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第八十四話 広告塔

 ここはメイガス王国の上空、一人の少女が浮いていた。

 その少女は黒いゴスロリを着ていたミディと似た白いゴスロリを包み、銀と青が混じった髪が風で揺れている。

 その正体はレイであり、ゼロの妹でもある。






「……ここはお兄ぃが初めて来た、街だったね……」




 レイは周りには誰もいないとこで独り言を呟いていた。

 レイは街や人間に対しては何も感情を浮かべることはなく…………




「……ここが終わったら宣戦布告を……、王者能力キングダムスキル禁咒王グリモア』よ、我の力を示しよ……!」




 レイの手元に一冊の本が現れ、続いてレイの浮く場所に陣が浮かぶ。








「”天地崩壊カタフロスト”……!」




 レイの王者能力が発動し、天地が光に包まれるのだった。

 その瞬間にまた沢山の人が消えたのだった…………






◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆






「な、何だ!? あの光はっ!?」

「え、向こうって……」

「メイガス王国がある方向だよね……?」

「っ! 急いで向かうぞ!! 何かが起こっていやがる!!」


 依頼でジガルド街に向かっていた勇者パーティがメイガス王国に戻っている時、輝く光が見えていたのだ。

 歩いてあと二時間すればメイガス王国に着いていたはずのカズト達だったが…………




「あの衝撃……、間違いなく襲われていやがる!!」


 少しすると地震が起き、すぐに止んだ。

 これは敵の攻撃だとガイウスは予測した。




「くそっ! またアイツらか? 最近、活動が激しくないか!?」

「叫んでいる場合があったら足を動かすのよ!」


 マギルが叫び、テリーヌが急かす形になり、カズトは…………




「…………」


 無言のまま、光が起こった場所を睨んでいた。長旅で疲れがあるはずの勇者パーティだが、足を止めずに走って向かって行くのだった。






 そして、一時間後…………




「な、何だよ……、ここがメイガス王国なのか?」

「跡形もないわ……、どうすればこうなるのよ!?」

「…………く、クソがぁぁぁ!!」


 ようやく目的地に着いたのだが……、そこには何もなかった。

 そう、言葉通りに何もない。平らな地面しかなかったのだ…………




「どうして、こんなことをするんだ……? ここを消した奴は跡形も無くして、何がしたいんだ!!」


 カズトは地面にドガッと、殴りつけるが、何も変わらない。殴りつけたからって街が戻るでもない。

 だが、カズトは殴らずにはいられなかったのだ。

 呆然とする者、怒りに震える者に別れていた時に、そんな勇者パーティに声を掛ける者がいた。






「……ようやく、来たね……」

「き、貴様は……!」




 たった一人の少女が空中に浮いている。

 浮いていることからただの少女ではないと理解し、戦闘体勢に入る勇者パーティ。

 少女は気怠そうに勇者パーティを見る。




「ここを消したのは……、お前か……?」

「……そう。街も人間も森も全て、消したのは私……。私は……」

「貴様ぁぁぁ!!」


 レイは浮いているからガイウスの拳は届かない…………と思ったが、拳を撃ってきたのだ。

 音速を越え、空気を殴って聖気も纏まった空気の拳がレイに撃ちだされた。

 だが、レイは一冊の本を手元に出し、それで防いだのだった。




「な、ただの本じゃないな……?」

「……話の途中で攻撃するのは失礼だと思わないの……?」

「敵なら先手を打ってでも倒すのは普通だろ?」

「…………それは確かにそうだね……、私の方が格上だもね……」


 レイはうんうんと理解するような振る舞いをする。その顔は変わらず無表情だったが。




「……改めて、私はレイと言う。 何故、ここを攻めたのかは……」

「また我が神の命令とか言うんだろ? それは聞き飽きたんだよ!!」


 話を遮るマギル。

 カズトとテリーヌも武器を構えてレイに攻撃しようとするが、次の言葉で動きが止まった。






「……私のお兄ぃの命令だから」

「は?」

「お兄ぃ……?」


