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【番外編】アンダー編おまけ1 ゴキブリ退治

「今度は四人部屋か…」

ガスマスクから説明を受けた速水は、どうした物かと思った。


「ベス、個室があって良かったね」「ええ」

ノアはベスと個室の中を見ている。


「ん?トイレは何処だ?」

レオンは風呂場を確認している。

レオンはそのまま出て、部屋を見回す。隣の扉を開けてみる。

「あ、バスと別なのか」

洗面スペースはバスの中で、キッチンは無いようだ。


速水はベッドの一つを見た。淡いブルーのカーテンを触る。

一応天井から床まであるそれは遮光になっていて、透けたりはしないが…。薄い。


「あ、ハヤミはどこ使う?レオン。決めようぜ」

ノアが話掛けて来た。


そして適当に決まった。ノアがベスの個室の向かいを取ったので、速水は個室の隣。

レオンは風呂場の近く。


ベッドは病院にあるような物だった。古くは無いが、新しくも無さそうだ。

ベッドの脇には四段の白い棚があって、下二段は扉付きだ。速水は扉を開けて閉めてみるが、何も入っていない。

コンコン、とノックされた。


「ん?」

待っても開かないので、レオンが開けた。


「エリック!」

速水は入って来た人物を見て言った。

「着替えをお持ちしました」

パンストの彼は段ボール箱を持っている。


レオン達が嬉しそうにした。

「おお、エリック。こっちでも一緒なのか」「良かったわ」

「はい。何かご用がありましたら、ドアを内側からノックして『エリックを出せこの豚野郎!』と大声で叫んで下さい。部屋の外にスタッフが常駐しています」

もちろん速水もホッとした。


ベスが尋ねる。

「エリック何持って来たの?着替えとか?」

「はい。これはベスの分です。まだありますから、持って参ります」


「ここって、相変わらず服だけはまともだよね」

ノアが自分の段ボールを見て言った。

「…ん?タキシードに…革靴?…使うのか?」

レオンも箱を開けている。


「エリック、枚数少ないけどこれだけか?」

速水は尋ねた。どう見ても外着二日分、部屋着二日分、と寝間着二日分くらいしか無い。

後はレッスン着が沢山とインナーだらけ。


「いいえ。ハウスキーパーが毎日、新しい物をお持ちします。足りない場合はお申し付け下さい。洗濯物は各ベッド横のそちらのカゴに。回収はハウスキーパーがベッドメイク時に。または私をお呼び下さい」

「ん、了解ー」

ノアは言った。

「あ…ねえ、エイブは来ないの?」

そしてエリックに尋ねた。エイブはノアの世話係だ。

「ええ。残念ですが…、世話役は四人に一人なんです。彼も来たがっていました」

「そっか。…なら仕方無いか。よろしくね、エリック」


「まあ、世話役がいて良かったな…ン?」

レオンはテーブルの端に立ててあった端末を見ている。

「なにそれ?」「あら、何かしら…」

ノアとベスが興味深そうに見ている。


エリックが去った後、速水はベッドの上で荷物を開けていた。

着替えや、特注の耳栓、必要な薬がちゃんと入っていてホッとした。

「ハヤミ、ねえ!コレ知ってる?」

ノアが呼んだので振り返る。

「ん…あ、タブレットか」

「タブ…?知ってるのか?」

レオンも首を傾げている。

エリックが端末に詳しい情報があります、と言っていたが、どうやら皆知らないらしい。

「えっとこれは、最新型のパソコンで――ちょっと借りる」

椅子に座って、ざっと見る。何が入っているのだろう?


インターネットにはつながっていない…。メールも出来ない。

だが、ネットワークのホストコンピューターからは随時情報が更新されるようだ。

「へぇ…。ハイテクだな」

一通り触って大体分かったので、皆にざっと説明する。


速水に説明を聞いて、レオン達はいじりだした。

「うわっ、すごい!動いた!これがパソコン!?薄っ」

「ほお。…ん?食事のメニューも見られるのか…晩飯は?」

「ここは?…あら、個人でスケジュールが出るのね。グラビア撮影…?ノアはどうかしら。―もう、上手く動かないわ!」

「えっと。かして。あ俺は別に無い。レオンも。あ、ハヤミはナイフ講座ってある…」


速水は運営の芸の細かさに感心した。金かかってるな。

と言うか、こういう端末があるなら、呼び出しもコレで済ませれば良いのに…。微妙にローテクだ。

皆で和気藹々と、真ん中のテーブルで端末を眺める。

座る位置は、自然とベッドと同じ配置になった。


…異変が起きたのはその時だ。


「ん?」

速水が首を傾げた。――気のせいか?

