表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
69/174

第六十八話 再来

お待たせましてすいません。

はい、どうぞ!



 ジガルド街に向かった勇者カズトの時からしばらく遡る。




 ジガルド街を潰したゼロ達は拠点に戻ろうとしていたのだが…………









「ホホッ、お久しぶりですな!」






 召喚陣の前で待機している老人の執事がいた。

 その老人の執事は前に出会ったことがある。

 そう…………




「今度は何の用だ……、ロドム?」


 目の前にいる老人の執事はミディ・クラシス・ローズマリーの執事、ロドムだった。

 前にダンジョンを造った時に出会ったことがあるのだ。

 召喚陣の前で待機していたのは、ロドムは召喚陣を使って拠点に入れないのだから。

 前は配下の影に寄生していたから入れたのだが、一人だけでは入れないようで、ゼロは密かにホッとしていた。


 フォネス達はロドムのことを知っていて、ゼロが警戒していないから何もしないが、初めて出会うミーラとヨハンは警戒MAXで武器を構えてゼロの前に出ていた。

 ミーラは剣を抜き、ヨハンは紙を指に挟んでいた。




「二人共、下がれ」

「知り合いでしょうか?」

「こんな怪しい奴、知り合いというか、変質者にしか見えないのよ!」

「へ、変質者…………」


 初めて出会う人に変質者と言われて落ち込むロドム。




「残念ながら、知り合いだ。そちらに敵意はないから下がれ」

「わかりました」

「むぅっ……」


 ヨハンは御意にと下がり、ミーラはしぶしぶと下がる。

 ミーラはまだ警戒を解いてないが、ミーラから見たらゼロを待ち伏せしていた男、敵意は見えなかったが、好意を感じたため、そっちの方で危険だと思っただろう…………

 変質者と言われ、まだ落ち込んでいたロドムだったが、ゼロは気にすることもなく、話を続ける。




「おい、いつまで落ち込んでいないでさっさと用を話せ」

「慰めもなしですか、ホホッ……」


 ゼロは鬱陶しいと感じたが、無視してジッと待つだけ。

 ようやく立ち直ったのか、話し始めた。




「ホホッ、変質者と言われるのは初めてでしたよ。で、話は長くなりそうなので、拠点に招待して頂いても?」

「変質者を中に入れるわけないでしょ!!」


 またミーラが騒ぐが、他の配下達は止めない。

 暗黙にも、ミーラの言葉に同意しているからだ。

 ゼロはしばらく考えて出した答えは…………






「……はぁ、暴れないならいいだろう」

「ゼロ様!?」


 ミーラは危険ですよ!! と訴えてくるが、ゼロはミーラの頭にポンと載せて宥める。




「大丈夫だ。もしもの時は、お前達が守ってくれるだろ? 俺はそう信じているさ」

「ぜ、ゼロ様……、は、はい! アタイは命を懸けて守ります!! そこの変質者、何かしたら即潰すからね!!」


 頼られていることが嬉しいのか、ミーラは顔を赤くしていた。

 話が纏まったとこで、ロドムは配下の影に寄生して拠点の中にはいることに…………






◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆






「で、今はまだ何も出せないが、構わないな?」

「ホホッ、確かに何もないですね」


 完全に無いわけではなく、応接室みたいに長机や椅子ぐらいはあるが、それだけなのだ。

 ここはロドムみたいな客が来た時に使う応接室であり、一応造っておいたのだが、すぐに使うとは思わなかった。

 時間があれば、潰した街からお茶や紅茶などの元を取りに行くが、今回は死体だけで『収納』が一杯である。

 なので、今、飲み物で出せるのは水ぐらいしかないのだ。




「ホホッ、紅茶ならありますが、飲みますか?」


 そう言って、ロドムは影から紅茶セットを出していた。

 ロドムは影に関するスキルを持っていて、寄生して敵の拠点に侵入したり、収納みたいな能力もあるようだ。

 まだ隠された能力もありそうだが、今は気にしないでおくことに。




「悪いな。では貰おう」

「マリアが毒味しますのでお待ちを」


 出された紅茶を毒味するマリア。

 マリアは『毒・麻痺無効』を持っているので毒味をしても問題はない。効果は受け付けないが、入ってないかはわかるらしい。




「はい。毒はありません」

「ああ、ご苦労。で、話があるだろ?」


 ゼロは無意識だが、マリアが口に付けたとこで飲んでいたため、気付いたマリアの頬は僅かに赤くなっていた。

 ゼロは見てなかったから気付かなかったが…………




『……鈍感……』

(何が!?)


 レイにまた言われてしまったが、ゼロは何故、ここで言われるかわからなかった。


 そんな会話をしていたゼロを余所に、ロドムは話し始める。




「では、直球に言いましょう。力を貸して欲しいのです」

「力を? 詳しく説明しろ」

「実は……」


 簡単に説明してもらったら、ロドムの主であるミディ・クラシス・ローズマリーがある情報を掴んだようで、その内容は一柱の魔王が魔王内での誓約を破ったことがわかった。

 その魔王を始末し、新たな魔王を生み出せとロドムに命令を出されたのだ。




「……で、新たな魔王の候補は俺か?」

「はい。前に魔王の野望をお持ちだと聞きましたし、実力は充分かと」

「実力は充分だが、今のままじゃ魔王になれないと聞こえるな?」

「ホホッ、そこに気付きますか。はい、特別な条件が必要になります。前はまだ実力が不十分だったので教えられませんでしたが、今は成霊体レイスの魔人になっていますからね」

「ふむ……」


 確かに、前のゼロでは、ロドムにギリギリ勝てるかの実力だったから、とても魔王の器ではなかっただろう。

 今ならロドムと戦っても勝つ自信はある。

 いい機会なので、その条件を聞いてみることに。




「で、条件とは?」

「言葉で言うのは簡単ですが、やるのは難しいでしょうね。何せ、魔王を倒さなければ、魔王になれないのですから……」

「それが条件なのか?」


 それでは、魔王の数が決まっていて、増えることはないではないか?

