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第三十話 拠点

はい、どうぞ。




(まさか、人間の姿になるとはな……、名前を与える度に、驚いてばかりじゃね?)

『……驚いた、名付けは不思議なことばかりだね……』


 目の前の少女は人間の姿をしているが、蟲人族である。面影がないからただの少女にしか見えないが、ステータスを見ると前より強いとわかる。




ステータス

 名称 シル

 種族 蟲人族変異種

 称号 ”ゼロの配下”

 スキル

    稀少スキル『冷酷者コゴエルモノ

         (氷晶、思考加速、変化)


    通常スキル『毒・麻痺耐性』、『幻覚耐性』、『魔力察知』、『魔力操作』、『格闘者』




 シルと名付けたら様々なスキルが発現し、希少スキルを手に入れていた。



(希少スキルって簡単に手に入るものだったけ……?)

『……さぁ? 格闘者のスキルは素手だったら使えるみたい』

(シルは剣を持っていたが、そこはどうなんだろうか?)


 希少スキル『冷酷者コゴエルモノ』、文字を見ただけなら冷たい人だと判断されそうだが、効果は氷に関するスキルだった。

 氷晶は、氷を操ることが出来るだろう。思考加速は、ゼロも魔王ラディアと戦う前に、『知識者チシキモノ』に発現した効果で、いつもより思考するスピードが上がる。

 それだけではなく、思考空間と違って戦闘で使える効果であり、相手の攻撃をスローモーションに見え、自分自身の反応スピードも上がる。

 魔王ラディアとの戦いでも役立てて、常人では反応は出来ないほどである。

 変化はフォネスと同じような効果で、普段でも役立ってくれそうだ。




「シル、武器を持っているが、本当は格闘が得意のではないのか?」

「え、何故、それを? ……あ、ステータスを見れるのでしたか!」


 名付けをした後に、軽く自己紹介みたいのをしたのだ。

 そこでステータスを見れたり、スキルを吸収も出来ることを説明しておいたのだ。




「武器は配給された物で、使わないと勿体ないと思って……」


 ここに阿呆がいた。

 差別する奴を散々と阿呆と言ったが、シルも結構、阿呆かもしれない。




「お前なぁ……、戦い方が違うなら受け取らなくてもいいんだぞ? 勿体ないからと言って、慣れない武器を使って死んだらどうするんだ?」

「はい……」


 シルも先程まで、本来の戦いをしなかったから怪我をしたことで、ゼロの言い分を理解している。




「俺の配下になったなら、簡単に死んでは困る。これからはそれを心に刻み、自分の力を理解して、戦い方を考えて生きろ!」

「はい!!」


 元気よく返事するシル。




(あとは、案内してもらうだけだな)

『……シルの戦いを見ておきたい』

(それもそうだな。もし、拠点に魔物が残っていたら任せてみるか)


 まず、拠点まで案内してもらうことにする。




「シル、魔王ラディアの拠点まで案内を頼む」

「はい、奪うのですね!」


 シルの年齢は今の見た目通りだとゼロは予想した。

 元の身体は、成人していたが、まだ生まれて10年は経ってないから、精神年齢はマリアより下なのだ。

 だから、普段は丁寧に話すがたまに子供っぽい喋り方になるようだ。

 喋り方はゼロにとってはどうでもいいことだし、一応、丁寧に話しているからフォネスとマリアからは異論はないようだ。



 シルに案内を頼み、魔王ラディアの拠点に向かうゼロ達。




◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆




 シルに出会ってからの翌日、ゼロ達は魔王ラディアの拠点に着いた。

 ここはメイガス王国からだと山四つ分の距離があった。

 普通の人間なら、三日は掛かる距離で、森の奥で魔物が多いから人間も余り入らないため、今まで見付からなかっただろう。

 だが、ゼロの予想と違って、目の前には、洞窟しかなかった。




「……シル、これが魔王ラディアの拠点なのか?」


 どうみても洞窟にしか見えないが、シルはその言葉を予想していたようで、説明し始めた。




「はい、見た目は洞窟ですが、中に入ればわかります!」

「中にですか?」

「ただ、中が広いとかじゃないよね?」


 フォネスとマリアも疑問を浮かべる。

 中に何があると言いたいだろうか?