 その言葉がここで出るとは思わず、動き始めていた足が止まっていた。




「お兄ぃだと? 貴様は首謀者の妹か?」

「……うん、もう教えてあげる。首謀者をね……、もうわかっていると思うけど……」

「やっぱり……、ゼロと言う者が首謀者だったか」




 今まで確信していたのだが、たった今、百%で確信した瞬間だった。




「……貴方達のこと、今はまだ生かしてあげる。……広告塔になってもらう、つもりだから……」

「広告塔ですって?」




 自分達を生かして広告塔にすると言われてもピンが来ない。

 レイが答える前に、カズト達は急に現れた者の『威圧』によって、地に膝を着けさせられていた。




「なっ!?」

「身体が重い……?」

「何だ!? 大きな力に押し潰されてる!?」

「貴様、急に現れたと思ったらいきなり威圧かよ……?」


 ガイウスだけはすぐに気付いたようだ。三人はレイに意識を向けすぎて、威圧を発した者を見つけてなかったが、ガイウスが声を出したことによって意識に捕らえることが出来た。

 レイの隣に、いつの間に現れた者がいた。

 そう…………






「……私のお兄ぃ、魔王になったの。ね? お兄ぃ」

「ああ。我が妹よ、お疲れだったな」


 ゼロはニヤッと口を歪める。

 一度だけ見たことがあるカズト、マギル、テリーヌはゼロの姿が違うことに気付いたが、その雰囲気から間違いなくゼロだと理解していた。




「ん? ……ああ、この姿か? これは魔王になった時、姿が変わった。それだけだ」


 カズト達の目に疑問を感じ取ったのか、ゼロは簡単に説明してやっていた。

 ここまで話せば、広告塔の意味は理解出来るだろう。




「貴様が、今までいくつかの街や村を潰した首謀者であり、ゼロと言うんだな?」

「お前は見ない顔だな? 三人は会ったことがあるから知っているが」

「ワシはここのギルド長をやっていたガイウスだ。ようやく貴様に会えたな……?」

「ふーん、お前はこの四人の中で一番強いみたいだな?」


 ゼロはガイウスのステータスを見ていた。

 ゼロの知らないスキル、『聖気』などもあって覇気も感じられたから四人の中で一番強いとわかった。

 だが…………




「エキドナよりさらに下だな……」

「エキドナだと?」

「……いや、こっちの話だ」


 ガイウスは理解していた。ゼロと戦ったとしても、万の一つにもこっちが勝てる可能性なんてないと。

 今までの経験が目の前の敵からすぐに逃げろ、仲間を捨ててでもだ! と本能が訴えていた。


 そんなことはゼロにとってはどうでもいいことで、話を続ける。




「お前らは生かしてやるから、俺のことを広めるがいい。世界征服を企む魔王とな! 俺を殺したいなら俺の拠点を見つけ、殺しに来るがいい……」

「……ゼロは人間じゃないのか?」


 カズトが今まで気になっていたことを聞いてきた。




「前の姿は間違いなく、日本人だった。なんで人間のお前が人間を殺して魔王になって、世界征服を企む? 僕にはそれが理解出来ないっ!」

「お前に理解してもらう必要はない。ただ、お前は俺がお前の敵だとわかっていればいい。わかりやすいだろ? それに一つ、誤りがあるぞ」

「あ、誤りだと?」

「ああ。俺は人間ではない。いや、元人間だと言えばいいかな? 日本人だったが、ここに魔物として転生したんだ」


 転生と聞いて、そんなことが有り得るのか一瞬、混乱したがゼロが嘘をつく理由がないことから本当のことだと理解する。




「まさか、レイ……、妹も転生者なのか?」

「いや、レイは俺が魂を持ってここに生まれたから死体集合体に魂を入れただけだ」


 また知らない言葉が出た。死体集合体? それも聞きたかったが…………




「情報はこれくらいでいいだろう。この情報を広めるがいい。俺達は少しずつ侵略していくからな……」

「……私達は強いよ、お兄ぃは必ず世界を征服してくれる。私はお兄ぃについて行くだけ……」


 その言葉を残し、ここから去ろうと足元から陣が浮かぶ。

 カズトはまだ話が終わってないと、声を出そうとするが、もう二人は転移してここからいなくなっていた。




 残された勇者パーティはしばらく何もせず、立ち尽くすしか出来なかったのだった…………







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