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戦国小町苦労譚 作者:夾竹桃

小話 其之壱

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静子が作り、信長が食う

それは信長が上洛して暫くたった頃のとある日。その日、静子は京の民を人夫として二〇人ほど雇った。

「では、始めて下さい」

静子が宣言した直後、雇われた京の民は我先に川へ飛び込む。
彼らの目的は宇治丸、つまり天然の鰻だ。鰻の旬は冬だが、今は初夏に入った頃で旬をかなり逃している。
しかし静子にとって旬など関係ない。彼女は天然の鰻を使って、贅沢な鰻丼を食べたいだけだ。
現代では人口に対して提供可能な天然鰻の数は少なく希少である。
それを使った鰻丼となると五千円は下らない。高校生だった頃の静子の懐事情には厳しすぎるが、戦国時代は死蔵するほど金が余っている。
人を臨時に雇って天然の鰻を集めるぐらい造作も無い。

(しっかし釣るんじゃなくて川に飛び込むとは……パワフルだなぁ)

「捕まえましたぜ!」

腕を組んで彼らのアグレッシブさに感心していると、はやくも鰻を捕獲した人物が駆け足でやってきた。
鰻が入っている木桶を覗きこむと、季節外れの割に見事な鰻が入っていた。

「いいねぇ、季節外れにしては太い。これは報奨を支給しないとね」

そう言うと静子は金が入った木箱を開け。中の金を一掴みする。掴んだ分を小袋に入れると、それを人夫に手渡す。

「ありがとうごぜえます!」

お金を受け取ると彼はそれを懐にしまう。そして鰻を移し替えると木桶を抱えて、再び宇治川へ向かって走り出した。
その光景を見ていたのか、宇治川で鰻を探している人たちが、目の色を変えて鰻を探しだした。

「静っちは気前がいいねぇー」

「貨幣経済にするには、とにかくお金を使わないといけないからね。私は死蔵しちゃうから、どんどん使わないと」

傍にいる慶次の言葉に静子は苦笑する。
彼女は物の生産を担う一次産業従事者の立場でありながら、様々な利権を知らずの内に抱えていた。それらから得られる権益のお陰で、彼女の支出は小さい割に収入が莫大という所謂金余り状態になってしまった。
しかし彼女は金の使い道が殆どない。たまに大金を使うが普段は質素なものである。だから彼女は考えた。死蔵させるぐらいなら、何か派手に使ってみようと。
そこで静子が思いついたのが、現代では絶対に出来ない二段重ねの鰻丼である。
その為に彼女は金を惜しむ気がさらさらなかった。

「さぁさぁ、どんどん捕まえてね」

宇治川にいる京の民に、静子は発破をかける。
最終的に太い鰻が一〇匹集まった所で、静子の鰻乱獲は終わりを告げた。

鰻の泥抜きをしつつ、彼女は昔、どこかのサイトで見た鰻専門店の秘伝のタレを見よう見真似で作る。
四苦八苦しながらも鰻を捌き、熱さに耐えつつ七輪で天然鰻を焼く。
所々焦げてしまったが、ようやく彼女は天然鰻を二匹も使った豪勢な鰻丼を完成させた。

「うむ、旨い」

その出来に信長もご満悦だった。
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