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JACK+ グローバルネットワークへの反抗 一括読み版  作者: sungen
シカゴ編(2月24日~)
32/49

第11羽 速水 ④2月24日 ノアとイアン

シカゴ編は1ヶ月時間が戻って、2月24日から。

速水がいない間のノアの話です。

シカゴ編自体読まなくても大丈夫ですが、読んでおくと後でなるほどーと思うかも。

シカゴフットワークというダンスが出てきます。サイトのリンクを参照して下さい。

二月二十四日。

午後九時…レオンのホームから、速水のアパートメント。


ノアは閉ざされた扉を見た。

この向こうに速水がいる…。


ノアは思いっきり息を吸った。

「――おいエリック!!!今すぐ出てこい!!このアホンダラの豚野郎!!」

扉を足で蹴飛ばしつつ、日本語混じりで怒鳴った。


後ろでレオンとイアンが目を丸くしている。

「なっおい、夜だぞ!」

レオンが慌ててノアを止めた。


…イアンは眉を潜めた。

今すぐエリックに会わなければ一緒に行けないとごねるから、仕方なしに連れて来たが――。


「君の品性を疑う。インターホンがあるだろ。馬鹿か」

イアンはインターホンのボタンを押した。

他の部屋には無い…これは速水でなければプロジェクトが付けた物だろう。

「何ソレ?チッ。寝てるのかな?」「…お前、師匠の影響か?」

ノアは舌打ちし、レオンは呆れた。


しばらく後、インターフォンのスイッチが入った。

「…どなたです」

「あっ。俺、ノア!ねえエリック出て来て!…話が、あるんだ」

ノアは今度は緊張気味に言った。

ブツ、とインターフォンが切れ、三十秒ほど後にエリックが出て来た。


彼は部屋の外に出てすぐに鍵を閉めた。


「…嫌に静かだが、他の医者は?」

「交代で見ています」

エリックは端的に答えた。彼は散々殴られ、一応その手当はしてある。


「…エリック、ハヤミには会えないの?…俺、もうサロンに捕まって、一生外に出られないかも知れないんだ…最後に一目会いたい」

ノアはエリックを見上げ、イアンを見て、誇張気味に言った。

「…」

イアンはまた眉を潜めた。


エリックが口を開く。

「面会謝絶です」

「なっ」

ノアはキッパリと言われた。

「…レオンに申し上げたとおりに、投薬は治療の一環です。ご家族も承認しています」

「―家族?」

ノアは聞き返した。

「ええ。ハヤミはまだ未成年。…当然の措置です。お引き取り下さい」

エリックは、あくまでにこやかに笑い、ノアを飛び越えレオンに冷たく言った。


「…許可しただと?家族が?」

レオンが舌打ちした。確かにこの前、ご家族の許可も取ります、と言っていた。

…脅したのかも知れない。


「だとしても、一目で良いんだ――!まさか…、本当に、そんなに悪いの?」

ノアは蒼白になった。


「馬鹿野郎…、俺…ハヤミ、もっとダンス教えて欲しかった…!日本に遊びに行きたい、マスターのお店に行きたい、トウキョウ案内してって、…ハヤミと約束してたんだ!!」

ノアは涙ぐんだ。

「…エリックっ!ハヤミ、入院って…、どのくらい掛かるの?…ハヤミ、まさか死んじゃうの?」


「いやだよ…だって、だって…、ベスも…!」

エリックの袖を掴み、ノアは項垂れた。そして悔しそうに泣き出す。


「ノア、ご安心を、ハヤミは一月ほどで」

泣き出したノアをエリックはなだめた。

「―、ふうん。そうなんだ」

ノアは気怠げに言った。


顔を上げてノアは笑った。


「一月ね。分かった。じゃあレオン、一月経って連中が居座るようなら、全員殺せば?」

ノアはレオンを見た。

「ああ。…そうするか」

静観していたレオンは、微妙な顔で微笑んだ。

――やると思った、何となくだが。


「エリック、ハヤミを頼んだよ。…何かあったら、本当に―ぶっ殺す。バン!ってね」

ノアはエリックを指さし、クスクスと楽しそうに笑った。


『ノアって素直だよな』

と速水は言っていた。

