第七十三話 フォネス&マリア対ナーズ
はい、どうぞ。
ナーズが希少スキル『血統者』を発動し、自分の血で”血令戦士”を発現したが…………
「血の兵は私がやるわ! ”炎龍爆撃”!!」
血で造られた兵なら、物理攻撃は効かないと予測し、フォネスが炎の龍を沢山造り出した。
炎の龍が血の兵に絡み付き、自爆した。
この攻撃で”血令戦士”は全滅したのだった。
「えっ、もう終わり?」
「手応えがないですね……」
ナーズが自分の血を使ってまで生み出した兵だったが、あっさりと倒してしまって、訝しむ二人。
「凄い威力ですね、これでは消えてしまうのはわかっていたことですね」
「どういうこと……?」
なら、何故この技を使ったのかは…………
「よし、手に入れましたか」
「えっ?」
「何を……?」
よく見ると、ナーズの視線にはこっちを全く見てなかった。
なら、何を見て、独り言を呟いでいたのかは…………
「外だ!!」
急にエキドナと剣で打ち合っていたゼロが叫んだ。
ゼロはナーズが何をしようとしていたことに気付いて、二人に教えたのだ。
「言ったでしょう? 手に入れたと…………」
ドバァァァァァァン!!
急に天井の一部が崩れてそこから出てきたのは…………
「…………血?」
「そんな、沢山に……」
出て来たのは赤い液体、フォネスの言った通りに血だった。
しかも、二人を包めるほどの量が天井を壊して、中に入り込んでいた。
何処から沢山の血を手に入ったのか、マリアは疑問を浮かべていた。
ゼロだけは気付いていた。外から出て来たならば、一つしかないからだ。
「それは1000人の部下の血だろ?」
「まさか……」
「なるほど……」
ゼロの答えにフォネスも気付き、マリアは納得していた。
「気付いたか。だが、もう遅い!!」
その言葉が答えだった。1000人分にしては少ないように見えるが、ナーズにとっては充分だったようだ。
おそらく、まだ向こうも戦いの途中で全滅してないからだと思う。
「私の『血統者』は、触れた血を操ることが出来る」
「触れたって? 貴方はその血に触れてないじゃない……」
「あ、”血令戦士”は……」
「そうだ、メイドの方は気付いたようだな?」
”血令戦士”を発動した理由は、二つあったのだ。
一つ目は、少数の兵を外に行かせるため。
外に行かせた血の兵は、人型ではなく、飛べるように蝙蝠の形にして、大きさも蝿と変わらない。
二つ目は小さな血の蝙蝠を外に行かせるために、囮にしたのだ。
沢山の兵が出て来たら、そっちに目が向いてしまうだろう。
そこで、小さな血の蝙蝠が外に出て、死体から流れる血に触れて行っていたのだ。
そして…………
「ふふふ、ふはは!! 見せてやろう。私の実力をなっ!!」
大量の血がナーズに向かっていく。
そうはさせないと二人が動くが…………
「変身中に手を出さないのは常識だろうが。”紫電”!」
横からエキドナがナーズの邪魔をされないように、二人の手前に雷魔法を放たれた。
「くっ!」
「邪魔を……」
「そっちもその男から助言をもらったんだから、それぐらいは許してもらうぞ」
確かに、ゼロから助言をもらっていたのだが…………
「おい、変身中に手を出さないのは妄想の中にしとけっ!!」
「これから面白くなりそうなとこだろうが。攻撃を当てなかっただけでも有り難いと思えよ」
ゼロもエキドナも魔素から作り出した剣で打ち合う。
両方とも、剣だが、ゼロは両刃剣でエキドナはレイピアに似た剣を使っていた。
レイピアの見た目は細いが、魔王エキドナの魔素で造った剣であり、濃縮されていて簡単に折れそうはなかった。
(さすが、魔王だな……)
『……こっちも負けていない』
剣技は長く生きてきたエキドナの方が上だが、ゼロはレイの助けもあって、互角に戦えている。
ゼロとエキドナが火花を散らしている時、ナーズの方では…………
「邪魔されたせいで、終わったみたい……」
「仕方がありません。そのまま戦うしかないですね」
フォネスとマリアはエキドナに邪魔されたせいて、ナーズの変身は終わってしまったのだ。
今のナーズの姿は、騎士そのものだった。
だが、全てが血で出来ており、深紅の鎧と言えるほど赤かった。
「待たせたな。”紅鎧”の力を見せてやろう」
ナーズの声には、自信といった強い心情が含んでいたのがわかった。
あの鎧はナーズにとっては最強だと信じている物だろう。
「行くぞ!!」
鎧から血の槍を作り出し、背中から生えている翼を羽ばたき、フォネスとマリアに向かった。
「そう簡単に近付かせない!! ”炎壁”!!」
「”影鋭利”!!」
フォネスは炎の壁を作り出し、突き破っても、マリアの影の刃が迫ってくるのだが…………
「そんなので止められるわけないだろ!!」
炎の壁を簡単に突き破り、影の刃も手に持つ槍で振り払われてしまう。
「止まらない!?」
「こっちに!! 『影転移』!!」
一瞬も止まらないナーズに驚きながらも、マリアは『影転移』を使い、その場から転移して槍の特攻を避けたのだった。
ドガァァァン!!
槍が当たった場所には、クレーターが出来ていた。
二人の攻撃で槍の特攻を少しは邪魔していたはずが、こんな威力をたたき出していたことに、冷や汗が出たのだった。
「どうしてこんな威力が……?」
「マリア、避けて正解だったみたいだね……。鎧は硬いみたい」
「さっきみたいな熱量では蒸発しないみたいですね。フォネス、最大攻撃は何秒かかりますか?」
「30秒あれば……」
「30秒ですか……、マリアが何とか止めてみますので、やってください」
「わかったわ」
相手に聞かれないように、小さな声で相談する二人。
マリアが足止めをして、フォネスの最大攻撃でトドメを刺すことに決めたのだった。
さっきみたいな技程度ではあの鎧を壊せないとわかったのだから、フォネスの最大攻撃に賭けることにした。
「頼みますよ」
「マリアこそ、生き延びるのよ?」
「わかっていますよ」
生半可な動きでは、生き残れないのだから、集中を最大まで上げ、マリアだけで目の前の強者に挑むのだった…………
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