪入れずに伊藤は答えた。そしてまた笑っている。
 「っていうか今、しろよ。告白、今しろ。」
 「はぁ?何でだよ。別に明日でいいよ。」
 「早いほうがいいと思うよ。松谷夕子の気が変わらないうちに。」
 そしてまた伊藤は笑っている。その細い目が完全に潰れて、あの小憎らしい笑顔が僕を複雑な気分にさせた。
 「じゃぁ。そうする。」
 「へへへ」

 僕はこの日、初めて松谷夕子を電話で呼び出した。彼女は「うん」と返事をして了解した。彼女はこの日も授業で遅くなるらしい、僕は伊藤を先に帰らせて、一人、談話室で彼女を待った。普段は学生が勉強したり、テレビを見たり、基本的に自由なスペースだ。時間も時間なので人は少ない。僕は松谷夕子がたまにここで本を読んでいるのを目撃していた。
 「待った?」
 現れた彼女はどこか緊張している風だった。僕の錯視かもしれない、伊藤にあんな衝撃の事実を言われた後なのだから。
 「ううん。待ってない。」
 「帰ろう。」
 一緒に帰るのも初めてだった。正直、この時はもう何が何だか分からずにただ、行ける所まで行ってみようという暴走にも似た感情が僕を動かした。
会話は全く弾まなかった、お互いにその時を待っていたのかもしれない。お互いに相手の事を理解している故の膠着状態だった。
 そしてその時は訪れる。

夕暮れ時の飯田橋駅のホーム一番端、僕は小さな声で彼女に思いを告げた。














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