「どうした?」

「いや、…気のせいだ」

速水はそう言った。

そして一応振り返る。どうせ実際には何もいないし、多分いつもの幻ちょ…。


「」

速水は固まった。


「どうした?」

レオンが尋ねる。

「…、」

速水が見ていたのは、ベスの個室の横、つまり自分のベッドの側の、床に近い部分にあった換気ダクト。


速水はバッと立ち上がった。

「うぁあああ!!!エリック!エリックーー!!」

彼は蒼白になって叫んだ。そしてバタバタと扉に一直線。

レオンは後にも先にも、あれほど速水が慌てたのを見た事が無い。


レオンは反射的に振り返って。その量に、

「なにっ!?」と言って椅子を倒してしまった。ダクトから続々、五十はいる。


「きゃぁあああああああああああああーーーーーっ!!」

ベスの悲鳴が響く。

「!!どうしたの…うわ!!?!!?」

ノアが椅子に乗って避けた。

「どうされ――」「っエリック!!殺虫剤!!ゴキブリだ!」

速水が扉の隙間に言って、近くまで来ていたエリックが表情を変えたようだ。

「―ただ今!!」

バタバタと音がして彼は去って行ったらしい。


「おい!お前等!―くそ!開けるぞ!!」「駄目だ!」「なにこれぇえ!」

速水は扉を開けようとしたが、ガスマスクが外で押さえた。

「一体どうした?」「非常事態か?」

ガスマスクが言った。

「いやぁあああーーーーーーっ、コックローチよ!!」

ベスの叫びで何が起きたのかガスマスクに伝わった。


「あっ!おい」

…ガチャン!!と扉が閉められた。


「ベス!個室に避難して!」

ノアは何とか叫ぶベスを安全な場所へと避難させた。

ベスはハッキリ言って虫が全く駄目だ。

「―が、頑張って!」

ついでに幸運を祈って自分も逃げる。ノアもハッキリ言って虫が駄目だ。


「おいっ!ノア」

相手は無数にいる。

「持って来ました!!」

「「エリック!!」」

エリックは一本、どこかからぶんどってきたらしい。


ダクトの側でたむろする大小無数大勢のそいつ等に、どうして速水は気が付かなかったのか?

…そのダクトはカーテンの影になっていたのだ。はじめまとまっていた『そいつ等』は人の気配に反応したのか、気が付けば散り散りになっていた。

――明らかに立て付けの悪い、やたら目の粗い鉄の格子からまだ出て来そうだ…。

出て来た敵はあっと言う間に棚の後ろ、色々な隙間に逃げ込んでしまい、姿が見えない…。


「固い物がいいけど…とりあえず段ボールで塞ごう」

幸い段ボールは沢山ある。応急処置と言うやつだ。


ダクトをのぞいた速水は何かと目が合った。

キュと言う鳴き声。

「ネズミっ?」

「っ…、」

その言葉でレオンは、タンボールをとんでもない速さで千切って、即塞いだ。

どうやらレオンはドラえもんだったらしい。


そして塞いでしまったまま、心底嫌そうにしている。

「おい、ハヤミ!頼む代わってくれ!」

足で押さえている。


「…ちょっと待て。他も見てみる」

速水は他のダクトを点検する。とりあえず逃げて姿が見えないゴキは放置だ。

換気口はいくつかある。

だがやばそうなのは…あとはもう一カ所…。こちらは天井に近い。

どうやらこの二つが古いらしい。他とは素材も違う。…嫌がらせか?

…蜘蛛の巣が張っているが…特に敵は居ない。


「エリック、ガムテープは無いのか?…あ」

…エリックもあまり得意では無いらしい。入り口付近で固まっていた。


「エリック、下がって良い。何かダクトをふさげそうな物とガムテープを」

「い、いえ、私も…」

「別に大丈夫だと思うから、まあ、無理は――」

速水が微笑みながら殺虫剤を床に噴射した。


「コレじゃ足りない。買ってこい。あと固い物」


「はい」

エリックは素直に従った。


■ ■ ■


古いダクトを段ボールとガムテープで塞ぎ、悪戦苦闘の末、何とか大半を始末した。

床は殺虫剤まみれ。棚も動かした。


「…掃除しよう…」「ああ」

グッタリと速水が言って、ちょっと楽しんだらしいレオンが同意する。


エリックが『差し入れた』ほうき、ちりとりでゴミ箱に遺体を入れ、雑巾で床を拭く。

「ハヤミ、まあ、もう居ないか?」

レオンが少し周りを見回して言った。

「ああ、…まあ、塞いだし、残りが居たら殺虫剤でろう」

速水は物騒な返事をした。

「ん。おい開けろ」

レオンがエリックではなく、とりあえずガスマスクにゴミ箱を渡した。


「ノア、ベス、もう出ても良いぞ」

速水はノックしたが、ノアとベスの返事は無い。

…速水が個室をのぞくと、二人は抱き合って震えていた。


「もう居ない、よね…?」

ノアが確認しつつ出て来る。


「俺、あれだけは駄目なんだよ…もういない、いないよね?」

ノアが一人ぶるぶる震える。

ベスは出てこない。

「まあ、多分な」

レオンが言った。



時刻は夜九時を回っていた。レオンは風呂に入っている。

「明日からレッスンか…、ノアは風呂はどうする?先に入るか?」

速水は言って、ノアを見たが、ノアは今日は絶対やめる!と言った。

「だってハヤミ!裸で出くわしたらどうするの!」

「風呂場に殺虫剤置けば―、あと何か固い物で殴れば」

「無理っ、だって固い物って――!?俺、今日はベスのトコで寝る!」

ノアはトイレに消えた。


あ、そうか、クイーンもいるからバス、トイレが別になってるのか…?

一緒だと、風呂ラッシュ中に都合悪いよな。

運営の気遣いとか、ダンサーの要望とかか?

速水はそんな事を考えた。


「ふぅ、お、ハヤミ、悪いな着替えとってくれ」


――レオンが素っ裸で普通に出て来た。丁度良い位置にいた速水に言う。


「…パンツぐらい履け。ベスも居るんだ。ちょっと待ってろ」

毎度の事だが速水は呆れた。せめてタオルとか使えよ。


思いつつ、速水はレオンの段ボールをあさった。


かさ。


「…!」

この気配、いる…。


おそらく、生存者がベッドの下に。――いた。ベッドの脚の所。


何か固いもの――。あった!!

速水は取り出した革靴でゴキブリをカッコーン!と叩いた。


「ちょ!俺の靴!!」

…レオンが叫んだ。



〈おわり〉

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