表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/49

第8羽 ノア ⑤ 速水とサイフォン

ウルフレッドが入ったレオン達のチーム『No.238』は、無駄に順調に勝ち進んだ。

無駄な話題性のおかげで、貯金も貯まる貯まる。

が、ゲテモノすぎてゲテモノの人気は速水よりいまいちだった。


『ジャックを出せ!!運営の犬!』『鬼畜!』『家畜!』『ジャックどこやった!』

『―うるさいわよ!!』

観客に靴を投げつけ、そのまま裸足で踊り出したり。


『さあ!ヤるわよ!この=================

=================================!さん達!』

とても常人には言えないスラングを、鞭を振り回しながら叫んだりする。


だが、踊れば確かに凄い。凄いがゲテモノ過ぎて何とも言えない。

ジャッジがもめて殴り合いをするのが常になっている。むしろそちらの人気の方が高い。


『俺たちの平和的な協議の結果!―勝者!!ウルフレッド!』

…ひたすら微妙なまま、その日も何とか勝った。


「やったわ!!ノア!」「…こっち来るな!」

ウルフレッドに抱きつかれ、ノアが嫌がる。


そしてレオン、ノア、ベス、ウルフレッドで食卓を囲む。勝利の宴だ。

速水はベスの個室を占領し、エリックと、彼の知り合いのもう一人の医者、看護師二名が交代で看病している。

…医者達は通いだが、エリックは泊まり込みで付きっきりだ。

速水はたまにふらりと起きて、椅子に座ってどこかを見ているが、すぐエリックに引き取られて寝るし、今はまた寝ているらしい。時折、小さく無い唸り声が聞こえる。


「ハヤミは『何なら、寝返るのはジョーカーの計画が終わった後でもいいし。ジョーカーが寿命で死んだ後でもいい』そう言ったわ。感心よね!」


──俺、割とお前は嫌いじゃ無い。

速水はそうも言ったと、ウルフレッドは勝手に話し出した。

「黙って食え」「それ三度目」「あら、このステーキ美味しい…」

レオン、ノア、ベスが食事を進める。


運営の計らいなのか、食事のグレードが上がった。

味が良くなったというか、明らかに贅沢になった。

『金は余っているんだから、初めからこうしろ』とレオンがいつもの文句を言う。


「方向性間違ってるってのはハヤミに同意だな。お前、なんで運営に入ったんだ。世界平和って本気か?ハッ。馬鹿のくせにな」

レオンは敵意を隠そうとしない。


これは、ノアとベスには少し意外だった。

レオンは誰とでもそれなりに上手く付き合っていた。

馬鹿にされつつも、いつもどこか冷静。かと思えば、大胆不敵。面倒見が良く、頼れる年長者の余裕を見せていた…のだが。


「馬鹿のくせに、良く食うな、このクソ馬鹿!」

「あら、取ったわね!!?おいコラ殺すぞこの語彙の少ないクソガキ!!」

この二人は、よほど相性が悪いらしい。


「ハァ…」

ノアは溜息付きステーキをつついた。

どいつもこいつもガキ過ぎる。

「…クス」

ベスが隣でクスクスと笑い、ノアの頭を撫でた。瞬間―。


向かいで、ガチャン!と音がした。

「―あっ」

それは事故だった。


「「「!!!!!!!!!」」」

皆が、声にならない声を上げた。


ウルフレッドがサイフォンを床に落とし、壊してしまった。


もちろんかなり不味い。


「どどどど!どうしよう!!レオン!!馬鹿!!」「──まずいわよ!!ちょっと!何やってるの!!」

ノアが床に這いつくばり、ベスが立ち上がる。

「うわぁあ!ヤバイ!マジかっ―この馬鹿っ!!」

そしてレオンがウルフレッドを怒鳴りつけた。


「あら…割れちゃった。でも不味いの?」

ゲテモノは床を見て言った。

喧々諤々の大合唱、―速水が見たら気絶する。病気悪化で再起不能!!

責任取れ今すぐ直せ出来ないなら新しく―!!


「わかったわよ!!」

ウルフレッドもさすがに両手をあげた。



一月半後。


「あれ…、変わってる?」

むしろ色々増えてる?


ようやく自分を取り戻した速水が、テーブルを見て首を傾げた。



〈おわり〉

ちなみにサイフォンというのは珈琲を煎れるガラス製の道具です。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