二荒さんの休日 ~子供に夢を与えましょう~
ああ、はいこりゃどうも。私、二荒[ニアラ]保手男[ホテオ]という者です。
初めての方、初めまして。何となく気づいた方、お久しぶりで。
私、職業が中間管理職というか、イベント関係というか、サービス業というか、まあそんな業種でして。
やりがいのある仕事だと張り切って頑張っているんですが、つい張り切り過ぎて、しばらく前なんぞ顧客にタコ殴りに会いました。最近なんぞフォークで刺されたりしています。
仕事は結構忙しいほうなんですが、上司は寝てばっかだし、同僚もぐうたらしてるしで参ってますよ。ハッハッハッ、……失礼、愚痴はいけませんな。
まあ、忙しい中でも何とか休日がとれまして、こうして昼間の公園をブラブラ散歩出来るわけなんですが…… おっと?
あのベンチの小学生二人組、六、七才ぐらいですか。なんだかケンカしているようです。これはいけませんな。止めてあげなければ。
……え? 早速営業かける気か? いえいえ、今日は非番、プライベートなんですからビジネスを考えてはいけませんよ。
私今の姿は長身痩躯なエジプト人風イケメンビジネスマンですから、今時子供に話し掛けても職質はされないでしょう。この格好奥様方にも人気なんですよ?
「もしもし、君たち何をケンカしているんだい? 同じ人間なら仲良くしないといけないよ」
「……おじさん誰?」
「……知らない人と話したらいけないんだよ」
なるほど、躾の行き届いた子供達です。
「私は君たちがケンカをしているから心配で見に来たんだよ。良かったらなぜケンカをしたか教えてくれてもいいかな」
「……ケンちゃんが、ポケモンなんか実際にいないって」
「だってポケモンなんか実際にいるわけないだろ! ゲームの中にしかいないよ!」
……なるほど、これは嘆かわしい。子供が夢を見れないとはイヤな時代です。子供の頃に夢を見ないと、大人になっても夢を見なくなります。
それでは夢を叶えるため邪神召喚する奴とか居なくなってしまいますよ。
ここは一つ子供達にささやかな夢を見せますか。
「何を言っているんだい? ポケモンはちゃんとこの世界にいるよ? 君たちの身近にいて役に立っているんだよ」
「おじさん、それホント?」
「ウソだよ! ポケモンはゲームにしかいないよ!」
「ウソじゃないさ。じゃあヒントを出そう。ビーフカレーには何のお肉が入っているかな?」
「ビーフ」
「牛肉だよ」
「そうだね。じゃあポークカレーには?」
「豚だよ」
「豚だね」
「正解。じゃあチキンカレーには……」
「チキンだよ!」
「ニワトリに決まってるじゃん!」
「お見事。じゃあ……
ポケモンカレーには?」
「「ッ!!」」
「ほら、ポケモンはちゃんとこの世界にいて役にたってるんだよ」
無言のまま立ち尽くす少年二人にそっと別れをつげ、私は公園を後にした。
いやぁ、子供って、人間って可愛いなぁ。愛したくなっちゃうよ。ネチっこく。
良いことをした後はお腹がすくものですな。同僚の奥さんから貰った山羊肉があるから、今夜は山羊汁でも作りますか。
それではもしまた機会があれば。
読了ありがとうございます。
好評でしたら連載してみようとか思ったり思わなかったりありおりはべりいまそかり。
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