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第二十七話 ゼロvsラディア

はい、どうぞ。



 勇者を殺すつもりだった、魔王ラディアの剣を止めたのは、ニヤニヤして嫌な笑みを浮かべているゼロだった。




「お、お前は……?」


 掠れ声で聞くカズト。周りの魔王と魔王の配下達に、勇者の仲間がゼロが登場したことに驚き、戦況がしばらく止まっていた。

 なんとか生き残ったカズトは助けられたことに驚いたというより、懐かしい服を着た男がいたことに驚愕していたのだ。




「貴様、何者だ?」

「俺か? とりあえず、勇者の味方だな」


 人間側の味方と言うのはおかしいので、とりあえず勇者の味方だけと言っておいた。




「ぜ、ゼロ!?」

「あん?」


 名前を呼ばれていたのでそっちを見ると、マギルがいた。




「ゼロ、来てくれたのか?」

「忘れたのですか? 様付けと言ったはずですが……」

「ひぃっ!?」


 マギルの後ろには、いつの間にかに、マリアが短剣をマギルの首元に添えていた。




「す、すいません……」

「マリア〜、そんな人は放ってゼロ様の敵を消すよ?」

「私にとって、筋肉モジャモジャも敵同然なのですが……」

「すいません!! これからは様付けします!!」


 必死に謝るマギル。本気でマギルはマリアのことが怖いようだ。




「ふん、お前も敵なら殺すだけだ!!」


 空いた手でゼロを殴り掛かる魔王ラディア。

 ゼロはそれを面倒臭そうに、手で受け止める。さらに、”生命吸収ライフドレイン”を使うと、魔王ラディアは目を開き、すぐにゼロから離れた。




「貴様は……!?」

「フォネス、マリア、雑魚に手を出されると鬱陶しいから、すぐに片付けろ!」

「「御意にっ!!」」


 命令されて二人が魔王の配下達に向かうが……、殲滅の準備はもう終わらせていたのだ。

 マリアはある物を取り出す。

 銀色の球体だった。おそらく、鉱物だと思うが、何故今出すのか、周りの人にはわからなかった。




「ふざけんな! そんな球で俺達を殺せると…………あ?」


 魔王の部下の一人が指をマリアに指すと、その指が切れて地に落ちていた。




「な、何をしやがった!?」

「マリアは貴方に何もしてないよ?」


 よく見ると、マリアの持っている銀色の球から糸のようなのが薄らっと繋がっているのが見えていた。

 それを伝って見ると、魔王の部下達の周りに沢山の細くて鋭い糸が見えるようになった。




「な、いつの間に!?」

「ほらね? マリアじゃなくて自分のせいで勝手に斬れただけでしょ?」


 今まではフォネスの幻覚によって隠されていたマリアの武器。

 鋼の球から、武器作成で鋼の糸を作り出して、勇者達と戦っている時に張っていたのだ。

 さらに、フォネスが自分達とマリアの鋼糸を幻覚で隠して、さらに変化で尻尾同様に触れることが出来ないようにした。

 変化は張り詰められた糸の全てに掛けているから、短い時間しか変化出来ないが、その時間だけで充分だった。

 鋼の球から伝って見たから幻覚と変化の効果が無くなり、いつの間に、鋼の糸に囲まれているという寸法なのだ。




「魔王はゼロ様の獲物だからわざと外してある」

「だけど、貴方達は逃がしませんよ?」


 魔王がいる場所には鋼の糸はなかった。

 魔王はゼロ様がやるから必要なかったのだ。




「そんな糸で俺らの動きを止めたつもりか? 触れることが出来ないなら、魔法で消してやる!!」

「ゼロ様からの命令は足止めではなく、片付けろと言いました。つまり、殲滅ですよ?」

「私達の技で痛みもなく、殲滅してあげます」


 マリアは鋼の球を強く握り、フォネスは張り詰めた糸に向けて手を伸ばす。






「「”焔糸結界アモンテトリー”!!」」






 フォネスの熱が鋼の糸に伝って殺傷威力を上げ、マリアは手に握っている鋼の球を引っ張った。

 鋼の糸は引っ張ると、中心に向かっていくように糸を張り詰めていた。

 それが、発動して中にいた部下達は魔法を発動する暇もなく、上位魔物と魔人だった九人の配下達は身体をバラバラにし、一人残らず、死んだ…………






「なっ……!?」


 それを見ていた魔王ラディアと勇者達は驚愕していた。

 勇者の仲間が苦戦した敵をあっさりと一瞬で殺されたことに信じられないような思いで見ていた。

 殺された配下達はランクで言うと一人がAランクで他の全てがBランクなのだ。

 それが、何もさせずに一瞬で死んだ。