ノアが素直?そんなの嘘だろ。皆、騙されてる。レオンはそう思っていた。


確かにまっすぐな気性だし、素直でもあるが…、ノアの素直さは、半分ほどは彼があえてそうしている物だ。レオンはそれを知っていた。

過酷な環境の中で、自分とベスを守る為に身に付けた処世術。


…腐らずあえて素直でいる事を選んだノアは凄い。


ノアは、ハヤミ、またね、と言って扉に手を振っている。


「頑張れよ」

レオンは声をかけた。

「ああ。また、できたら連絡する。…イアン、行こう」

「…」

イアンは眉を潜め、ノアについて行った。



残されたレオンは、エリックを見た。

「ま、お互い苦労するな…」


エリックは答えず、閉ざした扉を見つめていた。



■ ■ ■


イアンの運転する車は、滞りなく進んだ。

もちろん周囲には警護の車が引っ付いている。


時刻は午後十時を回っていた。


後部座席のノアは車のガラスに『エリザベス、元気?』と落書きをする。

「エリーどうしてるかな…」


「今日は途中で宿泊予定だ」

イアンが口を開いた。

「え?うん。あとどれくらい?」

ノアが聞いた。

「一時間かからない」


そして着いたのは、とても立派なホテルだった。

「――超すごい!」

ノアはそれを見てテンションを上げた。

「?」

それを見たイアンは怪訝そうな顔をした。

「俺、ホテルに泊まるの初めてなんだ!」


「――何?」

とイアンがまた怪訝そうな顔をした。

豪華なホテルに、というよりは生まれてからホテルに泊まったことが無い、そんなニュアンスだ。


頭の中で、ノアのデータを思い出す。


NOAH―ノア―

十八歳。ジョーカーの隠し子。

四歳まで辺境の教会で育つ。スクールでの成績は全項目トップクラス。

ダンスの才能は大いにアリ、特にリズム感・音感は素晴らしい。

スタイル、ルックスは文句なし。

語学は英語の他にドイツ語とフランス語、ロマンシュ語を習得。

サク・ハヤミの進めで日本語とイタリア語も勉強中だが、イタリア語は後回し。


これはジョーカー本人からの情報だ。

要するに、サラブレット的な逸材だが…。


「…お前、まさかホテルに泊まった事無いのか…?外に出てからも?」

アンダーから出て三ヶ月。もうずいぶん経っているが…。

その間ずっと速水達とは別行動だったらしい。


「…潜伏のためか?」

イアンは眉を潜め尋ねた。それなら納得できる。


ノアがアンダーから出た後、ジョーカーから上層部…トップの連中に『今まで言ってなかったが、実は隠し子がいる』と発表があった。

だから今ではどこのサロンも、トップの連中も、このノアを取り込もうとしている。


当然、排除の動きもある。

それらを躱すとは、さすがジョーカーの息子。中々頭の切れるやつらしい。サロンはそう判断していたが――?


そのノアは伸びをして快活に笑った。

「え。ううん。違う。だって俺、携帯持って無いし、予約の仕方も良く知らないから。ベスが駄目なホテルの見分け方教えてくれたけど…もうどれがホテルかサッパリ分からなくて――、ここは大丈夫なの?何か、豪華すぎて逆にいかがわしくない?」

「…大丈夫に決まってる」

言って、イアンは少し考えた。

このホテルはセキュリティの整ったところを選んであるから多少グレードが高いだけで、いかがわしく見えるはずは無い。


イアンは思考を巡らせた。

まさかこいつは…とんでもない世間知らずか?

スクールの教育はどうなっているんだ?

ジョーカーの息子なら、英才教育を受けたはずだろう…?

いや、先程の様子だと頭はそこまで悪くは無さそうだ。きっと周囲を欺くために馬鹿なフリをしているんだ。


「そう?よかった」

ノアは楽しげに、堂々と真ん中を進む。

だがピタリと立ち止まって側にいた黒服を振り返った。

「?どうした」

黒服が、心配顔のノアに聞く。


「…ねえ入り口、入っても撃たれない?」



「いや、キースがいる」

イアンはそう呟いた。


〈おわり〉

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