第三十四話 ダンジョンの中身
はい、どうぞ。
ダンジョン作成が終わったゼロは、地上に戻り、配下達と合流した。
やはり、三人は地震に驚いたようだ。
「ま、まさか、地震は主が起こしたのですか!?」
まず、口を出したのはフォネスだった。
後から、二人からも…………
「地震が起きるなら、先に教えて下さいよ!!」
「うー、ビックリした……」
と、言っていたが、ゼロはいつも通りの態度で答えてやった。
「ああ、俺がやったことだ。しかし、こんな地震が起きるとは予測してなかったから仕方がないだろう? ビックリした程度で済んだならいいだろ?」
予測してないのは嘘だ。
驚かしてやろうとレイと決めていたので、言ってないだけだ。
それに、三人が地震の事故で怪我をするとは思ってないので、ビックリしただけならいいだろ? と言ったのだ。
「むぅ、予測してなかったのですか……」
フォネスだけは門番と話した時は嘘ばかり話していたのでその姿に重なって見えたのだ。
だが、証拠はないし、二人も予測してないなら仕方がないと納得していた。
「まぁ、いいだろ? 中に入るぞ」
「どんな風に作ったのですか?」
「見ればわかるさ」
ゼロは配下達に中を案内してやる。
まず、入口からは迷宮の道になる。
「ここからは地下一階で、侵入者を排除するために、迷宮になる」
ゼロとレイは、地下三階まで作成したのだ。
地下一、二階が迷宮になっており、地下三階がゼロの住家になる。
迷宮に魔物を放す予定だが、今はまだ必要ないだろう。
「えっと、迷宮を作ったのは凄いですが、どうやって地下三階に?」
「まさか、毎回迷宮を突破しないとダメと言わないよね……?」
「それは最もな質問だな。これを使うから安心しろ」
そう言って、ゼロから三人に渡したのは、先程のクリスタルより小さなクリスタルだった。
「これは……?」
「それは俺が作った物だ。魔力や魔素を込めればそれぞれの個体が登録されて、転移陣を使えるようになる。登録したら、一度外に出るぞ」
フォネスとシルは転移陣と言われてもピンと来ないのか、首を傾けていた。
マリアだけ転移陣のことを知っていたようで、目を開いていた。
三人の魔力と魔素がクリスタルに込められて、登録は完了した。
それらを本体のクリスタルに吸収してからまた地に落とし、外に出た。
「あそこだ。場所を覚えとけよ」
「はい、これが転移陣と言うものですね」
「転移陣って、どういうものなの〜?」
入口の近くにある森の中に入っていくと、光っている魔法陣のような物があった。
乗ってみればわかると言葉を残して、ゼロは先に転移陣の上に乗ると…………
「消えた!?」
「え、どうなっているの!?」
転移陣のことを知らない二人は驚いていた。マリアだけは転移陣のことを知っていたので、それほど驚かなかった。
「マリア達も続けて行きましょう」
マリアが先に乗って、先程のゼロの様に姿が消えた。
フォネスとシルはあの陣がどういうものなのか、理解して二人も陣の上に乗った。
森の中から二人の姿が消え…………
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「ようやく来たか」
始めに聞こえたのは、ゼロの声だった。
目をつぶっていたフォネスとシルはゆっくり目を開いていくと…………
「わあっ……」
「おー」
「…………」
フォネスとシルは目に見えたものは驚くものだったことに、声が漏れていた。
沈黙しているのは、マリアだ。
「説明しよう、ここは地下三階であり、俺達の住家になる」
送られた先は、地下三階であり、ここの部屋はエントランスのように広い部屋だ。
仲間が増えた時に、会議が出来るように広く作ってある。
もちろん、ゼロが目立つようにお城みたいに高い位置に椅子が設置されている。
今はまだ自分も含めて四人しかいないから、使う機会はないが、とりあえず作ってみたのだ。
「ここの部屋は迷宮を通り抜けた者があの扉から入って来れる場所だ。つまり、玄関のようなものだ」
「凄く広いのですが……」
「ああ、配下が増えたらこれくらいの広さが必要だろ?」
この『創造者』は、ゼロの魔素の多さに応じて広さの限界がある。
つまり、ゼロが強くなれば、このダンジョンはさらに広くなるのだ。
「これがあれらのスキルを統合してダンジョンを造るなんて凄すぎですよ……」
「マリマもそう思う。スキルを吸収出来るだけでなく、統合も反則レベルですよ!」
「自分もびっくりだよ〜」
それぞれが感想をいってくる。主にダンジョンのことではなく、ゼロの能力についてだが……
『創造者』は、今まで集めたスキルから造ったものであり、その材料になったスキルとは……
『形態変化』、『魔力共有』、『座標指定』…………
といった三つのスキルを統合して、『創造者』を造り出したのだ。
『形態変化』は、スライムが持っていたスキルであり、身体の形を変えるスキルだが、レイは身体ではなく、地殻を変化させる効果に造り変えたのだ。
『魔力共有』は、地殻を変化出来る限界を無くすために、ゼロの魔素の大きさ合わせて、広さを弄れるように共有したのだ。
『座標指定』は、指定した場所に物を送るスキルだが、レイの頑張りによって『転移』が出来る陣を作り出したのだ。
レイが作り出した転移陣は、身体の具合などのリスクなしで生き物を送ったり、拠点に戻ったりすることが出来るようになったのだ。
その変わりに、誓約がいくつか生まれてしまったのだ。
まず、一つ目は陣を設置できる数は拠点にあるのも含めて、三つだけ。
二つ目は設置したら、場所の変更は不可能になる。
この誓約が出来てしまったが、ゼロはどちらも転移するには、不便だと思ってない。
別の場所に行きたいなら、自分自体が転移関係のスキルを手に入れればいいだけなのだから。
「今はこれしか作れないが、俺がさらに魔素を増やせば、部屋を作れるし、迷宮も広くすることが出来るぞ」
「はぁ、何と言えばいいか……」
「何だか凄いことばかりで……」
「もう言葉が出ないの」
三人が言葉を繋げてきた。
それほどに驚いたのだろう。
(しかし、形は整えたといえ、ただの鉄の椅子じゃ、カッコつかないよなぁ)
『……そうだね。物もないし、材料が土と鉄だけじゃ、良いものが作れない』
(今は物が椅子だけなのは仕方がないだろうしな。あとで奪うか買えばいいしな)
『……街を襲う?』
(一番近いのはメイガス王国なんだが、初めに潰してもそんな騒ぎにならない程度の小さな村とかでいいじゃないか?)
『……徐々に、物を奪って死体を増やすのね』
死体があれば、思い通りに動く兵も増やせるし、強くて役立てそうな人材がいるなら勧誘してもいいし。
ゼロとレイは村を襲うことによって、物と死体を得られるので、一石二鳥なのだ。
(よし、次の方針が決まったな?)
『……うん、まず村を探そう』
村を襲うことに決まり、それらの計画を三人に話そうと思ったら…………
「……っ!? 誰だ!」
急に三人の後ろに嫌な気配を感じて、ゼロは叫んでいた。
三人はその声で立っていた場所から離れて、ゼロの視線から同じ場所を見た。
そこには、一つの影があって、その中から黒い服を着た老人の男が現れたのだ。
嫌な気配だと思える者が現れて、ゼロを含む四人は、警戒心を高めて戦闘に備える。
配下の三人はそれぞれに武器を作り出し、ゼロを庇うように布陣を敷いていた…………
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