雨の桜(7/35)縦書き表示RDF


少し、儚い想いを書いて見ました。
雨の桜
作:ドラキュラ



逸話:幸せな夢


「飛天!!あれは何じゃ?」

「あれか?あれは鯛焼きだ」

童が指差した屋台のを馬の手綱を握りながら答える飛天。

店を出てから市場を見て周り初めて見る光景に童は終始、質問を浴びせ夜叉王丸の事を何時の間にか飛天と呼んでいた。

「鯛焼き?」

「あぁ。鯛の形をして中にアンコが入ってる甘い菓子だ」

「ふぅむ」

「食べたいのか?」

思案する童に尋ねる飛天。

「う、うむ。食べた事が無いからな」

「分かった。それじゃ買うぞ」

あっさりと童の願いを聞き入れて馬から降りて屋台に向かう飛天。

童は馬上で見ていた。

何やら店の主人と親しげに話す飛天。

「うぬの主人は随分と民衆に人気があるな」

黒馬の漆黒の毛を撫でる。

馬は小さく鳴いた。

まるで主人は自分の誇りだと言っているようだった。

少しすると飛天が鯛焼きを持って帰ってきた。

「ほれ。鯛焼きだ」

童に一つ、馬に一つ渡して飛天は二つじゃった。

「主、一つ多くないか?」

「俺の金で買ったからな」

童の非難も気にせずにしれっと答える飛天。

「文句よりも食え。熱い時が美味い」

あっ、話を逸らしおったな。

そう思いながら鯛焼きを一口たべた。

口の中に甘さが広がり身体が温まった。

「・・・・美味いっ」

思わず大声を上げてしまった。

これが母上なら

『年頃の娘が大声を出すものではありません!?』

と怒鳴り散らしていたじゃろうな。

「店の親父が特別にお前の鯛焼きに特製アンコを入れたからな」

笑いながら飛天は一口でたべた。

「うんっ。美味い」

あっ、口元にアンコが付いている。

「これ、子供みたいにあんを口元に付けるでない」

童は未だに寝巻き姿だったが、寝巻きの裾で飛天の口元を拭いてやった。

「あんがとよ」

礼とばかりに半分にした鯛焼きを渡してきた。

「童は主の妻じゃろ?これ位は当然じゃ」

「そうだな。妻なら当たり前か」

飛天の言葉が嬉しい。

「なんじゃ?もう忘れたのか?主が今朝、童を屋敷から連れ去ったのじゃぞ?」

「いやー、ただ夢かと思ってな」

苦笑する飛天。

そんな飛天を見て童は願った。

頼む。これが夢なら、どうか・・・どうかまだ覚めないままでいて・・・・・・・・・・・

「・・・・・うむ。当たり前じゃ」

「そろそろ行くか」

「・・・うむ」

童の様子を感じ取り飛天は馬を走らせた。

飛天が前を向いているお陰で童は俯く事ができた。

『例え、何時か覚めるのが分かっている夢幻でも、童は幸せじゃ』

そう、夢でも童は幸せじゃ。













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