「フォネス、マリアお疲れ様。下がれ」

「「はっ!」」


 もうやることがなくなった二人はゼロの後ろに下がる。




「で、雑魚が死んだが、まだやるのか?」

「き、貴様ぁぁぁぁぁ!!」


 魔王ラディアは仲間があっさりと殺された怒りで剣を捨てて素手で殴り掛かってくる。

 剣も勇者より上だが、本来の武器は自分の身体、素手の方が得意なのだ。




「殺してやる!!」

「あん? 弱いから死んだだけだろ?」


 ゼロも剣を鞘に戻してフォネスに渡す。

 魔素を纏まった素手で殴り掛かって来る。ゼロはそれをまともに受けずに受け流す。




「ふむ、パワーは強いが遅いな」


 岩鬼族の魔王ラディアはスピードと技は勇者を超えるが、それに比べにもならないほど、パワーに特化している。

 当たった壁は簡単に砕けて、地面はえぐれていた。




「避けてばかりか!? 腰抜けがぁぁぁ!!」

「やれやれ、これだから単細胞は困るな」

「た、単細胞だと!? 貴様ぁぁぁぁぁ! 俺様は魔王だ! 貴様ごときに相手にならん!!」

「簡単に避けれてるのに?」


 ゼロは人を馬鹿にするような笑みを浮かべる。

 確かに、ゼロは避けてばかりでまだ攻撃はしてない。

 何故なら…………




『……うん、出来た』

(お、出来たか?)


 レイに頼んでいたことがあったのだ。それが終わるまで避けながら待っていただけなのだ。

 頼んでいたことは、解析。魔王の強さ、身体の仕組み、ステータスでは見られない部分を調べていた。




『……結果は配下の魔人と変わらない』

(ということは、目の前の魔王はただ魔人より強いだけの偽魔王だと?)

『……そう、人間に魔王と呼ばれたから魔王ラディアと決まったかも』

(そうだよな。おかしいと思ったんだ)


 ゼロがおかしいと気付いたのは、ステータスを見た時だった。

 称号には”勇者殺し”と出ているが、何処にも魔王と表示されていないのだ。

 しかも、未だにも、ゼロに攻撃が当たらないまま。

 だから、”生命吸収ライフドレイン”を使って魔王ラディアの一部を吸収して、レイに解析を頼んだ。

 ついでに今は死んでいるが、魔人である第一の配下からもマリアに頼んで一部だけこっちに吹き飛ぶようにしてもらい、そっちも調べた。


 その結果は、配下の魔人と変わらず、ただ勇者の天敵である希少スキルを持っているだけの魔人だとわかったのだ。




(そうだよな。あの程度が魔王なら、簡単に世界征服出来るだろうな)

『……魔王になる条件ってあるのかな?』

(かもしれないな。それは後にして……)


 調べたいことは調べ終わったので、ゼロは戦いを終わらせることにした。

 偽魔王であるラディアを消すことに決まったゼロは手に魔素を纏い、鋭く尖っている形にした。




「がぁ!?」


 手を振り抜き、肩から胸まで大きく傷を付けた。だが、それはすぐに回復してしまう。




「はっ、ははは! まさか、傷をつけられるとはな。だが、無駄だぁぁぁ!!」

「『自己再生』を持っていたな。なら、再生スピードが追い付かないほどのダメージを与えればいいだけだ」


 ゼロはすぐに魔王ラディアから離れ、魔法を唱える。




「”火柱爆撃バーンアウト”」


 溜めもなく、瞬時に発動する魔法。”火柱爆撃バーンアウト”は敵を火柱の中に閉じ込め、凄まじい熱量で炙り、さらに小さな爆発が火柱の中で沢山起きている。




「ガァァァァァァァァァ!!」

「まだ終わらんよ。”砂嵐竜巻サンドストーム”!」


 続けて上位魔法を使う。普通なら続けて発動するなんて、普通の魔術師では無理である。伝説の大魔術師なら、使えるかもしれないが、ゼロとレイは格別だった。






「嘘……」


 高位魔術師のテリーヌでさえも、目の前で起こっていることに目を疑うほどだった。

 火、土、風の上位魔法攻撃を受けた魔王ラディアは身体の回復が追い付かず、膝を地について動けなくなっていた。




「き……さ、ま……」


 これだけの魔法を受けても死ぬどころか、まだ意識があるとは、さすがだと思った。




「もう終わりだな」


 ゼロは魔王ラディアの首を掴んで持ち上げる。




「何か言うことは……いいや、面倒臭い」

「ま、まて…………ぐふっ!」

「じゃあな、偽魔王よ」


 最後の言葉だけ魔王ラディアにしか聞こえないように言った。




 そして、魔王ラディアは死んだ。ゼロに胸を手で貫かれて…………







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