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生命装兵器つるはし・セイクレイン 作者:dog
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救助

「……あぁ?」

 もはやこれまでと思って諦めていたミチユキは、呆けた声で驚いた。助かったという事実を飲み込むのに時間がかかってしまう。

「――ミチユキさん、ご無事ですか?」
「ろぁ!?」

 背後から突然声をかけられて、とても珍妙な驚き方をしてしまった。後には誰もいなかったはずなのに、突然に現れたのはビリヴ・フェザンだった。

「ご無事で何よりです。怪我もないようですし……リマリさんのもとへ向かいましょう。ここにいてはリマリさんの攻撃の妨げになってしまいますので……」

「はい?」

 まったく現状を把握できていないミチユキ、とりあえず自分が生きているという事はわかったが、何故にビリヴがここにいるのか理解できていなかった。ビリヴも説明を一切せずに喋りたいことだけを喋っているので、ミチユキの混乱はしばらく収まりそうにない。

「行きましょう、少し我慢してくださいね」

 ビリヴはミチユキの手をとる。同年代の女の子と手を繋ぐという、ミチユキにとってはあまり縁のないイベントであったが、現在のミチユキにこのイベントを喜ぶだけの脳内の余裕はなかった。

 そして余裕皆無なミチユキに、さらなるイベント。

 ビリヴはその場で跳ねる。ぴょん、という効果音が付きそうな可愛らしいジャンプ。ミチユキの身体もビリヴの跳躍に引っ張られる。
 その場での軽いジャンプなんて、滞空時間はごくわずかなはずなのに、ミチユキが繋いでいる右手が、不自然に上がったまま。
 おかしいな、なんでビリヴは着地しないんだ? そういう疑問が脳をよぎった瞬間に、ミチユキの身体は突如として宙に浮かびあがった。
 ビリヴと共に、凄まじい加速で空へと昇る。ジェットコースターの下りと同じかそれ以上の圧迫感が長らく続く。

「なんッ……でえぇぇぇぇぇぇ!?」

「私の≪生命装≫です。空を飛べます」

 えらく簡潔な能力説明は、高度100メートル近い空間にいるミチユキにはうってつけであった。脳が爆発しそうな時に、クドクドと説明されると堪えるだろう。
 だからって、すぐに納得して落ち着けるわけではないのだが。

「びゃああああああああああああああ!?」

 空を飛び始めてからずっと絶叫しているミチユキの命綱は、ビリヴと繋いでいる右手のみ。不安なんてものではなく、できることならビリヴにしがみつきたい願望がでる。やましいことは一切抜きで。ミチユキは神に誓えるだろう。

「ミチユキさん、もう安全です」
「こんな落ちたら死ぬ状況のどこが安全!? 自らの手に命がかかってる! キャー!?」
「少し落ち着いてください。骸は二体いたようですから……リマリさんに任せましょう」

 いた。その表現だとすでに骸は一体倒したようなイメージ。ミチユキは懸命に深呼吸をしながら下をみる。恐ろしいことこの上ないが、先ほどの骸の現在が気になった。

 頭蓋骨、というか頭部そのものが粉砕されている骸がいた。文字通りに粉砕、頭部は跡形もない。首から上がない。

 あの光の矢と思えた何かに救われたということ。それだけは理解できた。
 では、あの光の矢は一体全体何なのか? それはすぐにはわからなかった。

「りっ……り、リマリさんか!?」

 戦国時代の武士が使っていたような、大きな長弓を携えていたリマリをミチユキは発見した。骸から400メートルは離れているであろう位置で。

 長弓はきっと≪生命装≫、だろうとミチユキは考えた。≪生命装≫なら、あのくらいの攻撃が出来てもおかしくない、理解はできないが。
 400メートルという射程距離からしてべらぼうだが、あの位置から矢が真っ直ぐ飛ぶとか色々、ミチユキには詳しいことがまったくわからない。たぶん≪生命装≫のおかげなんだ、程度にしかわからない。

「リマリさんのところへ降ります、念のためにゆっくりと降下しますが、くれぐれも落ちないでください」

 ――言われなくても、ミチユキは声には出さない。声を大にして叫びたいが我慢。

 パラシュートでの降下なんてミチユキには経験がなかったが、きっとこんな感じなんだろうなと思えるくらいに、ビリヴは優しくゆっくりと地面に降ろしてくれた。ミチユキは下を見るのが怖くなっていたので、眼を閉じていた。皮膚に伝わる風の感覚だけでゆっくりだとわかった。

「もう眼を開けてくださってもいいですよ。地面に到着してます」

 ビリヴの声を信じて、ミチユキは目を開ける。すでに足は地面に接っしているのはわかっていた。ミチユキが眼を開こうと思ったら、ビリヴが先に言っただけに過ぎない。

 ミチユキの目前には、古めかしい車のような乗り物。ジープをかなり古臭くしたような見た目の乗り物だった。
 当たり前のようにオープンな車から身を乗り出して長弓を携えているリマリをみる。空色のツーサイドアップの髪が風に揺れる。そんなに伸ばしていない、短めの髪だがそれでもたなびくくらいに程よく長い。
 美しい。それだけの言葉しか見つからないのが恥ずかしいくらいに、ミチユキにとって今のリマリは綺麗であった。
 長弓と美少女は、思った以上にベストマッチ。ゲームなどの二次元の世界でしかお目にかかれず、しかもそれに萌えといった感覚を見いだせなかったミチユキでも、リマリの姿をみて理解した。

「ミチユキ君、しばらくそこでじっとしてて。後で話があるから」

 ミチユキを引き留めて、リマリは同じ車に乗っていた、軍服らしきものを着用していた二人の男たちに指示を飛ばしていく。

 部下のように働く男たちには業務的に、事務的に指示していた。
 ミチユキに対しては明らかに強めの口調。脅しているようにも聞こえる。はっきりと区別されていた。

「リマリさん、ミチユキさんは充分なくらいに恐怖体験をしていました」

「だから何? 勝手をやった……しかも骸との戦いに飛び込んでいった。誰の許可も得ずに頼まれたわけでもないのに。恐怖体験をするのは当然、しかるべき」

 ビリヴはこれ以上何かを言うとリマリの気を逸らすと思い、何も言う事はなかった。ミチユキはすでに二人の雰囲気に気圧されて何も言えなかった。

「すぐにもう一射して、帰る。待たせはしないから」
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