 確かに実力が上である魔王を倒すのはただの魔人では難しいかもしれないが、初めて魔王になった者はどうやって魔王になったのか疑問が浮かぶ。




「正確には、魔王が持つ『魔王の証』が必要になります」

「『魔王の証』だと? それは物なのか?」

「ミディ・クラシス・ローズマリー様の話では、朱い球体のような物と聞いています」


 『魔王の証』は魔王の中でそう言っているだけで、本当の名称はわかっていない。その『魔王の証』を持つ者は魔王となり、それを持ってこの世界に生まれてくる者がいるようだ。

 ミディ・クラシス・ローズマリーも『魔王の証』を持って生まれた魔王であり、世界最強と呼ばれるようになった魔王なのだ。

 ちなみに、『魔王の証』を持って生まれたと言っても必ず全員が強いとは言えない。すぐに勇者に討伐されて壊されたり、他の魔物に殺されて奪われてしまうこともあるらしい。

 今、『魔王の証』を持っているとわかっているのは十二人の魔王だけだ。

 マリアが前に説明してくれた魔王の情報は人間側が知っている情報であり、教えられた数より少し多かった。

 未踏地で活動する魔王もいるため、知らなかったのは仕方が無いだろう。

 そして、これで繋がったと思う。




(成る程、俺達に今の魔王を殺させて魔王にさせようとしているわけか……)

『……そうみたいだね……』


 これで魔王になるための条件はわかった。

 だが、ミディ・クラシス・ローズマリーの思い通りに動かされるのは気に入らないとゼロは思っていた。




『……だけど、他に方法がない……』

(……はぁ、そうだよな。魔王の居場所を知らないしな……)


 そう、ゼロは今まで街に行ったが、魔王の居場所を知ることが出来なかった。

 大きな王国にいる王様なら知っているかもしれないが、ゼロはただの冒険者でしかないから簡単に会えるわけでもないし…………




「聞くが、ミディ・クラシス・ローズマリー本人が俺達を指名したのか?」

「いえ、ミディ・クラシス・ローズマリー様は特に何も言っていませんでしたので、私が決めました」

「ほぅ?」

「ホホッ、私は貴方に何かを感じたのです。何かを起こしてくれそうなのをね…………」


 朗らかに笑うロドム。

 何か含みがありそうな感じだが、ミディ・クラシス・ローズマリーの指名ではないなら、配下になれ! とかの面倒なやり取りもないだろうとゼロは思った。

 ミーラが感じた好意はこういうものだろう。




(こっちにデメリットはないし、請けるか?)

『……待って、敵の魔王の実力がわからない。そして、……ロドムは戦いになったら、こっちを手伝うの?』

(……確かに、俺達が勝てると判断したから協力を申請したのも考えられるが、ロドムの方の戦力も聞いたほうがいいな)


 とりあえず、詳しい情報を聞いてから決めたほうが良さそうだと考えた。




「請ける前に、戦力を聞きたい。勝てる戦いしかやりたくないのでな」

「ホホッ、それは最もなことですな。では、説明させて頂きます」


 ロドムが説明してもらい、わかったことは…………




 敵の魔王は”緋眼の女帝”と呼ばれている吸血鬼ヴァンパイアの魔王だ。

 名はエキドナ・キス・スカーレットと言い、配下は1000人以上を持っていると。

 ロドムの話によれば、ロドムと他の仲間が1000人の配下と相手をするからゼロ達は魔王エキドナ・キス・スカーレットとその側近の数名を相手にするだけでいいと。





(流石に、上位魔物や魔人が混じっている配下の1000人を相手するのは骨が折れるからロドムに任せるか……)

『……うん、その方がいい……。問題は……』

(魔王本人と側近の実力か……)


 流石に、そこまでの情報はロドムは持っていなかったようで、実力がわからないまま挑むことになりそうだ。

 だが、ゼロも配下達も強い。

 人間であるマリア以外はもう魔人になっており、そうそう簡単に負けない自信はある。

 しばらくゼロはレイと相談して…………






「わかった。請けよう」

「ホホッ、了解しました」


 ゼロは他の魔王の居場所を知らないし、他に方法はなさそうなので今のチャンスを逃さずに請けることにしたのだった。




「皆、これからさらに大変なことになりそうだが、着いてくれるか?」

「「「いつでもゼロ様の道に!!」」」




 聞くまでもなかったようだ。

 全員は初めからゼロの進む道に行くと決めているのだからだ。




 しばらく話し合ってから、ロドムは主の元に一度戻って、一週間後に合流することに決まったのだった…………







感想と評価を待っています。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