 説明を続けるより、中に入った方が早いので、フォネスとマリアは警戒心を高めて、ゼロの後ろ左右に立つ。

 シルがいるから罠の心配はないが、中に魔王の配下がいないとは言えないのだ。

 ゼロ様の手を煩せないように敵が現れても対応出来るように警戒心を高めるのだ。

 洞窟の中に入り、先に進んでいくと、向こうには出口のような光が見えたのだ。

 その洞窟を抜けると、目の前には広い場所が拡がっていた。

 上は吹き抜けで、太陽の光が入ってきて、暗さを感じない。

 山の中なので、周りは壁に囲まれており、出入口はさっき通った一つと吹き抜けになっている上しかない。

 護りに優れた拠点であり、広さは日本で言えば、東京ドームぐらいで奥には魔王ラディアが使っていた住家がある。

 魔王ラディアが使っていた住家は周りにあるテントのような物と比べにもならないほどの大きさで石で出来た砦だった。

 魔王ラディアの住家を見たゼロとレイは……




(うーん、最低限の条件は大丈夫だが……)

『……趣味に合わないね』

(ああ、出入口が上と正面しかないということは、護りを強化してことだよな)

『……実用化はわかるけど、砦が住家とか、つまんない……』

(あー、レイはダンション物が好きだったよな)


 ゲームをやるときは、ダンション物が出るRPGのゲームが好きだったレイ。

 作ったり弄るのが好きなレイは、自分で改造できる迷宮ダンションみたいなのが良かったのだ。




(そうそう、希望の拠点は簡単に見付からないだろ?)

『……仕方がない。一時的に、ここを拠点にする……』

(一時的か……、確かにそうなるかもな。ここは思ったより広くないしな)


 そう、ここではせいぜい1500〜2000人しか入らないだろう。

 これが魔王ラディアの配下が少ない理由かもしれない。




「ふむ、細かいとこは後にすることで……、チラホラと見える魔物を何とかしないとな」

「私が毒を撒きましょうか?」


 留守番している魔物か、勝手に入ってきた魔王の部下ではない魔物かわからないが、反応は五つぐらいあった。

 マリアが、毒を生み出して全域に撒こうか? と進言してきた。

 猛毒だが、時間が経てば霧散して、後からは無害になる毒も作成可能なのだ。




「……いや、ちょうどいいし、シルの力を見せてくれ」

「はい!」


 予定通りにシルに任せることにした。今まで、魔物に会わなかったから試すことが出来なかったが、五つの魔物はシルの実力を見るには、ちょうどいいだろう。




「行きます!」


 近くにいた犬の魔物に向かう。敵も遠吠えをし、周りにいる残りの魔物も集まってきた。

 だが、遠吠えをする犬はシルにとっては隙だらけだった。




「”凍拳レイケン”!!」


 シルの攻撃は魔物の脇にヒットし、殴られた箇所から凍っていき、後から拳の衝撃で凍っていた箇所が砕けた。




「ギャァァァッ!!」


 トドメに、顎を狙って同様に凍らせて砕いた。




「どんどん来るのです!」


 次々と、新しい犬の魔物が登場してくるが…………




◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆




 戦いが終わり、この場に残ったのはシルの攻撃した跡の霜だけだった。




「終わりましたっ!」


 笑顔で戻って来る少女。シルに傷一つはなかった。犬の魔物達に囲まれて攻撃されたが、素晴らしいステップで避け、反撃していた。

 思考加速のおかげで相手がよく見えるし、格闘の技術も素人ではなく、熟練されたものだった。




(格闘に絞ったらフォネスやマリアより上だな)

『……うん、二人は思考加速を持ってないからね』

(まぁ、それはいつか手に入られるだろう。それに、”凍拳レイケン”は急所に当たったら即死だな)

『……うん、凍らせたら自己再生も出来ない』


 『自己再生』というスキルがあっても凍ってしまえば、無為になってしまう。

 敵にとっては再生出来ないのは恐ろしいと思う。




「よくやった」

「ありがとうございますっ!」




 これで、魔物は片付き、拠点を手に入れたことになるが、それは一時的のことだろう…………







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